弱い心と強い決心




___……幸せの価値 は必ず他人と同じとは限らない……。



不幸しか愛せない人間も幸福しか愛せない人間もいる

それは時がどんなに流れても転生を繰り返しても同じ導き。



貴方にこの意味が分かるかしら?


<i309726|24036>


白の言ったその一言。

その意味を俺はいつまでも考えていた。



なかなか状況が飲み込めず混乱する俺をよそに裁判はどんどん進んで言った。


「……では、弁護人黒子の弁明が終了しました。ただいまの審議の中に嘘があったのか「審判の天秤」にかけます。プレイヤー佐藤小太郎良いですね? 」


「……あぁ」


黒子が言った証言……本当に信じられない気持ちで受け入れ難い事だが、武が嘘を付いているようにも感じとる事ができなかった。


「プレイヤーである佐藤小太郎の了承がありましたので「審判の天秤」に今からわたくし達が乗ります。先程もお伝えしましたが、嘘の内容が含まれている方が軽く、真実は重くなります。宜しいですね? 」


そう言われ俺はコクリと頷いた。



それを見て白は微笑し

「……では黒子。 始めましょう。」


「は〜い。ハク姉〜りょ了解!」


そう言い二人は角砂糖を口に含んで「審判の天秤」に同時に乗った。



すると天秤は大きく白の乗った方に傾き、黒子の乗った方との重さの違いが大きいからか、黒子は飛ばされそうになった。


「もぉ〜ハク姉たらゆっくり乗ってよね!マジ落ちるかと思ってびびったわ〜 」


「あらあら黒子。貴方そんなに嘘をついていたのですね。流石に差がつき過ぎですよ? もっと分からない程度にしなければSugarシュガーWitch魔女Trials裁判の意味がないのですよ? 」


白は小馬鹿にした様に黒子に言った。


「え〜ハク姉何言ってんの? 嘘なんてついてないから! 嘘ついてるのはハク姉の方でしょ? 」


「いえいえ黒子。それは無いのです。この審判の天秤は大変正直で反映されます。なのでここまで大差がついた場合。何方が嘘を付いているのか丸分かりになるのですよ黒子?」


「……でも〜全部嘘じゃ無いから!佐藤小太郎は小さい脳みそをフル回転させてよーく考えて 」



「まぁ。良いです。今よりこの白の角砂糖を食べて頂き、30分間この砂時計が全部落ちるまでにプレイヤー佐藤小太郎とプレイヤーに愛されし乙女ショコラは、森園武を ‘’残す‘’ のか ’‘リセット’‘ するのか考えて頂き投票をお願いします。30分間の間に投票されませんと無投票という形で審判の天秤が導いた通りの判決になってしまいますので、必ず投票お願いします。」



SugarシュガーWitch魔女Trials裁判!プレイヤー佐藤小太郎による審議を開始準備します。ではこれを……」



そう言って俺に角砂糖を渡してきた。

その角砂糖を口に含んだ瞬間。


その今まで味わったことの無い不思議な味わいに戸惑う。

ほろ苦くそれでいて甘酸っぱい角砂糖。

食べた瞬間から身体から漲るエネルギーを感じた。



白はそんな俺を見てを微笑し

「白の角砂糖が身体に馴染んだ様ですので開始します。」と言った。






____……黒子の答弁が ’‘嘘’‘



<i311068|24036>



そんな事って……本当にあるのか。

じゃあさっきのやりとりは何だったんだ……


親友の武の歪んだ愛の告白に動揺し、それしか考えられないでいた。

小心者で優柔不断な俺には決断できない。


かと言ってショコラちゃんの前で決断出来ないかっこ悪い男だとも思われたくない。




こんな時に苺やちーちゃんがいてくれたらどんなに心強いか……

そんな事ばかりぼーっと考えていた。



そんな俺の頼りなく情けない気持ちを白は見透かしたのか

「あらあら。佐藤小太郎。第1乙女、第3乙女をお呼びしたいのですか? 」


「そんな事……出来るのか? 」


そう聞くと白は胸元から一枚の紙を取り出し見つめる。


「第1乙女は傍聴人としてこちらにお呼びすることは出来ませんが、第3乙女でしたらお呼び出し可能です。」



「……じゃあ…ちーちゃんも」「ダメです!!!」


俺が頼もうとした瞬間、ショコラちゃんの震えた声で遮られた。


「……小太郎さん……私と……二人……乗り越え……なきゃ……じゃなきゃ……ダメ……」


傍聴席にいてずっと聞いていたショコラちゃんがここに来て始めて言葉を発した。


「傍聴人はお静かに!!!決める権利はプレイヤーである佐藤小太郎です。乙女は勝手に意見を述べる立場にないのです。お分かりですか? 麗しの乙女ショコラ。」


ショコラちゃんはゆっくりと頷き呆然と泣いている様だった。



<i311066|24036>



白は微笑しながら

「麗しの乙女ショコラにも理解いただけた様です。プレイヤーである佐藤小太郎は第3乙女をお呼び出ししますか? 」



「……うん」



ごめん……ショコラちゃん


本当にごめん。でも俺には選べないんだ……



ちーちゃんを呼ぶことができると聞いて俺の弱い心は一人で選ぶ事を簡単に放棄してしまったのだ。





続く


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る