第6話 伸びるババア

友人から聞いた話


友人が友人(紛らわしいのでAとする)から聞いた話。



AがB、Cと3人で肝試しに行く事にした。

車で隣県の有名な海沿いの丘の上にある廃ホテルに行く。


到着したら既に一台車が止まっていた。

先客がいるんだろうと話していたところ、ホテルから3人の男女が走って出来てきた。

慌てた様子だったので話しかけてみると幽霊を見たという。

雰囲気からウソという様子はない。

驚いて女の子を一人残してきてしまったが、あまりに怖いので助けに行けないという。

仕方がないので、A達3人が肝試し兼女の子捜索という事で中に入った。


中は既に落書きだらけで物も殆ど残ってなく、ほぼコンクリートむき出しで正直なところ、多少怖かったが、あまりにも人が入って来ている感じがあり、怖くなかった。


女の子はある部屋の隅にうずくまっているところを発見したので声をかけると安心して飛びついて来て大泣きした。

この時抱き疲れたのはCだが、Bがうめき声をあげるのをAは聞いた。


ホテルから出ると先に出てきた男女が待っていたのだが、A達を見ると丘の下にあるコンビニまで先に行くのでそこで合流しよう、と言うとさっさと車を出してしまった。

助け出した女の子を残して行ったので、薄情なやつらだと話をしながら女の子を含め4人で乗ってきた車に乗り込んだ。


色々話をしていたが、いつのまにか助手席に座っていたBは寝てしまっているようで、目を閉じて黙っていた。

運転していたAはあまりに急なBの眠りに不思議に思っていたが、特に何も言わなかった。


コンビニまで到着すると先ほどの男女が待っていたのだが、A達が車から降りてきた途端、大声で先に帰るから!と言ってすぐに車に乗り込んで逃げる様に出て行ってしまった。


仕方がないので、助け出した女の子と4人で深夜でも開いているファミレスに入って一息ついた。

女の子から話を聞くと、廃ホテルに入った後、先に行ってしまった中に彼氏がいたのだが、その彼氏と並んで先頭を歩いていたところ、廊下の先から四つん這いの老婆がものすごい勢いで走ってきて飛びついてきた。

気が付くと誰もおらず、真っ暗闇で動くこともできなかったので、部屋の隅でうずくまって震えていたという。


Bが、今なら言えるけど、と前置きして話し出した。

最初女の子を見つけた時、肩車をするように小さな老婆が女の子に乗っていた。

AとC、女の子もそれに気付いていないようで、直感的に自分が見えていることを気付かれるのはまずいと思い、なんとか気付かないふりをしていた。

肩車された老婆は必至の形相で女の子の頭を齧っていたらしい。


恐らく逃げた男女にも老婆が見えていたんだろう。

一番恐ろしかったのが、車の中で老婆の頭が粘土を伸ばすようにニュルニュルと伸びて運転するAの顔を覗き込み始めたのが助手席のBから見えた。

見えているか確認していると分かり、慌てて寝たふりをして誤魔化した。


Cが何で今そのことを話したんだ?と質問すると、

コンビニの駐車場で女の子から離れて先に逃げた男女の車の上に飛び乗るのが見えた。

今ここに老婆は居ない。

と話した。


朝方までファミレスで時間を潰した後、女の子は近くの駅で下ろして解散した。


A達3人は時々心霊スポットへ肝試しに行っていたが、それ以来Bが拒否するようになったので行かなくなった。


私は今度友人からその廃ホテルに行こうと誘われている。

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