親友と親愛

「只今より、弁護人黒子の審議に移ります 」


 武は自分のにする為にわざわざ監視カメラと盗聴器をつけ、ずっと俺を監視していた。


 なんの目的があって武がそんな事をしたのかは分からないが、白が暴き出したのは俺の知らない親友の裏の顔だった。



 親友の裏の顔が明らかになっても俺は混乱する頭の中で、どこか武を信じていた。


 ……何かの間違いだ。武はそんな奴じゃない。 仮に武が嘘をついていたとしても俺にとって「シュガープロジェクト」をプレイ出来たことはこの上ない幸運な事でしかない。



 今も傍聴席から心配そうにこちらを見つめるショコラちゃん……

 彼女に出会えたのも武のおかげだ……


 武だって「シュガープロジェクト」をプレイした事があるなら、’‘理想の女の子’‘を作ることができたんじゃないのか?


 なのにとまで言う理由ってなんだ……。



 武がどうしてそう言うのか俺は分からなかった。



 俺は頭の中を整理しようと真剣に考えていると

「 ’‘幸せの価値‘’ は必ず他人と同じとは限らない……。不幸しか愛せない人間も幸福しか愛せない人間もいるそれは時がどんなに流れても転生を繰り返しても同じ導き。貴方にこの意味が分かるかしら? 」


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 そう言い白は見透かしたような笑みを浮かべた。


 頭の中が混乱する。

 わかっているのは武が俺に隠し事をしていたと言う事だった。


「……武……お前は俺の親友じゃなかったのか……? 」


 愕然とした雰囲気の中

「は〜い×2」

「その疑問は弁護士の黒子さんの.お.仕.事.! 」


 そう言い今まで弁護人席で居眠りしていた黒子が立ち上がって被告人席に近づく。


バイブスが上がって気持ちが上がって来た!! AIモード頭いいモードでガンバりんこ菊地凛子」


 そう言い口元に手を当て武に対して投げキッスをした。


 するとさっきまで白の方を見ていた武は黒子の方を見つめだした。


「ハク姉には負けないから」


「あらあら…これは勝ち負けではありませんよ? 黒子 」


 白は見下したような不敵な笑みを浮かべるが黒子も挑発するような目線で返す。


 お互いにじっと見つめ出し「ふんッ」と言って白は検事席に戻ってきた。


 そして黒子の審議が始まる。

「まあ…とりまとりあえず森園武! 今からハク姉の3問の質問の弁明と回答するから森園武はあっていたら「はい」と答えて? 佐藤小太郎は聞いててね〜 」


「森園武はちゃんと答えてね〜 」


「……はい。黒子様……」


「じゃあ始めるよー」



 そう言いスカートの中から一枚の紙を取り出し読み上げた。




「では問1、問2で出たことの弁明します〜。森園武は2月12日に確かに佐藤小太郎にURLを渡しに行ったのは事実だよ。でもその理由は森園武は ‘’女の子を愛せない体‘’ だったんだ。だから‘’理想の女の子を作る‘’「シュガープロジェクト」は森園武からしたら無条件で愛される女の子は、存在だったんだよ!そうだよね? 」


「……はい」





「それに全く悪意は無かったよね?だって佐藤小太郎の事をずっとBIG LOVE愛してるだったよね? 」


「……はい」



 男の武が俺の事を……そんな事あるのか?俺の事が好きだから武はあの日、俺に「シュガープロジェクト」のURLをした……でもそれは身代わりだったんだ?



 頭の中が混乱する。



「身代わりというか自分の代わりに大好きな佐藤小太郎が幸せになって欲しかったんだよね?」


「……はい」





「2月13日も跡をつけたのは大好きな佐藤小太郎が、酷い講師に傷つけられて、人生に絶望していてもちゃんと幸せになれる「シュガープロジェクト」をダウンロードするか心配だったんだよね?」



「……はい」


「電車で帰っている時に小太郎が泣いているのを見て胸が痛んだ。それくらい佐藤小太郎を大切に思っていたんだよね?」


「……はい」




「部屋に監視カメラと盗聴器を仕掛けたのは、佐藤小太郎を愛するがゆえの行き過ぎた愛だったと今はガチしょんぼり沈殿丸反省して落ち込んでるだよね?」


「……はい」



「これが事の真実。森園武はずっとBIG LOVE好きだった。だから佐藤小太郎に幸せになって欲しくて……だからたまたま見つけた「シュガープロジェクト」のURLを渡した。佐藤小太郎の特別な親友でずっといる為に……」


「でもそれは自分から佐藤小太郎を忌まわしい女に渡す計画だった。すべての発端は歪んだBIG LOVE愛してるのせい。だから佐藤小太郎は森園武を許してほしい。」




 そう黒子が言うと傀儡の筈の武の目から涙がこぼれた。




 突然の武の告白に戸惑う俺。


 白の言った

 ’‘幸せの価値‘’ は必ず他人と同じとは限らない……。



 その言葉が響いていた。



 続く。

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