第4話 噂の店

友人から聞いた話


友人が昔通っていた大学近くのラーメン屋。

豚骨スープでコッテリとした味なのだが、甲殻類の様な風味がわずかに感じられて学生に非常に人気だったらしい。



店に勤めているのは店長とどこから雇われているのか分からない中国人のおっさんばっかりで、大学の近くなのに学生が働いているのは一度も見たことが無かった。


他の店で食べる豚骨ラーメンと風味が違うので、その秘密は何なのかとよく店長が学生に聞かれているところを友人も見た事がある。

いつも答えは企業秘密だった。


ある日早朝、友人の友人(紛らわしいのでAとする)が店の近くを通ると、その店で働いている中国人が片手に袋を持って屈んで何かをしているところを見つけた。

気になって近寄ってみるとゴキブリホイホイからゴキブリを回収しているところだった。

Aはそれを見て、ホイホイごと捨てればいいのに、と思っていたが、ケチってるのかな?と思いその場では深く考えなかった。


数日後、Aは数人で連れ立ってその店へ行ったのだが、何気なく厨房を見ると中国人がゴリゴリとすり鉢で何かを潰している。

奥の方だったのでよくは見えないが、取り出した棒の先端に黒いペーストがべったりついていた。

それをスープの寸胴にポチャンと入れている。

ゴマかなと思った後、数日前のゴキブリを袋に入れていた姿を思い出す。

黒い、ゴキブリと甲殻類は似てる、甲殻類の風味…。

まさかね、さすがにあり得ない、ゴキブリがそんな風味するとも思えない。と思ったが、どうしてもそのことが頭から離れず一口も食べられなかった。



そのラーメン屋はその後、友人が卒業した後、食中毒問題を起こし閉店したらしい。

友人はAから、そのラーメン屋に勤めていた中国人が某所で同じ豚骨ラーメンの店を始めたと聞いた。

評価サイトでみるとやはり甲殻類の風味があり、高評価の様だ。

ちなみにAはその後甲殻類を食べられなくなったし、風味がするものも駄目になったらしい。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る