口付けと友情
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___……ごめん……ショコラちゃん
不甲斐ない男でごめん。
‘’ 選択する事 ‘’ から逃げてごめん。
俺には親友の武を断罪して裁きリセットする事も、武の過ちを許す事も出来ない。
武を許したい、助けたい。
武を許さない、助けたくない。
人から嫌われる事が怖くて、選択を間違える事を恐れて弱い俺は ‘’また‘’ 選択から逃げたんだ。
全身から水分が抜ける様なのどが渇く妙な感覚、背負いきれない重い決断から逃げれた安堵感。
好きな子を悲しませても己の自己保身の事しか考えられない事の罪の意識。
ぐちゃぐちゃで複雑な感情が入り混じる感覚だった。
そんな俺を見て
「あらあら。佐藤小太郎。なぜ貴方は目に涙を浮かながらそれでも薄汚れた人間臭い笑みを浮かべるのですか。ぐちゃぐちゃで支離滅裂な感情。これが人間の感情というものなのか? 」
そう言いながら白は、審判の天秤から降りて俺の目の前にきた。
両手で俺の頬に触れ
「あぁ。なんて事でしょう。邪で汚くて弱くて醜悪……まさに貴方は人間そのもの。あぁ!なんて人間という生き物は罪深く滑稽で歪んでいてそれでいてこんなに惹きつけるのでしょう 」
恍惚の表情を浮かべた白はそのまま無抵抗な俺に口付けした。
状況が飲み込めず混乱している中、柔らかな唇から伝わる生暖かな甘い感覚が全身を包んだ。
5秒ほどの短い口付け。
でも俺の頭のモヤモヤも胸の締め付けも角砂糖の様に解けて消えていた。
「佐藤小太郎。わたくしは愚かな貴方の罪を許しましょう 」
「……白…お前……口…」
「あら。初めてでしたか佐藤小太郎。そんなに耳まで赤くなる必要はないのですよ? 他意は無い行為です。検事としての務めです。ご理解ください。麗しの乙女ショコラ」
「……はい」
ここからではショコラちゃんの表情が見えない。
ただ力無く返事した声が全てを物語っている様に感じた。
「麗しの乙女ショコラもご理解してくださいましたし、そろそろ第三乙女を呼ばないと間に合いませんね。」
白が砂時計を確認するが砂時計はもう半分過ぎていた。
「時間が足りない様ですので第三乙女を出すリスクの説明、運用の仕方は割愛させて頂きます。宜しいですね? 」
「あぁ……説明は割愛していい。ちーちゃんを読んでくれ」
「黒子。第3乙女をこちらにお連れして下さい 」
「
「黒子! 何しているのです! 早く第三乙女をこちらにお連れなさい 」
「は〜い×2分かってるっうの!! 今連れてくるって 」
「「はい」は一回ですよ?黒子いい加減になさい 」
「は〜い!
そう言って黒子は暗闇に消えて言った。
________………………
少しして黒子が戻ってきた。
「はいは〜い。連れてきたわ。マジ大変だったわー。ほんとマジ勘弁」
そう言ってぐったりとした態度をとると黒子の後ろの方から
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「まあ!人を呼んどいてなんて態度なのです!!このビッチは!」
「 シュガーキッチンのヒロイン!甘い魅惑の匂いで殿方を虜にする誘惑のベイクドチーズこと!みんなのアイドル!ちーちゃんに対してなんて態度なのです! ぷんぷんなのです!」
久しぶりのちーちゃんは相変わらずだった。
俺はちーちゃんに近づき
「ちーちゃん!……来てくれてありがとう。 ごめんな?」と言うと
ちーちゃんははにかんだ笑顔で
「……小太郎さん!ちーは大丈夫なのです!小太郎さんの事が好きだからちーは何でもしてあげたいなのです。」
そう言った後一瞬暗い表情に変わりいつに無く真剣な表情で
「ちーを選んで頼ってくれてありがとうなのです。本当に…本当に嬉しいなのです!だけど……だけど一緒に特別試練に挑んでいるショコラちゃんの事も考えて欲しいなのです!ショコラちゃんも小太郎さんが好きで必死なのです! 自分だけ逃げないで欲しいなのです! ショコラちゃんを……私のお友達を悲しませないで欲しいなのです! ちーはアイドルなのです!恋も友情も捨てたく無い欲張りなアイドルなのです。お願いなのです! 」
俺はちーちゃんの言葉に返す事ができなかった。
自分の無神経さに言葉を失っていると傍聴席から
「う・る・さ・い・!!!!!! 」
ショコラちゃんから今まで聞いた事がない様な大きな声が聞こえ一斉に傍聴席を見る。
「私……全然大丈夫だから……気にしないで頑張って! 」
陽気な雰囲気に満遍の笑みを浮かべショコラちゃんはこちらに手を振っていた。
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いつもと違う雰囲気に俺は戸惑っていた。
続く
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