第5話 シロ「相棒がヒロイン枠すぎて」


 知らない天井だ。

 を、人生で数回経験しているのだが、今回はさらに輪をかけて知らない天井である。


 隣をみれば随分と若返った友人が、あどけない顔でスヤスヤ寝ている。こいつが十六歳になる頃には「ひげ剃るのめんどくぇ」と言い始めるのか、時は残酷にも程があるだろう。


 寝ているクロを起こさないようベットから降り、水袋を手に取って水を一口。

 ふぅ、久々にしっかり寝たせいか気分が落ち着いた。最近は不眠症でお薬とお友達だったのだけど、異世界召喚されて振り切れたのかぐっすり眠ることができた。おかげて頭も冴えている。


 窓から外を見れば、近世西洋のような風景。店であろう看板をみても文字は読めない。

 ガーネットさんやレオンさんと話は出来たから話す聞くには問題はない、しかし読み書きには問題有りか。チートなら文字も読めればいいのに、そこは上手くいかないらしい。


 昨日クロと決めたことは「スローライフファンタジーを送るために金を貯める」ということ。

 現在の手持ちは銅貨五十枚に銀貨二十枚。日本円換算でいくらなのかはわからない。とりあえずクロと私で半分にわけて持とう。


 あとはギルド登録について聞くこと。これで仕事は確保できるはず。

 色々と情報収集したいところだけど……と思い、自分のステータスにあった『鑑定』を思い出す。


「そういえば鑑定って、ラノベだとベターだよね」


 試してみようとクロに向かって「鑑定」と呟けばポップアップがでた。



────────────────

『クロ』

12歳

Lv:?

HP:?

MP:?


◆スキル


◆魔法


◆称号


────────────────



「はてなマークばっかだな」


 なんでだろ。とオタク知識をフル回転させ「あ、鑑定のレベルが低いからか?」と勝手に納得。

 鑑定横に下級と書いてあった、使えば中級上級と上がっていくんだろう。ちなみに水袋を鑑定にかけたら



────────────────

「水袋」

────────────────



 と分かり切ったことしか表示されなかった、苛ついたのは内緒だよ。


「まぁのんびりやっていこうか。今回は人間に向けて刀振り回すわけじゃなさそうだし」


 あ、でもこの国の王はムカつく。そのうち誰かが暗殺してくれそうだけど、この国にはいたくないなぁ……と考えていると、「うぅん、」とクロが起きた。


 今更だが、こいつがヒロイン枠じゃないのかどいうほどに顔が可愛い。

 寝ボケているのだろう瞳は欠伸をしたせいで流れた涙で濡れ、朝日に照らされたせいか光を反射してキラキラ輝いている。

 黒い髪には天使の輪がかかっていて、寝癖すら仕様なのかな。と首をかしげるレベルだ。


 これがあと四年でゴリマッチョになるのか……好きな人は好きソウデスネ。


「おはよ。水のむ?」

「のむ」


 クロに水袋を渡すと勢いよく水を飲み干した。あ、全部飲みやがったこいつ。取り上げれば、「あー!」と飲み足りないのか叫ぶクロ。唇をペロリと舐めるのはいいけど、その顔ではやめてほしい。え、何でかって? 負けた気分になるからだよ!


「久々にまともに寝れたわ」

「そりゃよかったね。クロ、ガーネットさんたちのところ行く前に一つ聞きたいんだけど」

「んぁ? 何?」

「この国についてどう思う?」

「うーん、国自体はわからないけど、国王に対しての好感度はマイナスだ。正直この国にいても良い事無いような気もするな」

「オッケー。この国からでようクロ」

「了解、でもどこにいくんだ?」

「ガーネットさんたちに聞く」

「それが一番手っ取り早いな。あ、もう一個不安要素」


 「なに?」と聞けばクロが真面目な顔で「俺達のチート、どうやって隠す? 特にステータス」と自分のステータスを開示してきた。


「そうだった。オタクの知恵よ、私達にいいネタを与えたまえ!」

「もう少し真面目にラノベを読んでおくべきだったな、俺ゲームばっかりやってたからなぁ」


 うーん? と二人で腕を組みながら悩むこと数分、自分のステータスをみて気がついた。

 スキルにある『創造』ってなんぞや。言葉通りならかなりのチートだよ?


「ねぇ、スキルに創造ってあるけどこれ使えるんじゃない?」

「おっ……ってもしかしてこれ一つでもチートじゃないか?」

「それな。でもスキルってどうやって使うんだろう。さっき鑑定は使えたけど」

「ちなみに鑑定はどうやって使ったんだ?」

「対象を見ながら鑑定って言っただけ」

「そのまんまか。うーん、完全詐称とかをイメージしたら?」

「詐称は偽っていうだからちょっと違うんじゃない? これは見るも含まれると思う。難しいんだよ日本語は。どの言語も難しいけど」

「よっ国語の先生!」

「元な元! あ、完全偽装は? もっともらしくつくる、カムフラージュのイメージで初期設定を作れば……」

「その前に創造でスキルを本当に作れるのか、言葉以前の問題がある」

「それな」


 「まぁやってみてよ」とクロにやらせようとすると「俺がやんのかよ」とブツブツ言いながら、やってみようとするあたり流石クロだと思う。


「えーっとどうしようかな、まずはイメージ。シロ、完全偽装の意味って何?」

「あー、事実を覆い隠すために他を装うことと、周りに似せて見分けにくくすること、かな。完全はわかるっしょ?」

「おっけー。むー、欠けることのない偽りの装い。開示用、初期値設定、他者からの鑑定時に出現≪創造≫」


 ん? 『創造』だけ何か言葉が変わっていたな。と思っていれば、「お、おぉ!! シロ!! できた!!」とよろこんでいるクロに向かって「鑑定」と呟く。



────────────────

『クロ』

12歳

Lv:1

HP:5

MP:5


◆スキル

無し


◆魔法

火魔法:下級


◆称号

無し


────────────────



「あ、ほんとだ。めっちゃ弱い」

「弱い言うな」


 「シロもやってみろ!」というのでやってみる。クロはなんと言ってたっけ、それに『創造』という言葉だけ別の言語だったのはなぜか。


「クロ、さっき創造って言った時何を意識してた?」

「日本語。俺達話す言葉はこの世界の言語になってるからな。日本語でイメージしながらスキル作るなら日本語で締めときたいだろ?」

「あぁ、なるほど。なら全部日本語で言うわ」


 座禅を組み「すぅ」と息を吸い、吐き出す。


 集中、イメージするは完全偽装。




≪欠けることのない偽りの装い・開示用・初期値設定・他者からの鑑定時に出現・創造≫




 何か魔法詠唱ぽくなって恥ずかしいな。と思いながら『創造』を発動させると、目の前にポップアップがでる。



────────────────

『シロ』

12歳

Lv:1

HP:5

MP:5


◆スキル

無し


◆魔法

水魔法:下級


◆称号

無し


────────────────



 クロにもみて貰うと「おう、隠蔽されてる。あ、隠蔽でもよかったんじゃね?」と今更なことを言ってくるが、隠蔽は隠すだけだからまた意味が変わってくると返しておく。


 改めて自分のスキルを確認してみるとこうだ。



────────────────

『シロ』(深山真白)

12歳(58歳)

Lv:98

HP:9988

MP:9988


◆スキル

剣術:神級

銃術:神級

格闘術:神級

暗殺術:神級

馬術:上級

詐術:上級

鑑定:下級

創造:中級

完全偽装:神級


◆魔法

火魔法:下級

水魔法:下級

土魔法:下級

風魔法:下級

光魔法:下級

闇魔法:下級

空間魔法:下級


◆称号

「刀神」

「侍大将」

「維新の英雄」

「紅き修羅」

「異世界召喚者」

「神のいとし子」


────────────────



 完全偽装、レベルは神級……看破される心配ないことはわかった。クロも気づいたのか「うげっ、完全偽装のレベル上級だ。チートこわ」と言っている。うん? 上級?


「え、神級じゃないの?」

「え、上級だぞ?」

「え?」

「えぇ?」


 二人で首をかしげ合っていれば、扉を叩く音がして「二人とも朝だよ」とガーネットさんの声が響いた。

 まぁ、あとで調べればいいか。


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