甘い思い出と分かれ道の始まり

 




 ………____苺の完全消滅




 突然のそんな話に辺りは、静寂に包まれて誰もが沈黙した。


 だがすぐにそんな沈黙を破るように助けを求めて苺は泣き叫び始めた。


 これから自分がどうなるのか分からなく、不安で混乱しているようにも見えた。

 苺の気持ちを考えると辛かった。



 胸が締め付けられ、息も出来ない感覚になった。


 こんな光景見たくない。

 俺は見たくないんだ。

 どうしてこんな事になったんだ?



「あらあら。動揺してしまっているのですね。佐藤小太郎。思い出してみなさい…この ‘’ 秋姫苺 ‘’ との思い出を 」


 そう白に言われ

 俺は苺と出会った時のことを一つ一つ思い出していく。





 ___________……………………





 この世界に来て、甘いバニラの香りで目が覚めて辺りを見渡すとフルーツの山の中に手のひらサイズの可愛い女の子が俺に話しかけて来たんだ。



「改めまして私は「シュガープロジェクト第1案内人の苺」ですぅ!小太郎しゃん‼︎よろしくお願いしますですぅ」


 無邪気で元気な苺の笑顔の虜になった。



 ちび苺の無垢な笑顔にこの世界での不安がなくなり癒された。



<i286882|24036>



 そしてこの世界のルールを聞き、BAD ENDの説明も聞いたんだ。


 BADENDのリスクを聞き、あれやこれや考えていた時も

 苺が「大丈夫ですぅ〜。 」とニコニコ隣で笑ってくれて不安から救われたんだ。


 苺が ‘’ 本物の苺 ‘’ になって初めてのケーキ作りは本当に悪戦苦闘だった。


 理想の女の子を作る五種類の粉はかなり悩んだ覚えがあった。


 何もかもが初めてで、辿々しい手つきで何とか出来たのが「苺」だった。


 苺は本当に可愛くてまさの俺の理想の女の子だった。

 少し恥ずかしがり屋で子供っぽい無邪気な笑顔に小悪魔の様に誘惑する上目遣い。


 そして俺好みの肉つきの良い大きな胸。

 童貞の俺からしたら、こんなに可愛い女の子が俺なんかに話しかけてくれる事自体奇跡で舞い上がった。


 苺が余りにも可愛くて苺の頭に手を置きなでた。


<i288711|24036>


 お互いがお互いを好きそんな気持ちが伝わって、幸せな時間が流れはにかんだ笑顔に甘酸っぱ気持ちを抱いた。



 でもそんな気持ちは、苺が第一次試練を合格してから変わったんだ。



 ___________……………




「見事! 第一次試験合格じゃなぁ‼︎ 合格して何よりだぞぃ!」


「第一次試験を突破したプレイヤーに問う ‼︎ このまま己が作りし乙女と現世を目指すか否か答えよ ‼︎ ‼︎ 」


 そう言われ俺の腕を掴んで離さない苺を見て俺は考えるまでも無く

「もちろん! 苺とここを出る!俺は苺と出るんだ!」

 そう力強く答えた。



 だがその後で彼女……ちびショコラちゃんが現れたんだ。



「第一次試験に合格したお主にこれを授けようぞぃ ‼︎第二案内人‼︎出でよ ‼︎ ‼︎ 」



<i289316|24036>




 ちびショコラちゃんは無口ですぐに顔が赤くなる程の恥ずかしがり屋。

 黙って俺の肩にいつもいる。そんな女の子だった。


 その時俺は苺の子供っぽい振る舞いに、無邪気な大胆さに少し疲れていて苺が試練でしばらくいない事と ’‘ 新たな理想の女の子 ’‘が作れるという甘い誘いに乗ったんだ。


 そして出来たショコラちゃんは、苺とは違い家事が得意で掃除、洗濯、料理なんか完璧にこなしてくれるショコラちゃんが日に日に理想の彼女だった。


 可愛くて気立ての良く、頭もいい。

 大人な妖艶な雰囲気もあるのに家庭的な一面もある。

 そして大きな魅力的な胸。

 正に全てが完璧な彼女。


 ショコラちゃんと二人きりになった時さらさらの髪はとってもいい匂いがしてクラクラした。


<i290601|24036>



 それでいい雰囲気になってキスしょうとしたんだった。



 でも何で…俺キス……しなかったんだろう……。


 思い出せない。


 全く記憶がない。


 どうして何だ?


 頭を抱えて考えてもそこだけ真っ白だった。


「ふふふ。佐藤小太郎のある種の感情が残っていた記憶は削除済みですので削除した言葉のキーワードが無い限り戻りませんので思い出せないのも無理ありませんわ。」


 白が含み笑いを浮かべる。

 馬鹿にしたような笑みに無性に腹立たしくなり思わず大きな声が出た。


「 ‘’ ある種 ‘’ の感情って何だよ! 教えろよ!何で削除なんかするんだ!!!! 」


「あらあら。そんなに声を張り上げて人間という生き物は、何って単細胞なのかしら。醜くてゾクゾクするわ……」


 白は恍惚の顔を浮かべたすぐに虫けらを見るような目で俺を見る。


「……オイッ!………ッツ 」


 威圧的な雰囲気に言葉が出ない。


 そんな中、傍聴席にいたショコラちゃんが重い口を開く。


「……あの時……怖くて言えなくて………実は……聞こえました……私にも……裏切者って……」




 _______……………「 裏 切 者 」



 俺の消えた筈の記憶が一つ戻ってきた気がした。


 つづく





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る