深井姉弟、旅に出る。part3

「ごちそうさまでした」

 流石すき家だ。その美味しさは福岡でも変わらない。甘辛のタレが肉、そしてご飯との相性が最高。敢えてトッピングを無しにして三点セットという選択は大成功だった。

「で、これからどうする?」

 まだ十時前だ。何をするのにも中途半端な時間だな。

「そうだねぇ……」

 姉は悩んだ。いや、それが悩んだ振りだって事くらい俺にも分かった。

「とりあえず久留米に行こっか」

「ありだな」

 久留米と言えば久留米ラーメンだ。そのうち姉も博多の豚骨ラーメンが食べたくなるだろう。それまでに俺は別にラーメンを食べられる。最高じゃないか。

「よし行こう。すぐ行こう」

「そだねー」

 俺も姉も立ち上がる。ちなみにここでは俺が支払った。


「普通は鹿児島本線で行くものだと思うんだが……」

「せっかくだからねー」

 今俺は姉の運転する車の助手席に座っていた。

「ってかいつの間に免許取ってったんだよ」

「なんだかんだで私も十八歳になってから結構経つからね。別に変じゃないでしょ?」

「だからってどうやって車を用意したんだ……」

「もちろんレンタカー」

 謎に用意周到な姉だった。


「あとどれくらいで着きそう?」

 いくら見たことのない景色といえ、高速道路ならすぐに飽きる。端的に言って退屈だ。

「三十分くらいかなー。あ、眠かったら寝ててもいいよ」

「眠くないし大丈夫」

 それに運転する姉の豊満な胸を眺めることができる。シートベルト万歳。

 ……免許を取って間もない姉の運転が不安だなんて死んでも言えないな。


「何だろ同じ福岡なのに博多とは違った感じがするね」

「分からないようで分かる気がする」

 とはいえ距離にして四十km。違わない方がおかしいと言ってしまえばそうなのだが。

「で、どうする?昼飯にしては早いけど」

 まだ十一時過ぎ。何ならさっきすき家だ食ったばかりだ。

「じゃあすき家に……」

「何でだよ!」

 姉とすき家との癒着を疑わなくてはならない。

「冗談だよ。わざわざ久留米まで来たことだし」

 その時俺は何か魅力的な提案をされると思った。しかし、この姉に限って言えばそんなことはあり得なかった。

「カラオケに入ろっか」

 もちろんそれがエロいお誘いじゃないことくらいお見通しだ。

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