第28話 鈴木「この異世界は」
こんにちはこんばんは、巻き込まれ召喚された鈴木次郎です。
俺は現在ディクタチュール国の元料理番で、本当はAランク冒険者だというクリスさんと、獣人の国『メリカ王国』経由でヤマトノ国へ向かう途中です。
なんでも俺と一緒に異世界召喚された子ども二人に、蜜菓子と呼ばれる蜂蜜を大量に使った熊の獣人名物を食べさせると約束したんだとか。
何時の間にそんな約束してたんだろう。あ、俺達が魔法属性の確認をしてた時か?
海路でヤマトノ国へ向かう場合はそんなに時間がかからないらしい。しかし、俺は仮にも『勇者』として召喚された。っていっても俺は勇者じゃなくて、同級生の一之宮が勇者だったんだが。
勇者でもなく、力もない俺は邪魔者扱い。しかも口答えしたせいか、対応は冷え切ったもの。完全に勇者になれなかったゴミと成り下がっていた為、ディクタチュール国に居ても意味がないと俺は判断。
クリスさんがヤマトノ国へ連れて行ってくれるというので、ディクタチュール国で死ぬよりはましだ、俺はクリスさんと一緒に逃げ出したんだ。
必要ないと見捨てられたが、念には念をで、回り道をして隠れながら移動するために遠回りをしているというわけだ。
クリスさんはとてもいい人だった。
旅に慣れていない俺をよく気遣ってくれるし、作るご飯が美味い。それに知識がないと将来自分の行く末に迷うだろうと、この世界について教えてくれた。何冊か本も見せてもらったため、嘘の情報でないのも確かだろう。
話す聞く読み書きが出来たのはチートの賜物だろうな! そこだけはチートでよかった。今から言語学習とか無理、英語の点数がいつもギリギリの俺には無理。
この異世界に名前はない。
この異世界には魔法とスキルと言うものがあり、熟練度に応じて増えたり強くなったりする。例えば剣術。沢山練習すれば、それに応じた熟練度になる。下級は剣を振り回す程度、初心者。中級はそれなりに扱える人。上級は達人。
神級という熟練度もあるらしい。名の通り、スキルを使えば神の如く、剣を一振りすれば山や海をも一刀両断するであろう熟練度らしい。クリスさんは神級の人を一人知っているそうな。いるんだそんな人。勇者いらねぇじゃん。
魔法も基本的に属性縛りは無く、頑張れば使えるそう。努力は裏切らないらしいが、代わりに魔力がないと意味がないんだとか。器用貧乏になるってことかな。
俺は魔力が少なく扱えない状態。空間魔法は使えば最強とも言われると、クリスさんが真面目な声で言っていた。残念にもほどがあるぞ俺。
百年前に賢者と呼ばれる男がいた。その賢者は空間魔法の使い手だったそう。
空間を操り、大量の物資を遠くの国へ運んだり、転移の魔法を個人で使い多くの人を救った。賢者の空間魔法の熟練度は神級だったらしい。
そして、レベル。
これは生命の強さをあらわしていて、魔物を倒す等をすると生命レベルが上がる。他の生き物を倒して強くなる、ゲームの経験値みたいなもんか。このレベルが高い人は体力や魔力など身体能力が高く、攻撃力守備力なんかも高いそうな。ゲームだね、かといってレベルが高くても不死じゃないのでご注意を。
レベルを上げるだけで強くなれるが、スキル、魔法をうまく扱えない人はその内負ける。反対に、レベルが低くてもスキルや魔法が強ければ、何とかなるそうだ。個人の持つ手数によって生死が分かれるのかな?
かといってレベルとスキル、魔法は一緒に成長させていくものなので、差がある人は少ない。勇者イチノミヤは前者に当てはまるそう。死ぬなよイチノミヤ、お前がいれば帰れそうな気がするんだ。
いや、帰れないのは知ってるんだけどね。クリスさんが申し訳なさそうに「勇者召喚の魔法は、片道なんだ」と教えてくれた上に、謝ってくれた。クリスさんが謝る事じゃないのにさ。
クリスさんの前では「そうですか、残念です」と軽く返したが、本音は帰りたい、家帰ってアニメ観て、ゲームして、家族と一緒に飯食って、あったかい布団で寝て、また学校へ行きたい。
だから俺は、イチノミヤに期待している。俺自身も帰る方法を探すが。イチノミヤがどうにかする。そう考えてないと、発狂しそうだった。
毎日、わけがわからないんだ。
此処はどこだよ、俺は家に帰りたい。
好きでこんな場所にいるわけじゃないんだよ。
しんどくて、いつの間にか泣いているときもあるんだぜ?
俺が悪いわけじゃない、勝手に連れて来たアイツが悪いんだ。
だから、
だって、勇者だもん。
だから俺は、
だから今日も、俺はこの世界について勉強するんだ。
早く、こんな異世界から脱出するために。
早くしてくれよ、
俺が狂う前に、な?
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