第7話 夕日の人影

友人から聞いた話


友人は子供の頃から沈む夕日を見るとその手前で立っている人影が見えるという。

夕日をバックにじっと立つ人影をよく眺めていたそうだ。



立っているだけで特に何もしない。

夕日を受けて少し揺れているように見える。


一度だけその人影が違う行動をしたことがあった。


中学生の時、熱い夏の頃、部活が終わって土手沿いを歩いて帰っていると、丁度夕日に向かって歩くような状態になった。

前を見ると、遠い山へ夕日が沈む手前にいつものように人影を見つけた。

ぼ~っと眺めながら歩いているといつもと人影の様子が違うことに気が付いた。

ランニングをするように脇を締めて腕を曲げてこちらに走ってくるように見える。

動きは正にえっほえっほとおじさんがランニングしているように見えた。

今まで一度も見たことのない動きに友人は驚いて立ち止まる。

黒い人影はもの凄い速度で近づいてくるのか、どんどん大きくなってくる。

え、え、と思っているうちに人影が自分の目の前まで来てそのまま後ろへと走り去っていった。

あまりのことに恐怖よりもただただ驚くばかりだった。


急に携帯に電話がかかってきて、驚いて急いで電話を取った。

母親からの電話で、父方の祖父が心不全で急死したので、急いで帰ってこい。お通夜に間に合うように準備しなければ、という連絡だった。

友人は慌てて家まで走って帰った。



友人は今でも人影を見続けている。

あの日すれ違いざま、

「三つ欲しい。」

と人影が言ったそうだ。

何を三つなのか今でも分からないと話していた。

祖父の死に人影が関係しているのかも分からないそうだ。

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