第7話 クロ「相棒が超甘いもの好きでして、はい」


 シロはレオンさんの持ってきたお菓子に釘付けである。

 こいつの糖分党はどうにかならないもんか。昔仲間からカステラを貰った時のテンションが一番振りきれていたけどな、久しぶりの糖分で頭が破裂したとか本人は言っていたが。

 この世界に甘いものが結構な数あるだけましだと思うか。



「待たせたね! 質問の答えだけどね、冒険者学校の入学試験は無し。クラスわけの実力テストはあるけどね。入学金は金貨二枚、成績上位者には奨学金も一応あるよ。冒険者は何歳からでも可能でね、子どもの小遣い稼ぎ用の依頼もあるよ」


 ガーネットさんが「ギルドの説明と、これが提出用の紙だよ」と三枚の紙とペンを渡してくれるが、さてどうするシロ。とシロの顔を伺うと、どこの可愛らしいショタ……じゃないこいつはロリか。というように目を潤ませ、もじもじと恥ずかしそうに言った。


「ご、ごめんなさいガーネットさん。わたし、このじよめないの……」

「あ、あぁ! そうかいそうかい! ごめんよシロちゃん!」


 「そうだよねぇ、二人ともしっかりしてると思っていたがまだ子どもだし、迷い人だったね、すまないねぇ、おばあちゃんを許しておくれ……」とガーネットさんに謝られた。

 シロお前……。ドン引きしながらシロを見れば、まだ演技の途中で。レオンさんが「では俺が読み上げてやろう」と紙に書かれた内容を読み上げ始めた。


 大雑把な説明はこうだ。



一、ギルドはどの国にも所属しない。

二、ギルドはどの国の政治にも関与しない。

三、ギルドは冒険者全員を保護する。

四、冒険者同士の争いは厳禁である。

五、冒険者が罪を犯した場合、ギルド内のルール、その国の法によって処罰される。

六、怪我に気を付けてね!

七、依頼中に死んでも自己責任だよ!



ギルドと魔物はランクごとにわかれてるよ!


SSランク:神に近き者、魔王が此処にあたります。

Sランク:冒険者最強、ドラゴンやリッチ等。

Aランク:冒険者トップ、上級悪魔やオークキング等。

Bランク:冒険者のベテラン、下級悪魔やダークヒュドラ等。

Cランク:冒険者の中堅、ゴーレムやオーガ等

Dランク:冒険者の一人前、ゴブリンやダークウルフ等。

Fランク:冒険者新人、スライムや歯長兎等。

Gランク:未成年者。



「ということだが、質問は?」

「はい! 例えば、私は成人前なのでGランクです。依頼もGランクしか受けられないんですか?」

「あぁそうだ。基本ランクに合ったものしか受けれない。逆にAランクがGランクを受けることは出来るぞ。滅多にいないがな。だが、注意も聞かず勝手に挑戦する奴もいる。そういう奴は大抵早死にするか、即冒険者をやめる。お前たちはどちらかな?」

「レオン! 脅すんじゃないよ!!」


 「この子たちはいい子だからそんなことしないさ!!」とガーネットさんは俺達二人を抱きしめていうが、レオンさんは「ガーネットさんは迷い人の基本レベルは高いと教えたんですよね? なら調子に乗るでしょう普通の子どもなら」と辛辣だ。

 そんなレオンさんにシロはキョトンとした顔を浮かべているが、内心苦笑している筈だ。



 俺たちが見た目の年齢で、

 斬った斬られたも知らず、

 血の匂いも分からないオタクの餓鬼だったら、

 「俺達TUEEEEEEE!」をするかもしれない。



「Gランクって危なくないんですよね?」

「あぁ、危険がないように設定しているよ。それに依頼で街の外に出る場合は、暇をしている高ランク冒険者やギルド職員が保護者として一緒に行動するようにしているんだ。正直そこまでして外に出たがるGランクの冒険者はいないねぇ」

「わかりました。では今私達が冒険者登録をして、Gランクの依頼を受けながら他の国にいきたいと言ったら、危険な目に合わないよう保護者がつきますよね?」


 ニコリ、笑いながら言うシロに対し「ほう、」と感心するレオンさん。ガーネットさんは「孫にしよう」と謎の決意を決めているようだ。

 

 シロの考えはこうだ。


 まず冒険者登録をしてGランクになる。

 そしてGランクの依頼を受けて外にでる。

 大体のラノベでは薬草等の採取依頼があり、基本的に最下位ランクの仕事である。それに狙いをつけたわけだ。

 薬草の採取をしながら町や国を移動しつつ納品、薬草は基本的にどこでも依頼として出ているであろうという予想だ。

 行商人が商売道具を自分で調達するようなもんだろう。これで金は少しだけ稼いで旅をすることができる。それに保護者がつけば自分たちはその保護者にくっついて旅をするだけだ。特別な費用も掛からないから金を貯めることが出来るだろう。


 かわりに保護者となる冒険者やギルド職員は子ども二人を抱えて旅をしなければならないから、たまったもんじゃないだろうがな。その辺は大人に任せるというわけだ。


 ラノベ的思考なので、この世界のギルドに当てはまる可能性は有るか、無いかの二択。

 それに成人前の子どもに対してギルドは過保護な感じがあった為、真っ向から反対される可能性もあったが、二人の様子をみるとそうでもないらしい。


「シロはどこの国に行きたいんだ?」

「ヤマトノ国です。十二歳なので再来年を目標に冒険者学校に通いたいです」

「冒険者学校なら、ヤマトノ国の王都『エド』だな。クロはどこに行きたい?」

「俺もヤマトノ国です」

「シロが行きたいからか?」

「シロと俺が行きたいのがヤマトノ国なんです」

「……いいだろう。ガーネット様、この二人のお守は俺が引き受けます」

「嫌だね。ガーネットおばあちゃんが引き受けるよ!! 二人には絶対怪我させないからね!!」


 「は?」とガーネットさんとレオンさんが顔を見合わせる。

 あ、喧嘩のゴングが鳴り響くやつー! とシロを見れば二ヤケ顔で「計画通りだべ」と小さく呟いていたのを俺は聞き逃さなかったぞ。

 

「なに格好つけてるんだい青二才が!!」

「年寄りは引っ込んでてください!!」


 ギャンギャン喧嘩する大人二人をみながら俺達はマドレーヌのようなお菓子を手に取り、口一杯に頬張る。甘くておいしいな。


「お菓子が美味しい世界でよかったねクロ」

「そだな」


 ところでヤマトノ国の王都は『エド』って言ったよね。

 もしかしてあの『江戸』でしょうか。迷い人何してやがる。ハイファンタジーが和風ファンタジーになるだろうが!


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