10日目 殴ろうか♪
再び教習に来たアナタを待ち構える女神
「よく来ました勇者候補よ! さあ!準備は出来てますかぁ!」
「・・・・?」
何やら気合の入っている女神にアナタは戸惑っていると、女神はサンドバックを叩き始めて言い放った
「しゅ!シュ! そんなオドオドしてどうするのです勇者候補よ! 今回の教習はズバリ! 素手での打撃です!」
「…!」
女神の言葉を聞き、楽しそうにサンドバック殴る女神を真似してアナタもサンドバックを殴ろうとしたが・・・
「あ、ダメです勇者候補よ、それ私のです」
「・・・ッ!?」
アナタは女神にフワッと投げ飛ばされてしまった
「ハハハ、すみませんね勇者候補よ、今回はサンドバックは使いません。素手での打撃と言っても初心者用の予備知識や、殴れるようになる為のトレーニングになります」
「・・・・」
サンドバックは片付けられてしまい、アナタはゆっくりと立ち上がった
「そう怒らないでくださいよ。アナタが先ほどの魔獣の革の袋に砂金が詰まった超重量級&ド高級品のサンドバックを殴っていたら腕がバラバラになっていた事でしょう。人がやってるからって自分も出来ると安易に真似しないでくださいね」
「・・・・」
「分かればよろしい。では教習を始めますね。素手での攻撃は武器を使った物よりはるかに非力ですが…手元に武器が無い! 武器を取るのが間に合わない! など、何らかの事情で武器を使えなくなってしまった非常時に使えます。というか使うしかありません」
「・・・・・」
「そう言った場合多くの方が殴る事を選択するでしょうが、素人には難しく拳で攻撃しようとしても怪我するのがおちです。ごく少数だと思いますが拳すら理解できない人の為に一つづつ説明しましょう。まず手を握ります、すると指の付け根が出っ張りが出来ます、そこが拳です。そこをしっかり当てられるようにしっかり握ります。握った指が前へ出ない様に、親指もしっかり畳んで。前の四本の指で親指を握るような真似はしないでくださいよ」
「・・・・?」
「拳が分からない人が本当に居るのかって? 残念ながら会った事が有ります。まどっこしいでしょうが超素人編なので我慢してくださいね。知ってるつもりでも知らない情報が紛れてるかもしれませんよ。それでです、その拳を当て殴る訳ですが二つの方法が有ります。人差し指の付け根と中指の付け根の二つの拳を当てる正拳と、中指から小指までの三つの拳を当てる横拳です」
「・・・・」
「どちらを使うかは自分に合った方で良いですが、横拳は注意した方が良いでしょう。小指の骨は細く折れやすいので、素人のケンカで顔を殴ってしまった時などは折れてしまう事が多いのです。だからと言って正拳なら安心して打てるかと言うとそうではありません。顎の骨が丈夫と言う事も有りますが、拳はデリケートな部分です」
「・・・・」
女神はホワイトボードに写真を張り付けながら説明した
「骨は適度な負荷がかかればそれらに耐える為丈夫になってゆきますが、拳は日常生活で使う事が無いので負荷がかかりません。なので強度が低くなりがちで、力自慢の人が何かを殴って手の骨を折ってしまうなんて事が有ります。腕力が強いからこそ注意するべきでしょう」
「・・・・・」
「まず拳の当て方です。拳で打つ場合は拳に当たった衝撃が手の骨を通って前腕の骨に真っ直ぐ伝わるようにします。手首が曲がって捻ったりしない様に! 拳を当てる際も一番出っ張っている中指の拳だけを当てがちになるのでそうならないように注意です。力が一点に集中し怪我をしやすくなりますから」
「・・・・・」
「理屈は簡単。でも言葉を聞き写真を見ても出来ない人が居ます。例えば前腕って手首に向かって細くなってますよね、その為に腕を伸ばした状態でチェックして前腕の外側の斜めの線に合わせて手首の角度を決めてしまい拳が下を向いてしまう人が居ます。骨って言ってるのに何で骨についてる筋肉の角度を基準にするんでしょうね?まったく・・・・」
「・・・・」
「やって見せれば大丈夫? 出来ない人はそれでも無理です。見たものをそのままマネする事が難しい人も居ます。拳ではありませんが分かりやすい例として映画のガンマンがリボルバーを回すのをマネしようとした人が2人居るとしましょう。1人は問題なく人差し指を内側に曲げて他の指は銃にぶつからない様に開いて銃の引き金のある穴に人差し指入れて回そうとしました」
「・・・・・」
「しかしもう一人はなんと!指をさすように人差し指を伸ばして他の指は握った状態で銃を回そうとします! 手の形が二人全然違う結果になりました。前者は実際に銃を回せなくてもこのような行動をとれる人なら問題はないでしょう、映画のガンマンもこの様にしてます。しかし後者の方は実際に銃を回す動作を見てるにもかかわらず、回る銃に気をとられて回すのに重要な手の動きが認識できないのです! この手の人は実際に見ながらやっても真似できません」
「・・・・」
「こう言ったタイプは役に立たない目印を見てしまう方向音痴の人と原理は似てますが、目標の場所にたどり着けない結果を伴う方向音痴と違い、自覚がない人が殆どです。不安、もしくは自覚があるなら専門の格闘技の教室などに実際に行き教わるしかないでしょう。一度覚えれば自転車の乗り方と一緒です」
「・・・・」
「でも一人でどうにかしなければならないなら拳立て伏せが良いでしょう。物をボコボコ殴る訳ではないので近所迷惑にもなりません。正拳でも横拳でも好きな方を床にしっかり当て腕立て伏せを行ってください。手首が曲がっていては手首に力が入らずバランスも取れませんからそれを利用して正しい位置を強制するのです!」
「・・・・・」
「拳が痛い? そもそも腕立て伏せが出来ない? 大丈夫、ハイハイの様に膝を着いて構いませんよ、それすらきついなら腕も動かさなくても結構。床にクッションになる様な物を引いても構いませんが、フワフワし過ぎてるとバランスを崩しやすく手首に負担がかかるので注意です。怪我をしない様にじっくりとやりましょう。拳に適度な負担をかけ、鍛えるのではなく育てる感じで」
「・・・・・」
「拳にタコを作るのは嫌? タコになりそうならマッサージ用のオイルでケアしても構いません。手に細かな傷が出来たなら化膿しない様アルコールで消毒するなどケアは怠らない様に。拳にタコとか好きな一部の格闘家の価値観に無理に合わせる必要はありませんよ」
「・・・・」
「今度は女々しくて嫌? 我がままですねぇ。戦士なら武器のメンテナンスを怠らないでしょ、手や自分の身体だってそうですよ、気にしたら負けです。私が求めてるのは勇ましく男らしい人ではなく、世界を救う強い勇者なのですから!」
「・・・・・」
「では今回の教習はここまで! しっかり鍛錬にはげむのですよ~! セイッハ!」
そう言って女神は空間を己が拳で砕きながら道を作って帰って行き。アナタも日常に戻っていった
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