34 褒美
五月十五日、月曜日。
黄金の連休、もとい抹殺の連休から一週間が経過し、教室には代わり映えのしない日常が戻っていた。
「姫香はまだ来てないの?」
「……みたいだな。麻衣も風邪とか言ってたし」
気さくに喋りかけてくる彩音を眺めながら、僕は内心ほっとする。
姫香の死はまだ伝わってないらしい。
――だーりんだーりん。
昨日、チャットに届けられた、その一言。
二回繰り返しただけのその文言は、僕と麻衣が事前に申し合わせていた『超重要メッセージ』の合図だ。絶対に誰にも見られないことを担保した上で、続きを促すという取り決めになっている。
僕が『いいぞ』と返した後、麻衣が送ってきたのは一つの画像で。
姫香の死体だった。
裸で、髪が乱れて、あちこちが出血していて、
画像は、僕の既読を確認したのか、数秒も経たないうちに削除された。
そこからほとんど間を置かずに『だーりん側のブラウザキャッシュも消してよ』、そして『これ天神家に見られたら一発で人生終わるからね』と連投され、僕はその通りに対応したのだ。
そう、姫香は確かに死んだ。
麻衣は、あの怪物は――やってのけたのだ。
「ふうん。バカでも風邪を引くのね」
姫香は元々家の都合で学校を休むことも珍しくないため、彩音も特に気にはしない。
さて、あと何日続くだろうか。早ければ明日、あるいは今日の午後にでも悲報が届くかも。
とりあえず今は会話か。
「麻衣はバカじゃねえよ。お前にも負けてねえぞ」
「あら、彼女の肩を持つの?」
「当たり前だろ、彼女なんだから」
「むぅ」
クールビューティーが頬を膨らませて拗ねてやがる。
「麻衣みたいなリアクションしても似合ってないぞ」
嘘だった。不覚にも可愛いと思ってしまった。
彩音のこんな表情は滅多に見れるものではない。
「瞬は麻衣のことばかりね」
「彼女だからな」
「らしくないわ」
「……僕も変わったんだよ」
いや、変わらざるを得なかったというべきか。
そうしなければ僕は既に死んでいた。麻衣の手によって。
あるいは既に始末したテレポーターの誰かがやらかして、世間に露呈してしまっていたか。
麻衣と恋人関係を結んだこと。
他のテレポーターを全員殺したこと。
僕の判断は、間違っていない。
「じー」
「その目と擬音語は何ですか彩音さん」
「別に」
「僕に
「そうかもしれないわね」
本音にせよ、ジョークにせよ、今は勘弁してほしかった。
姫香を殺した――厳密には麻衣に殺させたのだが――後ろめたさがぬぐえない。
今はまだ家の事情で通っているが、近いうちに死亡か、行方不明か、姫香の悲報が届くだろう。
そうなった時、彩音は何を思うだろうか。
僕はその件の雑談で、ボロを出さずに振る舞えるだろうか。
下手なことを喋れば不審感を抱かれてしまう。かといって何も喋らなければそれはそれで怪しまれる。
いつもどおりに過ごせばいいとはいえ、友人のお嬢様が死んだ例などあるはずもないわけで。
「……諦めろ。僕には麻衣がいる」
「結婚するつもりでもないんでしょ?」
「今のところはそうだが、だからといって他の女を気にかけるのは不条理というものだろう」
僕みたいな非モテがこんな台詞を言う日が来るとは。
そのおかしさは彩音も感じたようで、ぷっと露骨に吹き出していた。
「私を女扱いしてくれるのね?」
「そりゃそうだろ。お前、自分が思ってるよりも美人だぞ?」
一年前の入学当初、彩音のそばにいた僕がどれだけやっかまれたか覚えてないのだろうか。
「幼なじみなのに?」
「だからこそだよ。いつも見てるから、誰よりもわかる。お前は美人だ」
「麻衣とどっちが可愛い?」
「……彩音の方が美人だ」
つま先が飛んできて、的確に僕のすねを打つ。
「可愛いかどうかを訊いたんだけど?」
コツコツと連打してくる。かなり痛いからやめてくんない? と目で問うてみたが通じなかった。
「タイプが違うんだから仕方ない。麻衣は童顔の可愛い系、彩音はクールな美人系。比較なんてできねえよ」
「でも瞬は前者は好きなのよね」
「まあな」
「胸も巨乳が好き」
「うむ」
「変態」
「でも彩音のことも好きだぞ?」
すらりと伸びた脚が振りかぶられたのが見えて、僕はとっさに体育座りのように両足を上げて待避する。
彩音のキックは僕の椅子、座面の底を突いた。パワーが強いからか、少しだけ尻が浮く。
相変わらず手足がすぐ出るのはさておき……あながちジョークでもないんだよなあ。
そういえばこいつに迫られたこともあったっけ。
あの時、本当なら僕も素直になって、もしかしたら恋人になれていたのかもしれない。
が、まだその時じゃない。
そうだよ。
僕は変わったんだよ。
今は彼女持ちだ。麻衣という可愛い可愛い彼女がいるんだ。
なら、麻衣に夢中でもおかしくはない。
これを理由にすれば、彩音とは距離を置ける。
置くべきだ。
既に姫香は死んでいるのだから。
赤の他人が死んだのとは訳が違う。
僕にとっても、彩音にとっても、姫香は友人だった。
友人という身近な存在が死んだということ。殺したのが実は僕と麻衣だということ。――僕は心理的なハンデを二重に抱えてしまっている。
彩音と、こうして過ごすこと自体が危険なのだ。
そう決意を固めていると、耳に予鈴が届いた。
教室の喧噪が色を変える。英単語の読みと意味の口ずさみが飛び交う。そういえば小テストだったか。どうでもいいな。
彩音がスマホをいじり始めたので、僕も倣う。
ZINEに新着があった。
開いてみると、麻衣からだ。
『STACKは午前中に全部消します』
僕らがいつも使っているチャットサービスのことだ。
何を意味しているのか、言われずともわかった。
抹殺ゲームが完遂した今、このチャットはもはや不要である。どころか、テレポートの実験結果やテレポーターの殺し方について書き込まれている分、爆弾とも言えるだろう。
誰かに見られるのを防ぐには、完全に削除してしまうのが確実。
くっ、僕が手間暇かけて書いた文章たちが全部消えるのか……。
名残惜しいが仕方ない。
『わかった。いつ消してもいい』
潔く返事を出す。
すると、麻衣からもすぐに返信が。
『おっけ』
『もう用事は済んだのか?』
麻衣が今日休んでいるのは後始末のためだと聞いている。
姫香を殺したのは日曜日のはずだが、さすが天神家だけあって一筋縄にはいかないのだろう。
『うん。あとはお楽しみの時間』
続いてスタンプが一つ貼られた。
ナイフとフォークを持った女の子がステーキを見て、よだれを垂らしている。
『放課後ここに来て。制服のままでいい』
住所が貼られ、地図が貼られた。
……いよいよか。
――僕の童貞をくれてやる。
麻衣を動かすために切ったカード。
麻衣にとっては褒美だろうが、僕にとっては代償だ。
可愛くて、胸も大きくて、僕に甘々で――麻衣とヤれること自体は正直楽しみだが、そんなことのために将来が無くなってもいいかというと、そうじゃない。
麻衣という怪物は、今は僕という暇つぶしで満足してくれている。
僕で色欲を満たすこともその一環だが、今まではずいぶんと小出しだった。せいぜい誘惑してくる程度であり、僕は何とか耐えることができた。
本当なら襲うこともできたのに、麻衣がそうしなかったのには理由がある。抹殺ゲーム――他のテレポーターを全員殺すという僕の画策を鑑賞していたからだ。
だが、そのゲームも既に終了した。
僕と麻衣をつなぎ止めるのは、もはや僕の貞操だけだ。
そして今、僕は――それさえも差し出した。
誘惑でも、ちょっかいでもない、正真正銘の本番行為。
麻衣が少しずつ味わっていた退屈を、小出しではなく一気にプレゼントした形となる。
だからこそ、それは麻衣にも魅力的で、姫香殺しを受け持ってくれるほどだったわけだが――その分飽きるのも早いはずだ。
一年は保つまい。
半年、いや三ヶ月も無理だろう。
一月さえも危ういかもしれない。
飽きたら、僕はどうなる?
……殺されるだろうな。
僕が麻衣でもそうする。
何たってテレポートという超常現象を知る唯一の人間なんだからな。
用が済んだら、念のために殺す。そう考えるのが普通だ――
「はぁ……」
スマホをしまい、机に突っ伏す。
「だらしないわね。今回の小テスト、難しいのに」
人の気も知らないで呑気なこと言いやがって……。
かといって相談するわけにも、当たり散らすわけにもいかず。
「……五月病かもしれん」
「変態らしくないわね」
「僕を変態扱いするな」
彩音の言葉を適当に聞き流しながら、僕はラスボスの対処に頭を悩ませた。
◆ ◆ ◆
放課後。
麻衣に指定された場所を訪れた僕は、予想以上の雰囲気に圧倒されていた。
現代の日本には似つかわしくない宮殿風の建物。
そばには大きな看板があって、筆記体のような字で利用プランが列挙されている。二時間、三時間、六時間――短時間の利用を前提として用意された、休憩という名のプラン。
「ここって……ラブホテル、だよなあ」
見たところ未成年禁止の注意事項は書いてないようだが、僕でもわかる。
高校生が来ていい場所じゃないだろこれ……。
だが、麻衣がこの中の一室で待っているわけで、帰るわけにもいかず。
「……くそっ」
僕は重厚なドアを開き、薄暗くも
正面突き当たりにカウンターがある。
他階へと至るには、突き当たりを右に進んでエレベーターを使うらしいが……これ、どう考えても止められるよな。制服だし。
そうこうしているうちにカウンターに到着。ちょうど、奥から係員が出てきたところだったので、声を掛ける。
「あの、待ち合わせなんですが。901です」
係員の視線が僕の顔から、下へとスライドしていき、最後、また僕と目を合わせたかと思うと、笑顔を向けてきた。
「右手のエレベーターからどうぞ」
「あ、はい」
お断りしないのか。
僕はエレベーターに向かいながら、もう一度係員を振り返ってみたが、僕を気にする様子はなかった。
ボタンを押してしばし待つ。
電子レンジみたいな音で扉が開き、中から若い男女が出てきた。たぶん大学生だ。表情はどこか固く、ぎこちなさが漂っていた。
入れ違いでエレベーターに入り、最上階の九階へ。
扉が開くと、高級ホテルと言われても疑わないような内装が飛び込んできた。901は……一番端、角部屋か。
目前まで近づき、ドアをノックする。
間もなくドアが開いて、「ささ、どぞどぞ」麻衣は制服姿だった。
「ああ、お邪魔します……つか広いな」
後ろ手にドアを閉めながら、早速飛び込んできた広さが目に付いた。
壁には絵画、天井にはシャンデリア、家具もいちいち小洒落ていて、ベッドもやたら大きい。
「スイートルームだよっ! 広いでしょ?」
「ここ、いくらするんだ?」
「だーりんは気にしなくていいよ。わたしのおごりだから」
さすが二階堂王介の娘。お小遣いとか桁が違うんだろうなあ、などと思いつつ、リュックを降ろす。
どこに置こうかと見渡して……ここのソファーでいいか。リュックを置き、その隣に腰を下ろした。
「りんご食べる?」
「りんご?」
麻衣は高価そうな椅子に座っていて、左手にりんご、右手にナイフを握っている。
テーブルにはバスケットがあり、いくつか果物が入っていた。
「じゃあもらおう」
「あーんしてあげる」
ナイフをかざす麻衣。
「ナイフはやめろ。怪我するだろ」
「じゃあ口移し?」
「……普通に食べたいんだが」
「けち」
麻衣は口笛を吹きながら、器用にりんごの皮を剥いでいく。
突き出された唇が妙に艶めかしく見えるのは気のせい……じゃないな。ついつい意識してしまう。
あどけなさと年頃の色気が同居した顔立ち。
ブラウスを押し上げている胸部。
健康的で柔らかそうな生足。
僕はこれから本当に、この麻衣と――
「だーりん。見すぎだから」
「あ、いや……忙しくてあまり意識してなかったけど、麻衣ってめちゃくちゃ美少女なんだなって」
「へっへ-、ようやく気付いたか。お礼にこれを進ぜよう」
麻衣はナイフを置き、切り取られたりんごの皮をちぎったかと思うと、その皮が突如消え失せた。
僕は反射的に上を向き、手をかざす。
案の定、皮が落ちてきて、手のひらに乗っかった。
「栄養は皮に集中しているらしいよ?」
「適当なこと言うな」
「ほんとだって」
「本当だとしても、皮を食べる気にはならないな」
皮の一端をつまみ、掲げてみる。
ほとんど同じ幅のまま何十センチと続いていて、「おー」柄にもなく感心してしまう。
「そう? わたしはだーりんが皮被りでも食べるけど」
「……」
にこっと微笑んでくる麻衣。……どうしろと。
「恥ずかしがることはないってー。テレアームで触ってるから答えは知ってるし」
「恥ずかしがってないから。あとテレアーム痴漢はやめろ」
僕はりんごの皮を持ったまま立ち上がり、麻衣の隣に腰を下ろした。
白い皿が重ねてあったので、上の皿を降ろし、皮を置く。
……くそ、どうにも落ち着かん。
「器用だよな。麻衣は料理とかするのか?」
部室に持ってくるサンドイッチは家政婦がつくったと言っていたが。
「ううん。そんなことしないよ。家政婦さんにお任せさ」
「にしては妙に手慣れてるみたいだが」
「小さい時に遊んだことがあるからねぇ。そうそう、あの時はひめっちもいたかな」
「もういないけどな……」
「だーりんのせいでね」
「殺したのはお前だろ」
「ふふっ」
麻衣が楽しい思い出を振り返るかのような微笑を浮かべた。
「ひめっちと遊んで楽しかったし、ひめっちで遊んで気持ちよかったよ」
「そいつは良かったな」
平然と返した僕だが、その一言で一気に現実に突き戻された。
後者の意味を即座に察した僕も僕だが。
「でも。本当に気持ちいいのはこれから」
皮を剥き終えた麻衣がサクッ、サクッと生身のりんごをカットしていく。
「ほい、どうぞ」
「サンキュ。いただきます」
僕がりんごの一切れを掴むと、麻衣もナイフを置いて、一つをつまんだ。
一応、僕は毒を警戒して、行動スピードを少し落としてみたのだが、麻衣はすぐに食べ始めていた。
シャクシャクと咀嚼音が響く。
「ほいひい」
「……確かに。こりゃ美味い。甘い」
微かに流れる癒やし系のBGMを聞きながら、僕らはしばしりんごを消化した。
「さてさて」
最後の一切れを僕が食べ終えたところで、麻衣が立ち上がった。
食器を片付けるのかと思いきや、その姿が消える。
間もなく背後に気配を感じた時には、僕の頭と顎が両手でがっしりと掴まれ、掴まれたのだと感じた頃には、目の前に麻衣の顔があって――唇を舐められた。
垂れたソフトクリームを舐め取るかのように、ぺろりと。
「だーりんの唇、嫌いじゃないなあ」
「……唇に好き嫌いなんてあるのかよ」
「んー、知らない。でもだーりんのは好き」
「りんご食べたばかりなんだが?」
「知ってる。食後だからいいんでしょ?」
麻衣の右手が僕の頭から離れた。
がしっと掴まれたのは――僕の左手。
抵抗する間もなく指をねじ込まれ、絡めて握り合ったような形になった。恋人繋ぎというやつか。
「りんごの風味とカスが口内に残ってるでしょ。それを食べ合うの。今ひらめいたけど、きっと楽しいよ」
楽しいかどうかを想像する前に、僕は痛感した。
……敵わない。
ぴくりとも動かない。この恋人繋ぎだってテレポートで逃げるのを防ぐためなんだろう。
やはり力の差は歴然だ。僕ではどう足掻いても勝てやしない。
麻衣との距離が再びゼロになった。
唇を、舌を押し当てられる。
反射的に食いしばって抵抗を試みたが、同じ舌とは思えない力強さであえなく押し広げられた。
それの侵入を許し、なすがままに、内部から弄られる。
ぬるっとした、生暖かい感触。
熱を持った、柔らかいそれに、ただただなぞられて、変な気分に陥りそうだ。
りんごの風味が付いてるのと、口呼吸できなくて割と苦しいのがせめてもの幸いだった。
一分ほど経ってから、麻衣が離れてくれた。
その唇は赤子のようにねっとりとしていた。たぶん僕も同じだ。
「ちょっと固くなってる」
麻衣がにやけながら僕の下半身に視線を降ろす。
「……テレアームで触ってるのか」
「うん」
「まあ、男だからな」
冷静ではあったが、完全ではなかったらしい。
いや、正直言えば自覚はあったし、これ以上大きくしないよう堪えたまである。
「だーりんが言ったこと、覚えてる? 一方通行じゃなくて、相思相愛だってこと」
「ああ。覚えてるよ。約束通り、麻衣は姫香を殺してくれたな」
麻衣が期待の眼差しで僕を見つめる。
「僕は、麻衣が愛おしい」
「うんうん」
「本当に……いいんだな?」
「いいよ。来て」
誘惑するように、小悪魔のような笑みを浮かべて麻衣が言う。
「だーりんの全てをぶつけて。汚してもいいし、傷つけてもいいし、何なら宿したっていいから」
「いや、それはさすがに……」
「だーりんは抹殺ゲームの勝者だもの。そんなこと気にしないでしょ?」
言われて自覚する。
そうだった。僕は既に何人も殺しているのだ。
そしてその事に対して、何とも思っていない。
彩音以外の、唯一喋る仲だった姫香に対しても、何とも思わない。むしろ最大の脅威が消えてくれてほっとさえしている。
僕はおかしいのだろうか。
「ああ、そうだな」
いや、そんなことはどうでもいい。
まだゲームは終わってない。あと一人、目の前にいるじゃないか。
最強の味方にして、最悪の敵が。
僕はどうやったらこいつを殺せる? でも今すぐ殺されることはないよな、ここは素直に楽しむべきか。でも楽しむことが結果的に自分の首を絞めることにはならないか? 僕はおかしくない。無関係の人間が死んだって何とも思わない。麻衣も言っていたじゃないか、いちいちニュースを見て悲しむかって。姫香? あいつは友人以前に脅威だった。放っておけば僕の人生が詰んでいた。命あっての物種だ、自分が何よりも大切だ、それを脅かすものは消すしかない、そうだろう? で、今最大の脅威である目前のモンスターはどうするんだ? つかこんな色っぽい顔してんだな。さっきの口内責めも正直くらっと来たし、じゃなくてこいつはラスボスなんだぞ油断してダメで――
僕の頭がかつてないくらいに高速回転して、オーバーヒートか、一瞬くらっとして、そして。
「……麻衣の全てをもらう。遠慮はしない。配慮もしない。――いいな?」
「うん」
――明日考えるか。
先送り。
それが僕の出した結論だった。
今はこの場を――この可愛い彼女との
こんな機会は、こんな僕にはおそらく二度はない。あるにしても彩音だけだが、そもそもそこまで生きられる保証もない。
味わっておく他はないのだ。
思考停止と、正当化。
……何をしてんだ、僕は。
でも、今は。
「それじゃ……」
僕は恐る恐る手を伸ばし、麻衣の胸に触れる――
その日、僕と麻衣は結ばれた。
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