第6話 足引っ張んじゃねぇぞ!!

「――――――態々、テメェらが出向いて来るとはなぁ。手間が省けたぜ……ところでよぉ。ドイツがマオウだ!!」

「……」

「かましてんじゃねぇぞ!!! ヤんのかッ!! テメェらァ!!」

「……」

「シカトこいてんじゃねぇぞ!!」

「……」

「んだコイツら」


「……何をしている!」

「あ?! 何しに来やがった!! 金髪!!」

「私に拳を向けてどうする。早く、一掃して戻るぞ」

「あ? なんで、テメェと一緒に喧嘩しなきゃなんねーんだよ! コイツ等にヨウがあんのは俺だ!! テメェは黙って失せろ」


「……手をかせ」

「あ? ハナシ聞いてたか?」

「一刻も早く、国民から不安の種を取りのぞかねばならぬ。私、一人でも対処可能だが、人手はあるに越したことはない……少しはできるのだろ?」


「あ?!! 少しなわけねぇだろ!!」

「なら、見せてもらおうか」 


『――――――それじゃ見してくれよ!!』


「上等だゴラァ!! 足引っ張んじゃねぇぞ!!」


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


「オラァ!!」

 

 拳は胸骨を捉えるが、スケルトンは起き上がる。


「ちっ。……シブてぇ野郎だな」

「何をしている。頭蓋骨か脊柱を狙えと言っただろ!」


「あ? どこだ!!」

「頭と背中のことだ!!」


「最初っからそう言え! タコ!! オラァ!!」

「人の話はちゃんと聞け! うつけ!! フン!!」

 しかし、奇妙だ。神聖なるアイーネ国。その周辺に魔物が発生するなどあり得ぬ。何者かの仕業で間違いないはず。しかし、いまだ敵将の影すら見当たらぬ。もし、仮に自然発生したスケルトンであれば、武装などしていないはず……なのに何故だ!! 何が目的だ!! 



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


「……」

 ようやく、始めたわね。最初は言い争っているように見えたけど、今のところは大丈夫そうね。ふぅ、困っちゃうわ。でも、喧嘩するほど仲がいいって言うし。そういう意味では息がぴったしなのかも。


「勇者様は魔法などをお使われになられないんだろう、単純な殴打ばかりだ」

「恐らく、低級アンデッドであるスケルトンに必要ないという判断で使われていないんじゃないか」


「シャルデュンシー様。このような時に失礼なことだと重々承知なのですがよろしいでしょうか」

「えぇ。もちろん」


「何故、勇者様は魔法等を御使われにならないのでしょうか?」


「え?」

「「「?」」」


「彼は何も使えないわ」

「「「え!」」」


「でも、彼は勇者・悪垣将太です。私、女神シャルデュンシーが異世界から召喚した、選ばれし者です」

 

「「「おお!」」」


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


「んだテメェら!! そんなもんか!!!」

「そんなものだ。低級アンデッドだからな」


「あ? マオウだろ?」


「今我々が闘っているコイツ等は魔王ではない。人骨とよく似たアンデッド種。名をスケルトンという。恐らく、魔王軍の尖兵として召喚されたのだろう」


「マオウじゃねーのかよ。どーりで、ホネがねぇわけだ」

「しかし、数が数だ骨が折れるな」


「!?」

「逃げるんじゃねぇよ!!」


「違う! その方向は……数体のスケルトンがアイーネ国に! シャルデュンシー様が!! 逃がすか!! くっ、小癪な! 邪魔だ退け!!」


「ちっ。雑魚がうぜぇな!」


 スケルトンは二人を取り囲むように間合いを詰めていく。


「将太! 速攻で倒すぞ!!」

「命令すんな!! ったりめぇだろ!!」


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 ――――――4、5体のスケルトンが、私たちのいる方に迫る!


「我々がシャルデュンシー様を命を懸けてお守りするのだ!! 皆防御の構え!」

「「「「はい!!」」」」


「私が守るわ」

「!」

聖なるフォールンバリア


 突如あらわれた光の板がスケルトン達を弾いていく。


「さぁ今のうちに」

「恐れ入ります。二人一組で倒れたスケルトンに止めを!」

「「「は!!」」」


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


「……粗方、片付いたな。そっちはどうだ?」

 何のための進軍なのか、理由は何だ。これだけ数が減っているのにもかかわらず、退却はおろか敵の指揮官らしき姿も見えん。


「これで最後だ! オラァ!!!」

 

「そうか。では、戻るぞ将太」

「いや、まだだ。まだ一匹いるぜ!」

「! どこだ、どこに」


「活きのいいヤツがな!!!」

「!?」 


 拳がレミファードの鼻先を掠める。


「うッ!」

「チッ、外したか」


「く、なんて奴だ! この状況下で背後から攻撃するとは……この場であの時の決着つける気か?」

「ま、それもあっけど。オメェ、そこそこ出来るミテェだしよ。それに雑魚でジュンビウンドウできて温まったしよ。なんつぅかよ…………テメェの存在が気に入らねぇ!!!」

「……馬鹿は話にならんな」


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


「勇者様が急にレミファード殿を!! め、女神様。これはいった……女神様はどちらに?」

「もう行かれました……女神様とは思えないくらいの形相で」


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


「そうかよ……んじゃ死ね!!」 「私に挑んだことを後悔させてやる!!」

「この馬鹿ヤローどもォォ!!!!」

 

「「ぐぼぁッ!」」


 二人の首筋に、女神のラリアット。

 二人撃沈、そのまま正座。


「もう!! 何なの貴方たちは!! まるで犬猿の仲じゃない!! もうこれだから」

「「……」」


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


「な、お二人が意図もたやすく!」「あれ、女神様が一番強いんじゃ……」「そ、そうなるよな」


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


「ちょっと!! 話聞いてるの?」

「「……」」

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