7#野良猫と子猫、風船と共に

 「子猫や、また風船縮んできたから、おじちゃんが口で膨らませてあげようかにゃ?」


 ・・・やべえ!また思っても無い事言っちまった・・・!!

 ・・・しょうがねえ、有言実行だ・・・


 

 ぷぅ~~~~~~!!

 ぷぅ~~~~~~!!

 ぷぅ~~~~~~!!

 ぷぅ~~~~~~!!


 ・・・割れるなよ・・・

 ・・・割れるなよ・・・


 ぷぅ~~~~~~~!!



 「よし!出来たにゃ!こんぐらいの大きさがいいだろ。」


 「にゃにゃにゃ!!おじちゃん!風船を膨らますと、顔も大きく膨らむねえ!!面白いにゃ!!」


 「ほっとけ子猫ちゃん!!」


 子猫の尻尾の赤い風船の中はヘリウムガスが殆ど無くなり、殆どが野良猫のアルの吐息が詰まっていた。



 野良猫のアルと子猫はそれから、いろんな所を歩いた。


 街、公園、丘、川、海、森、山・・・


 いろんな景色を一緒に見て、


 いろんな場所で遊んで、


 時たま、どっかから食物を失敬したり、通りすがりの人間に餌を貰ったり、


 気持ち良さげな場所で一緒に寝たり、


 雨が降れば、一緒に雨宿りして、


 楽しい事を見つけて、一緒にはしゃいだり・・・



 たまに通りすがりの野良猫に、


 「おーい!オメエは無頼猫のアルじゃねーか!!おい、こいつはオメエの隠し子か?かわええにゃ!!」


 と、からかわれる事も。


 「ウルセー!!違う!!」



 

 しかし・・・そんな散歩の日々にもやはり、暗い影が潜んでいた。



 どたん。


 散歩の途中で、また子猫は倒れこんだ。


 「大丈夫か?!」「大丈夫にゃ・・・ちょっと疲れたみたい。」


 子猫が途中で倒れる頻度が、段々と増えてきた。


 「しょうがねえ、ここで休むか。」


 野良猫のアルは、浮力が無くなり紐で尻尾にくくりつけている状態の、艶がすっかり消えた赤い風船を見詰めていた。


 「だいぶ風船のゴムが伸びきってるな・・・今度膨らませたら、すぐ割れちゃうな・・・こりゃ。」


 野良猫のアルは子猫の幾ばくの無い命が、この風船の今にも割れそうな畏怖と連動しているような気がしてならなかった。






 

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