第432話 全競技参加者決定


 吉林高校の各学年、各クラスは放課後になると体育祭に備え練習や作戦を練るための時間をとった。

 もちろん、この音頭をとるのも体育祭の実行委員たちなので実行委員の性格、指導力によって独自色が強い。

 特に今年の一年は例年と違い各クラスのモチベーションがやたらに高いと噂になった。

 一悟は窓から校庭を見渡すとオロオロしているマリオンの前でクロエがBクラスの男子をブートキャンプさながらに指導しているのが見える。

 他にも豪奢な椅子に座らされAクラスの練習風景を申し訳なさそうに見ている瑞穂や一緒になって練習するCクラスの茉莉、タブレットを片手にミーティングをしているニイナなどがいた。

 もちろん祐人たちのDクラスもおり、一悟の指示通り祐人とクラス委員長の重神さんが中心になって運動関連の練習を見ている。

 祐人は運動指導に向いているが皆に忘れられているので一悟が重神さんに応援を頼んだのだ。


「おお、やっているな。こちらも負けてられないぞ。うん? ふふん、予想通りだな」


 一悟は一年各クラスの動向を怪しげに見張っている二年、三年の姿を見つける。

一悟の懸念した通り、まずは他チームでも経験の浅い一年から突き崩すために情報を取っているようだ。


「さて、水戸さん。各競技の参加者だけど案を考えてきた。見てくれ」


「うん、分かった。それにしてもよくこの部屋を借りれたね」


 ここは校舎四階にある談話室だ。


「ああ、美麗先生がこれから好きに使えと言ってくれた。おかげで校庭が一望できてありがたいわ」


「美麗先生も本気なのが分かるね。私たちも頑張らないと……あ、この障害物競争(人生バージョン)のメンバーだけど戦力不足だよ」


「え、そうかな?」


「うん、この障害物競争(人生バージョン)は概要を読む限り、会社の営業職を想定してるっぽいから、障害はおそらく癖の強い取引先の社長やクレーマーまがいの顧客が障害物として登場するんだよ。だからコミュ力だけじゃなく学力と雑学も試されるわ。ここは一人、多趣味の能勢さんを入れておくのがいいよ」


「なるほどな。ただ商品を納品すればいいってわけじゃないのか。OK、調整する」


 静香と一悟は出場するクラスメイトを調整していく。


「よし、これでいこう。あとはバーチャルバトルだけだな」


「明日には参加生徒を伝えられるのよね?」


「ああ、明日の放課後に全学年の体育祭実行委員の集まりがあるからそこで言われるって」


「分かった」


「さて俺は我がクラスメイトたちを他学年の毒牙から守るためにパトロールしてくる」


「あ、私も行く。女子の方は私に任せて」


「OK、じゃあ、何かあったら携帯に連絡くれ」


 そう言うと二人は部屋をでた。

 この同時刻。

 まさに全担任が会議室に集まりバーチャルバトルについて話し合っていた。



 会議室で全学年全クラスの先生たちから出されたバーチャルバトルの指名生徒の名がスクリーンに映し出された。

 吉林高校体育祭総責任者に任命されている燕先生こと止水がスクリーンの横に立ち説明していく。

 止水はレーザーポインターで説明箇所を指し示す。


「今年ですが皆さまからずっと要望があった競技が実現しました」


「よっしゃー!」

「本気を出していいんだよな。前回みたいに禁止技や制約はなしだよな?」

「ええ、たしか今回は前回の反省を生かしてSO・NYの名前を使って何でもありになりましたから、ふふふ」

「昨年の恨み……ここで晴らしてくれる」


 慣れてきたとはいえとてつもない仙氣が飛び交う会議室内で止水は顔色悪く緊張しながら説明していく。


(しかし、この仙氣が外に漏れないようになっているのはこの会議室は一体、どういう作りをしているのだ)


「では指名された生徒たちを読み上げていきます」


 止水が各クラスの担任から指名された生徒たちが読み上げられていく。


「ええ、まずは三年のクラスからAクラス相模原先生は……田村君」


 途端に先生たちがざわつきだす。


「クッ、いきなりか。相模原先生は毒手の使い手。田村はその秘蔵っ子。これは本気だな、相模原先生」


 相模原先生は見た目はひ弱な博士と言う感じで表情は読めない。

しかし止水には分かる。


(あの人もこれほどの仙氣を。まったく分からなかった。いや私ごときでは分からなかったということか。これは道士の中でも上位、もうすぐ仙人の扉を開くのではないか)


 その後も順次、発表していく。

Bクラス 藤沢先生 林君

Cクラス 戸塚先生 橋本君

Dクラス 小田原先生 森川さん

Eクラス 厚木先生 向井君

Fクラス 綾瀬先生 上村君


「ふむ、こう見ると中々ですな」

「三年は才能開花し境地を上げた者が多い。上村などの仙闘術には目を見張るものがある」

「林は幻術に長け、向井はあの厚木先生のスパルタに耐えて得た砂操作能力か」


「では二年生です」


Aクラス 大宮先生 七里さん

Bクラス 越谷先生 蒲生君

Cクラス 春日部先生 大袋君

Dクラス 久喜先生 羽生君

Eクラス 川越先生 朝霞さん

Fクラス 所沢先生 蛇喰さん


二年の先生たちも腕を組んだり、眼鏡を拭きながら目を光らせる。


「二年生はやはりあの七里と朝霞の陰陽師組が出てくるか……厄介だな」

「ライバルは成長を促しますからね」

「所沢先生、蛇喰を指名するとは思い切ったことをしましたね!」

「ああ? あの契約者か? 蛇神を使ってカンニングしようとしてた奴だぞ。大丈夫か?」

「では一年です」


Aクラス 町田先生 四天寺さん

Bクラス 村山先生 シュリアンさん

Cクラス 武蔵野先生 白澤さん

Dクラス 高野先生 堂杜君

Eクラス 小金井先生 内野君

Fクラス 小平先生 黄君


 この発表の最中から他の先生が顔を青くしたり赤くしたりワナワナし始める。


「一年のクラス、ずるいぞ!」

「そうよ! 特に堂杜家を出すなんて非常識よ! 高野先生、大人げないわ!」

「いや、四天寺もオルレアンも大概だぞ!」

「ハクタクの血に連なるものを選ぶって、まさか武蔵野先生、自分の弟子に狙ってるんじゃ……」

「黄君って、あの黄家? 今、老君のところで修行してるっていう変わり者か? まだ生きてるのか?」


 会議室内に怒号が入り乱れ、凄まじい仙氣が吹き荒れる。

 止水は段々、慣れてきたこともありため息をついた。



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