正義の味方と真実の行方

明らかにやばそうな薬を持ち俺に襲いかかる苺。


「気持ち良くなるですぅ〜魔・法・の・薬・ですぅ〜」と言って俺の話を聞いてない様だった。



 俺に逃げ場は無い絶体絶命なそんな状況の中、勢い良く部屋のドアを蹴破り中に入ってきたのはちーちゃんだった。


「待ったなのです!!正義の味方!「魔法少女ぷにキュア」参上!!!孤高の天使と名高い私が来たからにはもう大丈夫なのです!! 」



挿絵(By みてみん)



 ちーちゃんは「魔法少女ぷにキュア」のコスプレをして手には魔法ステッキを持っていた。



 こんな時にそのコスプレとは………。


 空気が読めてるんだか読めてないんだか………。


 何はともあれちーちゃんが助けに(?)来てくれた様だった。




「悪魔怪獣ゾンビナースの苺はこの「魔法少女ぷにキュア」のちーが成敗するなのです!!シャキーン!!」

 魔法ステッキを高らかにあげドヤ顔で決めポーズをする。


「ちーちゃん!聞いてないですぅ〜!! 苺が悪魔怪獣ゾンビナースなんて設定聞いてないですぅ〜!! 苺もぷにキュアが良いですぅ〜!!」


 さっきまで瞳孔を開きながら俺に怪しい薬を注射してこようとしていた筈の苺は正気に戻っている様だった。



「それは駄目なのです!!無駄なデカ乳の苺にはこのぷにキュアの衣装は着れないなのです!! スタイル抜群なちーだから着れるなのです」

 と言いながらちーちゃんは後ろから苺の大きな胸を揉みしだいた。



「あわわ〜ッ!やめるですぅ〜そんなに揉まないでほしいですぅ〜」

 と苺は顔を真っ赤にし半泣きで手をバタバタさせていた。


「ほーらこんなに伸びるなのです!手に収まらないほど大きい忌々しいデカ乳なのです!!早く垂れ乳になるが良い!!このまま悪魔怪獣ゾンビナースを倒すなのです!!降参するなら今なのです!!」



 さらに激しく揉むちーちゃんを見て………俺は何を見させられているのか………?

 そんな気分になった。


 さっきまでの緊張感が嘘の様に和んでいる空気が流れる。


 苺はいつも苺の様だった。

 どっちの苺が現実でどっちが嘘なんだろう。

 そんな事を考えているとショコラちゃんが壊れたドアから入って来た。


「…庶民の味方…「怪盗キャッツi」…参上…悪いナース…倒したいです」


挿絵(By みてみん)



「…あまり……お尻…見ないで下さい……」

 身体のラインがよく分かるぴっちりとしたレオタードに釘付けになるが、頭のふさふさした猫耳と尻尾もリアルでまじまじと見ていると、恥ずかしそうにとっさにお尻を隠すショコラちゃん。



 ショコラちゃんの格好もちーちゃんの格好も気になったが、今のこの状況がつかめない俺はショコラちゃんに聞いてみた。


「あの…ショコラちゃん…?この状況は一体……?」


 ショコラちゃんは俺の顔を見つめ

「…みんなで……じゃんけんして…悪役を決めて…ヒーローごっこしょうと…した…」

 といった。



 どうやら苺とちーちゃんとショコラちゃんで服の取り合いになり、その会話の中でヒーローごっこをする事に決めたらしい。


「じゃあ…さっきの苺の態度は……演技…なのか?」


 ショコラちゃんに小声で聞くと

「…それは…」と言いかけて話を遮る様に

「演技ですぅ〜!!!ショコラちゃんに言われて演技したんですぅ〜!!」と

 ちーちゃんにまだ胸を揉まれていた苺は顔を真っ赤にして涙目でそう言った。


「ショコラちゃん……本当なのか?苺の話は本当?」確認する。


 ショコラちゃんは一瞬びっくりした顔をしたが直ぐに俯き「コクリ」と頷いた。

「びっくりさせて…ごめんなさい…」


 ショコラちゃんが謝る。


 今までの一連の出来事が本当に苺の演技でそれをショコラちゃんが指示をした。

 それは信じられない様な事だった。


 でも目の前で今にも泣き出しそうなショコラちゃんを問い詰める事も出来ず、俺はショコラちゃんを許した。


「…ショコラちゃん!! 俺は大丈夫だから!謝んなくて良い。……確かに少しびっくりしたけどね。」



 そう言うとショコラちゃんは顔を上げて

「……このレオタード……下着のライン…分かる…恥ずかしい‥‥‥変えてきます!」

 そう言って走って部屋から出て言ってしまった。


 すると苺もちーちゃんの乳揉み攻撃から逃げる様に

「苺も服変えてくるですぅ〜」と言って部屋から出て言った。


「ちーも変えるなのです」と言ってちーちゃんも部屋から出ようと俺の横を通り過ぎようとした瞬間。




「本当、命拾いしたなのです…」




 小声で耳打ちしちーちゃんは出て行った。





 ___……命拾いした。






 その言葉が俺の中でこだましていた。




 続く

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