第20話
そんなこんなで、休息の一日が終わった。
俺にとっては身体は休まったが、精神は休まらなかった。やはり、護衛に女性、しかも俺と同い年かつ綺麗な部類に入る子というのがよくなかったと思う。
あのあと、母親とも同じような挨拶を交わし、同じように俺の悪口で盛り上がり、「今後もよろしく」なんていろいろな解釈のできる言葉を言い、かつ麻衣は麻衣で「はい」とかいってしまう始末で不安しかない。
戻ってきて、とりあえずオンラインの方に入ってみることにした。
入ってみると、前と同じところからスタートするみたいで、ドラゴンを倒した平原に着いた。
前入った時とは違い、明るい平原が広がっていた。草は、生い茂る…ほどではないにしても芝のような形ではぽつぽつ生えている。
ところどころ肌を見せてしまっているところはあるにしても、平原と思って差し支えないだろう。
歩くと、サクっと音が聞こえる。
オンラインとはいえ、現実に出来るだけ近づけているようだ。
「あれ、こんなところにヒト?」
不意に声が聞こえ、振り返ってみると民族衣装に身を纏った女の子がいた。
中世ヨーロッパ風の服のように思えるが、そこらへんは詳しくないのでなんとも形容しがたい。
強いて言えば、赤ずきんちゃんのようであるとだけ。
「君は……NPCか?」
「??」
俺が問いかけても首をかしげるのみだ。おそらく質問の意味が分かっていないのだろう。
ということは、NPCだと思っていい。
「ああ、多分俺は冒険者だ。ここはどこか分かるか?」
「うん、ここはハイマの西にある平原よ。私、晴れた時はよくここに来るの。風が気持ちいいのよ」
「へぇー」
どうやら、ここから東に行けばなんらかの集落に着けるようだった。
NPCとの会話をなんとなしにして、東に向かった。
何かクエストを紹介してくれる集会所みたいなところがあれば、なんとなく岡崎朋絵に会えるんじゃないかと思っていた。
顔はその時だけ新が教えてくれると言ってくれていたし、気にする必要はない。
そんなこんなで、ザコ動物を倒しながらハイマと書かれた看板の前に立った。
作りとしては、西部劇に出てくるような集落だった。
道は舗装されておらず、砂埃が舞う。また、建物は木で作られている。
俺はその門をくぐった。
あたりを散策してみる。服装は、やはり現代とは程遠く、民族衣装と例えるほかない。けれども、色は様々でそれがせめてものファッションのようにも感じた。
大通りが十字にあってその周り四角に建物があるという形をとっているみたいだ。
「あ、あった」
大通りの交差点の北西側に集会所があった。
迷わず、物は試しと入ってみる。
中は少し憩いのテーブルとイスが並べてあるところが左側にあり、入ったところからまっすぐ行くとカウンターがあった。
「クエストを受けたいんだが」
「はい、ではまず冒険者登録させて下さい」
画面が立ち上がり、名前を書く欄が立ち上がる。
ちゃんと名前を書くことはないので、巧をタクミにして登録しておいた。
「はい、ではカードです」
冒険者登録証をもらう、いつ撮ったのか知らないが免許証のように写真付きである。
この世界では顔は変えられないらしいのだ。まぁ、色々あったからだろうけど…。
詳しく、登録証を見てみる。冒険者ランクというものがあった。俺にはFとなっている。
そこを押してみると、説明が出てきた。要約すると、ランクによって受けられるクエストの難易度が変わるらしい。
ランクはFからSまで。クエストをこなすと自動的に上がり、達成出来ないと下がっていくシステムのようだ。
「とりあえず、今受けられるクエストを教えてください」
「はい、少々お待ちください」
と言われて奥に引っ込む案内人。あまり待たずに、クエストを持ってきた。
「ええと、まず討伐依頼と採取依頼があります。どちらになさいますか?」
「討伐で」
回答は即決。採取はどうしても経験がものを言うはずだ。その分、討伐ならあっちからやってきてくれる可能性が高い。まずはそれを倒して集めた金でこの装備をなんとかするのが当面の目標だ。
そんなこんなでFランクの俺にあてがわれたのは、オオダマガエルの討伐だ。
まぁ、ドラゴンを一人で倒した実績のある俺にとってこのクエストはちょろいもんだと考えていたが……。
「ちょ⁉︎ おい、逃げるなー!」
予想は点で外れ、まさかの俺のステータスを感じ取るや否や逃げ出すカエル達。そのせいで、そのクエストだけで一日を費やしてしまった。
クエストの案内人の人も首をかしげるありさまだった。
「はぁ……」
うなだれる。
他の冒険者もちらほらと見受けられるが、バカにされると思ったが皆一様に俺を警戒しだした。おそらく不気味に思われたのだろう。
たかが、カエルごときと思われるだろうが、体長は二メートル以上のお相撲さんクラスであり、普通の冒険者が敵意を向けてこれば、まず間違いなく襲いかかってくるそうだ。
一応、クエストは達成したという事で、五十ガルドを受け取った。
その足で、武器屋に行ってみる。
「お前、駆け出しか? それにしちゃあ、しょぼすぎる装備だな。まぁ、好きに見ていけよ」
「ありがとうございます」
武器の値段を確認していく、やはりあまり交換しないという点で高めには設定しているようでちょっと五十ガルドだと性能とが見合わなかった。
「そんなに強え武器が欲しいのか?」
「ええ、出来れば」
「ふむ……お前、ステータス見せてみろよ」
画面を表示させて、見せた。レベル上げのおかげでほぼ全部のステータスが高い部類に入っているはずだ。
「これなら、いっちょ特別な剣を持って見ないか?」
「特別な剣? 教えて下さい」
「おう、ここから北にずっと行くと小さな礼拝堂があるんだ。そこには、以前ここら辺りを治めていた王の墓が眠っているらしい。そいつの剣は強いものにしか扱えないみたいでずっと礼拝堂の倉庫に眠っているそうだ。おめえなら扱えるかもしれねぇ」
剣は強いに越したことはない。何か特別な技だったりが使えるとより便利だ。
一応、不死のスキルは出来るだけ内緒にしたいということだったから、それを発動させることのない力はつければなおいい。
俺はその剣を求め、北に向かうことにした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます