7日目 これで一刀両断! ・・・の前の下準備

 前回の試練を乗り越え、再び教習に来たアナタ


「良く来ました勇者候補よ。前回はすみませんでしたね、足の調子はいかがですか?」


「・・・・・」


「そうですか。まあ今回は移動まではしませんから大丈夫でしょう。ささ、これを持って」


「・・・?」


 女神に渡されたのは、そう学校の時に使ったような30㎝の物差しだった


「ご自分で練習される場合、それなりの長さが有って平たい物なら何でも構いませんから代用してください。未使用の割ってない割り箸だって構いません」


「・・・・・・」


「これで何をするのかと? あちらにある線をなぞってもらいます。なぞると言っても触れながらなぞる訳ではありませんよ! なぞるように素振りをするのです」


 女神が指さす方を見ると、壁に縦、横、斜めの真っ直ぐな線が重なった放射線状の図が書かれていた


 *


「あの図の線をなぞり、刃筋を通す練習をしてもらいます。剣などの刃物で物体を切る際に、刃の側面が当たるような斜めに切り込んでも、上手く切れないか弾かれてしまいます。そこで深く斬るには真っ直ぐ刃を当て”刃筋”が通るように真っ直ぐ振りぬく必要があります。斬ってる途中でぐらついて刃筋が乱れると抵抗が大きくなり切り抜けなくなってしまいます」


「・・・・」


「難しそうでしょう? でもだからと言って適当な刃物を持ちスパスパ何かを切って練習していたらキリがないですよね。そこで刃筋がしっかり通るようにあの線をなぞり刃筋が通った斬撃を身に着けるのです! 打撃武器の効率も上がりますよ!」


「・・・・」


「え、軽いし刃物の練習なら包丁使っていいかって? ダメです。慣れないと素振り中に自分を切ってしまう危険もありますが。訓練の疲れで”つい”その辺に刃物を置いてそのまま休んでしまい、刃物を置いた事を忘れ踏んづけたり触れたりして大怪我なんて事に繋がります! 刃物での訓練は専門家のもとで行ってください」


「・・・・・」


 女神はアナタの口にした言葉に何でもない様に言った


「なに?周りにそんな専門家は居ない? 大丈夫です勇者候補よ。剣と魔法の異世界に出ればそんなの腐るほどいます。先生には困らないでしょう。今は素質を磨く事に集中してください」


「・・・・」


 女神は定規を持って実演し、構えながら説明する


「では素振りをする為に構えて。武器を持った利き手を前に半身になって、足は肩幅に開く。武器を持たない方の腕は、相手に攻撃されたり、振ってる内に切ってしまわない様に腰に手を当て邪魔にならない様に下げるか、腰の後ろに回してください。良く漫画や映画などでサーベル使いがやってる感じです。どこかで見たことあるでしょう?」


「・・・・」


「じゃあまずは縦の線を上からなぞってください。定規を刀身に見立てて真っ直ぐ斬り下ろすのです。上段からの斬り下ろしは武器の重量を生かせますし、周りに人や物が有って横には振れず、上しかスペースが無いような状況でも使える技です」


「・・・・」


 アナタがしばらく縦斬りを練習し慣れた頃、女神は次の説明をする


「ぶれずにしっかり振れる様になりましたか? でしたら今度は斜めの線をなぞってみましょう。話は少しそれますが斧で木を切り倒す際に斜めに斬り付けます。真横から斬り付けると抵抗が強すぎて弾かれてしまうのですよ。ですから削る様に斜めに上下から斬り付けて斬り倒すのです。今は下からの切り上げはいいですから、斜めの斬り下ろしを左右どちらでもできる様に練習してください」


「・・・ッ・・・・ッ」


「慣れましたか? では次は横の線を左右どちらからでもなぞって切り払ってください。この様な水平斬りは実戦ではあまり使われないですが真横にもしっかり振れる様になってください。天井が低く横しかスペースが無い状況に出くわす可能性もあるからです」


「・・・ッ・・・・ッ」


「水平斬りも出来るようになったら次は斬り上げです。斜めの線を下から上になぞり斬り上げてください。慣れたら縦の線も下から切り上げられるようにしてください」


「・・・・・・」


 初めは実演していた女神もいつの間にか止めていて、お茶の様のものを啜っていた


「これら全ての線をどの方向からでもなぞれる様にマスターしてください。自宅で練習する場合はこのガイド線を自作して。壁にテープを張るなり、紙に描いたものを張るなり簡単に用意できるでしょう」


「・・・・」


「もう少し実践的な方法は無いのか? ふむ、でしたら大きな鏡がありましたら鏡ににマジックで線を描いて、線が重なる中心を自分の鳩尾の少し上辺りにくるようにし、その線を見ながら練習する方法もあります。どの線をなぞっても必ず心臓を攻撃できるように狙いを付ける訳ですね、自分の動きもチェックできます。当然ですが後で線が消えなくて鏡が使えないなんて事にならない様にしてくださいね。ハハハ」


「・・・・」


 そう言った後、女神はお茶を置き、前後にステップを踏みながら定規を振りだし言った


「そして無事マスター出来ましたら、敵は武器の射程内に居るとは限らない・・・と言うより射程が居に居るのが普通ですから、前回教えた踏み込みを合わせて練習してください。足を切らない様に注意ですよ、そして前に出した足をしっかり地面につけて踏ん張れるようにしてから攻撃する様に注意してください。踏み込む程では無いけど少し射程が足りない時は、前の足を少し曲げるようにすると射程が少し伸びます」


「・・・・・」


「では今回の教習はここまで! 訓練にはげむのですよ勇者候補よ!」


 そう言って女神は去って行き。アナタは日常へと戻っていった

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