彼女の変化と決断の時

 

 いつものショコラちゃんからは考えられない様な大きな声に、さっきまであんなに話していたちーちゃんも黙った。



 辺りが静まり返ってから数秒後

「私……全然……大丈夫……気にしないで…… 」


 陽気な雰囲気に満遍の笑みを浮かべショコラちゃんはこちらに手を振っていた。



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 いつもと違う別人かと思うようなショコラちゃんの雰囲気に俺は戸惑う。


「ほら。 麗し乙女ショコラがああ言ってます。気にせず裁判を続けませんと時間になってしまいますよ? 」

 白が示す先の砂時計はもう殆ど、無くなりかけていた。



「あわわ〜! 小太郎さん! もう時間がないなのです。なので詳しくは聞けないなのです!だけどちーの意見を言うなのです。小太郎さんにとって大切な人ならリセットしないで生かすべきなのです!小太郎さんが「シュガープロジェクト」を初めて良かったと思うなら尚更、リセットはするべきではないなのです! あと……」


「プレイヤー審議終了!!!!」



 ちーちゃんが話している間に審議の時間が終了してしまった。


「あわわ〜もっと話したかったなのです。 」


「第3乙女はお黙りなさい!もうプレイヤー審議は終了しました。次はプレイヤー佐藤小太郎とプレイヤーに愛されし乙女ショコラの「幸せのかけら」と「慈愛のかけら」の投票になります。」




 さっきのちーちゃんの意見で俺の心は決まった。




 ____……武を生かそう。





 武は俺の唯一無二の親友。それに俺にこの「シュガープロジェクト」を教えてくれた張本人だ。


 仮に武が俺のことを恨んでこのゲームをダウンロードさせたとしても俺はここに来れて幸せだ。


 それに親友の全てを奪う事なんて俺にはできない。

 それは武が俺の事を盗撮、盗聴していたとしても……。

 かけがえのない友人を俺は殺せない。

 こんな簡単な事なのに俺は、ちーちゃんの意見を聞かないと決断できなかった。


 武を救う。

 その為には俺の「慈愛のかけら」とショコラちゃん「幸せのかけら」を均等に投票しなきゃいけない。

 ショコラちゃんには白の方に投票してもらわないといけないな……。


 そんな事を考えていると

「プレイヤー佐藤小太郎の気持ちが見えるわたくしからの助言です。因みにですが、被告森園武を助けたければ、お二人とも黒子に投票して下さい。出なくては今回はバランスが取れませんので。 」



「ありがとう……白。武を許すよ。俺……やっぱり見捨てられないんだ。ショコラちゃんも協力してくれるか? 」


 そう聞くとショコラちゃんは心配そうに首を傾げた。


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「小太郎さん……本当に……本当に許すのですか?武さん……小太郎さん……の事……裏切ったんです……いいのですか? 」


「……いいんだ。武は大切な親友だ! 俺は見殺しする事は出来ない。協力してくれ!ショコラちゃん!! 」


「…………」


「……はい……わかりました……私も黒子さんに……入れます……」


「ありがとうショコラちゃん!」


 俺がそう言うとショコラちゃんは「コクリ」と頷いた。



「……では、投票先が決まった様ですので審判の天秤に投票して下さい 。まずはプレイヤー佐藤小太郎から投票して下さい 」


「はい!」


 そう言い俺は審判の天秤の前に行った。


「プレイヤー佐藤小太郎。その「慈愛のかけら」をお乗せ下さい 」


 白の言葉と同時に俺は黒子の方に「慈愛のかけら」を渡した。


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「は〜い×2 受け取ったよぉ。ハク姉 」


「プレイヤーの投票が終了しました。……では、続いて麗しの乙女ショコラの投票です 」


「……はい」


 そう言って傍聴席から審判の天秤の前まで行った。


「プレイヤーに愛されし麗しの乙女ショコラ。その「幸せのかけら」をお乗せ下さい 」


 その言葉と同時にショコラちゃんは「幸せのかけら」を黒子に渡した。


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 天秤がゆっくり動く。



 ゆっくり動いて平行になった。



「審判の天秤は被告森園武の ’‘ 罪 ’‘ の重さを決めました。その結果は……」



「無罪です。 森園武を現世に返します。 リセットはされません!現状維持のまま、以上第一次裁判終了!!!! 」



 第一次裁判が無事終了した。


 長かった第一次裁判。


 この裁判で俺の周りの状況は刻一刻と変化していった。



 続く

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