第3話 桜の木に話しかけられる

友人から聞いた話


友人の通っていた小学校の七不思議の一つ。


学校には非常に立派な桜の木が一本生えていた。

春には綺麗な花を咲かせて休日には近所の人がこっそりと入り込んで花見をするほどだった。

その桜の木の話。


学校に通う小学生の中で、1ヵ月以内に死ぬ人。

全ての死ぬ子が対象ではないが、時々桜の木が話しかけてくる。

話しかけられた子は自分が1ヵ月以内に死ぬ事を知って怯えて暮らす。

しかし、どこに、どこまで逃げても必ず死んでしまう。

という話だった。


友人の友人(分かり辛いのでAとする)がその声を聞いた。

Aは取り乱し、クラスでも大声で喚き早退、次の日から学校に来なくなった。


当時一番仲の良かった友人が心配してAの家を訪問した。

Aの母親も突然の事で困っており、友人の訪問を歓迎した。

少々強引にAの部屋に入り、十分に落ち着かせてから話を聞いた。

「桜の木に話しかけられた。」

Aは号泣した。

友人が大丈夫、大丈夫と慰める。

噂はあくまで噂だから本当じゃないと何度も話した。

Aは途中まではうんうんと聞いていたが、急にグッと友人を睨みつけて言った。

「無理だ、怖い!あの木!

今から3週間以内に俺が死ぬって!

何があっても絶対にあの木の下に埋められるから逃げられないって!

そういってたんだ!」

木の下に埋められるってあり得ない話なのに信じてしまっている。

その後も慰め続けたが、結局Aは変わらず怯え続けていた。

仕方がないのでその日は帰宅した。


3日後に桜の木でAは首吊り自殺をした。

いじめがなかったか学校でも騒ぎになった。

どうして自殺したのか、なぜ怯えていた桜の木を選んで首吊りしたのか。

分からずじまいだった。



友人はそこまで話した後、分かってる事もあると付け足した。

「あの後すぐ桜の木に自分も話しかけられたんだよね。

木の下に埋められるって。

だからその日のうちに学校の倉庫にあった除草剤思いっ切り根本にまきまくってやったらどんどん腐っていって、学校ももう駄目だと思ったらしくてすぐに切られたよ。

今でも自分生きてるし。

友人は死ぬ運命だから話しかけられたんじゃなくて、桜の木に殺されたんだろうね。

そういや、木の下に埋められたわけじゃなくて首吊りだったから桜の木も適当言ってたんだな。」

と笑っていた。

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