2話 手紙

「おい!起きろ!青葉あおば はく!」


「うるせぇよ……」


 何回も名前が呼ばれる声に目が覚めると、目の前にはさっきまで青かった空が赤く染まった姿が広がっていた。


 横になったまま、声のしていたほうを見ると、そこにいたのは友人の赤崎あかさき 牢馬ろうま。正確には、友人兼居候だ。


「ったく、お前はいつも『この野原に来ると寝ちまうから、気をつけろ』っておふくろさんに言われているだろ!」


「いつもじゃねぇよ」


「いや、いつもだ」


「少なくとも、今日は言われなかった」


 屁理屈を言い合えるような親友でいてくれる牢馬に感謝しているというのは、死んでも言わないが、こんな会話をしているこの瞬間が俺は好きだ。


 少し黙っていると、そんな俺に腹が立ってきたのか、牢馬が拳を構えた。本気で殴ることはないとわかっていても、牢馬のパンチとなると、少々身構えてしまう。


 その拳に、水色の何かが見えた気がして、咄嗟にその拳を止めた。普段はかわすだけだったが、その勢いで水色の何かが吹っ飛ばされるのは困る。


「ん?何で止めた?」


「その水色の紙は何だ?」


「あー、これの事か。すっかり忘れていたぜ」


 いや、手に握っていたのに忘れることは、まずないだろう。


 牢馬は体力だけが取り柄の大馬鹿男だ。彼の生まれ持った瞬発力に助けられたこともないこともないが、運動以外は点でダメ。心は俺より子供だ。


「ほい、お前に手紙」


 俺に、手紙?

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