疑惑の眼と真剣な眼差し

「本当、命拾いしたなのです…」




 そう小声で耳打ちして出て行ったちーちゃん。





 ___……命拾いした。






 その言葉が俺の中でこだましていて忘れられなかった。




 何か知ってそうなちーちゃんに事の真意を聞こうと後を追ったが、苺と服の取り合いをしている真っ最中でとてもじゃないが聞けそうになかった。



 さっきまでドキドキして楽しんでいたファッションショー(?)も今回の事で現実に戻された様な、冷めた感覚になってお開きとなった。


 結果としてみんながそれぞれ気に入った服を、各自の部屋に持ち帰る事になったがショコラちゃんだけ浴衣を持って近づいてくる。


「………殿様ごっこ…して…欲しい…」

 そう言いながら長い黒髪をかき上げて、ねだる様な熱い視線を俺に向けた。


 今はそんな気分に正直慣れない。


「…ショコラちゃんごめん。凄くショコラちゃんの浴衣姿が見たいしショコラちゃんの事が好きだし叶えてあげたいけど…今はごめん。」

 俺はショコラちゃんの頭を下げて謝り、誘いを断った。



 ショコラちゃんは一瞬寂しそうな残念そうな顔をしたが、俺の思いつめた様な顔を見て察してくれたのか


「……待ってる……私も…好き…だから………」


 そう言いってショコラちゃんは最後に着ていた「キャッツi」の服と浴衣を持ち部屋に帰って行った。



 少し残念な気持ちもある。

 だが今の俺の心の中はある意味苺で一杯でそんな余裕は無かった。


 何としてもちーちゃんから事の真意を聞きたい…。

 それだけだった。



 ちーちゃんの方を見るがもう苺はいない様だった。

 俺は意を決してちーちゃんに話しかけた。


「ちーちゃん!ちょっと話…いいかな? 」


「あぁ〜!! 小太郎さんどうしたなのです? そんな深刻な顔をして、やっぱり変態の小太郎さんはちーのメイド姿が忘れられないなのです?

  それかシュガーキッチンの唯一無二のアイドルである、ちーの「魔法少女ぷにキュア」のコスプレが小太郎さんの萌え魂に火を付けてしまったって事なのですね!!

 そうに違いないなのです!! 小太郎さんがどうしても見たいと懇願するなら見せてあげ無くもないなのです。なんなら変態の小太郎さんが跪くならちーの美脚をタイツ越しにスリスリする権利も今ならあげてやらなくもないなのです!! (ドヤ」


「………ちーちゃんごめん。ちーちゃんのコスプレも凄く可愛かったんだけど俺が話したい話は違うんだ……さっきの苺の件でちーちゃんに話を聞きたくて」



挿絵(By みてみん)



「あぁ。さっきの苺の件なのです?それなら…s」

「皆の者!!プレイヤーの所に集まるが良い!!!!」



 ちーちゃんの声をかき消すかの様な大きな声が突然上の方から聞こえた。

 その声の主はシュガー源老師だった。




 苺もショコラちゃんも部屋から出てきて全員揃った。



 静まり返った雰囲気の中


「プレイヤーよ!!今からお主と第2乙女!それと別に第3乙女の試験を開始する!異論は認めん!!良いな!!」



「まずはこれより第三乙女の第一次試験の準備を開始するぞぃ!! ! 課題は「言語」じゃ‼︎ プレイヤーは此処に用意した器具を使い、己が創り出し乙女に現世で必要な「読み書き」を教えよじゃ‼︎‼︎ 期間は2週間!試験の不合格の場合は現世に戻る資格なし‼︎ 第3乙女の試験説明は以上じゃ‼︎ 」


「次にプレイヤーと第2乙女とで行う特別試練の開始を宣言する!!今から行う試験は「二択裁判」今から2時間後、ある場所に移動してもらう !!そこで「絆」を確かめさせてもらうぞぃ!!!良いな!!以上じゃ!!! 」



 そう言い残してシュガー源老師は消えて言った様だった。



 いつもながらタイミングの悪い、突然すぎる試験開始宣言だった。


 ちーちゃんの言われた試験は前回ショコラちゃんが合格出来た筈の試験でまさかの不合格になりボロボロの服で帰ってきた試験の事だった。


 ちーちゃんも「知恵の粉」が20%なだけあって頭がいい。


 普通に、言語の試験だとしたら間違いなくちーちゃんは合格できる筈だ。

 だがあのショコラちゃんが不合格になりボロボロの服で帰って着た様な危ない試験…。本当に大丈夫なんだろうか?

 それに俺とショコラちゃんで行う「二択裁判」の試練ってどんな内容なんだ?裁判って言うだけあって何かを「裁く」のか?



 ショコラちゃんの件やその後の苺が熱を出した件で試験に対して俺の中での不信感があり一抹の不安がよぎる。


 色々考えていると

「……二人……頑張りま…しょう?……小太郎さん…。」

 心配そうに俯くショコラちゃん。俺の手を握るその手は微かに震えていた。




 ショコラちゃんだってこないだの件できっと試験に対して怖いんだ…。


 ここは俺がショコラちゃんを守らなきゃ!


 そう腹をくくり俺は両手でショコラちゃんの手を握り返す


「俺が…俺がついてるから…一緒に頑張ろう」


「……はい」


 ショコラちゃんは顔を真っ赤にし、はにかむ様な笑顔で優しく微笑んだ。



 ショコラちゃんが笑ってくれて安心したが今度はちーちゃんの様子が気になり、辺りを見渡し探すとちーちゃんは苺と真剣に何かを話していた。






 続く

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