5#野良猫アル、子猫の風船にハラハラする
「おじちゃんが鬼ねーー!!にゃんにゃんにゃーー♪」
尻尾に赤い風船の紐を付けた子猫は、ちょこちょこちょこちょこちょこちょこ・・・と駆け出した。
「待てぇーー!!」
思わず子猫にのってしまった無頼猫のアルは、逃げていく子猫を追いかけた。
どんどんどんどんちょこちょこちょこちょこちょこと、逃げていく子猫。
野良猫のアルは、突然心配になった。
・・・もし、あの風船が何かの拍子にパンクしちゃったら・・・?!
・・・「ぱーーん!!」なんか聞きたくないぜ・・・!!怖いぜ風船・・・!!子猫泣いちゃうぜ・・・!!子猫を悲しませる事はしたくないぜ・・・!!
野良猫のアルは追いかけている尻尾の無造作にフワフワ揺れる子猫の風船に、ゾッとした。
子猫の風船は電柱や、自転車、棚や、立ち看板、そして通りすがる人々にポンポンポンポンとぶつかり、その度に野良猫のアルはドキドキハラハラした。
・・・割れちゃう・・・!!
・・・割れちゃう・・・!!
・・・割れるなよ・・・!!
・・・割れるなよ・・・!!
・・・割れるなよ・・・!!
「猫だーーーー!!」
「猫が走ってる!!」
「子猫が風船付けてるーーー!!」
「にゃんこ可愛いぃぃぃーーー!!」
野良猫のアルは、ハッ!!と気付いた。
自らの置かれている立場を。
ここは、人通りのある街角。
余りにも人間に目立ちすぎる。
人は、風船を付けた子猫と追いかけるアルを捕まえて撫でようと手を伸ばしてくる。
「どけーーー!!どけーーー!!どけーーー!!どけーーー!!うにゃーー!!うにゃーー!!うにゃーー!!」
野良猫のアルは、叫び声をあげて必死に人々の足元をスラロームして、見失いそうな子猫を揺れる尻尾の風船を目標に追いかけた。
ぶおん!!
人間の足が、子猫の風船の真上からやって来た。
「ええーーっ!!」
ぽーん!!
野良猫のアルはとっさに飛び出し、爪を立てないように風船にネコパンチして人間の足から踏み潰されそうになった風船を守った。
「ふーっ・・・ビックリした・・・ええーーーっ!!」
今度は風船は緑地の枝に触れそうになった。
「うにゃーーーーーっ!!」
野良猫のアルは、またネコパンチで尖った枝から風船を守った。
「あー、心臓に悪いよ。」
野良猫のアルは、冷や汗をかいた。
よたよた・・・
よたよた・・・
よたよた・・・
よたよた・・・
「あれ?」
子猫は突然失速してしまい、ビルの片隅に倒れこんでしまったのを野良猫のアルは見つけて、心配になって話しかけた。
「どうしたんだ?子猫よ?」
「な・・・何でもないよ。ちょっと疲れただけ。」
子猫は、はあ・・・はあ・・・と荒い息使いをして虚ろな目で野良猫のアルを見詰めていた。
「楽しかったぁ・・・鬼ごっこ・・・」
子猫の身体を野良猫のアルは見て、気づいた。そして戦慄した。
・・・もしや・・・この子猫・・・まさかな・・・?
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