9#野良猫と子猫、夢の中で風船で空を飛ぶ
ざぁぁぁぁぁぁーーーーーー!!
びゅうううううーーーーー!!
暴風雨が吹き荒れる中。
弱りきった子猫の為に人間の店から失敬しようとして、怒った店員に棒切れで叩かれた痛みを堪えて、歩く気力も失せた子猫の首筋をくわえて、廃工場の中へ迷いこんだ。
「はあ・・・はあ・・・」
身体も、縮んできた尻尾の赤い風船もずぶ濡れの子猫は荒い息をして横たわった。
「ごめんな・・・子猫よ・・・俺も腹ペコだ。
イテテテ・・・人間に殴られた痛みが雨水に染みるぜ・・・」
野良猫のアルは、ブルブルブルブルと身体を震わせて雨水をふるい落した。
「よっこらしょっと。」
野良猫のアルは、深い寝息を立てる子猫の傍らに横たわった。
「子猫よ・・・俺も眠くなった・・・俺も一緒に寝るぜ。」
野良猫のアルは、ふぁ~~~ぁ!!と大あくびをすると、がーーー!!がーーー!!と豪快に大イビキをかいて直ぐに眠りこけた。
・・・・・・
・・・・・・
・・・・・・
・・・・・・
しゅーーーーーーー!!
「・・・ムニャムニャムニャ」
「あ、起きた?」
子猫は、ヘリウムボンベによじ登って、尻尾に結んでいた筈の赤い風船にヘリウムガスを入れて膨らませていた。
「どうしたの?そのヘリウムボンベ。」
「この建物にあったにゃ。おじちゃん!おじちゃんの分も、僕が膨らませてあげたから。」
「俺の分?!」
ヘリウムボンベには、パンパンに膨らんだカラフルな7色のヘリウム入りのゴム風船が、紐が付けられてフワフワと揺れていた。
「風船で一緒に空を飛ぼう!!」
「ええっ?!あれ?いつのまに・・・?!」
7色のヘリウム入りの風船が、野良猫のアルの身体に括られていて、ビックリした。
「ほうら!外へ行こう!!こんなに空は晴れてるから!!」
赤い風船を尻尾に付けた子猫はそう言うと、空高く舞いふうわり・・・と舞い上がった。
「あっ!!子猫!!待ってくれ!!」
野良猫のアルは、気合いを入れて頬っぺたをぷうっと孕まし、地にネコキックをして反動をつけると、ふうわり・・・と空高く舞い上がった。
「えっ?!本当に飛んじゃった!!」
段々と地上が、豆粒のように小さくなっていく。
雲をどんどん突きっていく。
「おーーいー!!子猫やーーい!!待ってくれぇーーー!!」
野良猫のアルは両脚をバタバタと宙を掻いて、どんどんどんどん空高く空高く空高く・・・飛んでいく子猫を必死に追いかけた。
にゃんにゃんにゃーーお♪
にゃんにゃんにゃーーお♪
にゃんにゃんにゃーーお♪
にゃんにゃんにゃーーお♪
空遥か向うの雲間で、猫達の愉しく唄を歌っている声が聞こえてきた。
「ようこそ!子猫ちゃん!!猫の天国、『にゃんこスター』へ!!」
・・・『にゃんこスター』・・・?!
「子猫ちゃん!『にゃんこスター』は、貴方を待っていましたっ!!」
野良猫のアルは、『にゃんこスター』のある雲間に降り立つと、『にゃんこスター』の猫達に笑顔で出迎えられた子猫の側にやって来た。
「ああぁぁぁぁーーーーー!!」
野良猫のアルは、目を見開いた。
アルの目から、大粒の感激の涙が流れてきた。
「お、オメエら!!い、生きてたんだ!!
死んでいった俺の兄弟!!
俺の舎弟のグル!!
ライバルだったゴロ!!
あいつも!!こいつも!!
逢いたかったぜぇぇーーーー!!」
野良猫のアルは、感極まって走り寄ってきた。
パァーーーーン!!
「うにゃーーーっ!!」
野良猫のアルの身体に括られていた、風船の1つが破裂した。
「グル!!何で俺の風船を引っ掻いてったんだ!!」
「アルさん!来るな!!」
パァーーーーン!!
「うにゃーーーっ!!」
また、野良猫アルの風船が割れた。
「ゴロまで俺の風船を割るのか!!」
「お前はまだ死んではない!!」
パァーーーーン!!
「うにゃーーーっ!!」
「まだお前はやるべき事が残っている!!」
パァーーーーーン!!
「うにゃーーーっ!!」
「帰れ!!地上へ!!」
「でも・・・子猫は・・・」
パァーーーーン!!
「うにゃーーーっ!!」
「この子猫は・・・!!」
パァーーーーーン!!
「もう死んでるんだよ!!」
「死んだ?!嘘だ!!」
パァーーーーーン!!
「うにゃーーーっ!!」
最後の風船が割られた。
「嘘だぁぁぁぁーーーーー!!」
ひゅうううううう・・・・・・
『にゃんこスター』の猫達に、身体に括られていた風船を全部割られた野良猫のアルは、まっ逆さまに地上に落下していった。
ひゅうううううう・・・
どさっ。
・・・・・・
・・・・・・
・・・・・・
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