第15話

『彼女とよく話していた女の子が岡崎朋絵だ。彼女をここに連れ戻せば、少しはここが賑やかになるかもしれない。名前を聞き出してくれ』

「その子の名前を聞いてもいいか?」

「え? なんで」


 おうむ返しのように聞き返された。

(やべっ、なんて言おう…)


『そこは知り合いかもしれないにしておいた方が無難だ』

「俺の知り合いかもしれないだろ…」


 俺の返答に考え込む千里。


「……そうね。まぁ、名前だけじゃあ探し出すのは厳しいと思うし…。彼女の名前は岡崎朋絵。それ以外の特徴は仮想空間だからなんとも言えないわ」

「外見とかは?」

「仮想空間だって言ったはずよ。顔を変えている可能性は少なからずあるわよ」


 千里は加えて「化粧しているかも…」と言った。


『でも、こっちは居場所がわかってるから問題じゃないよ』


 彼女が会いたいと言った人が今攻略対象の岡崎朋絵だと確かめられたことが重要だ。


「……」

「……」

「…で?」

「…ん?」


 千里が「あなた天然なの?」と言いつつ訝しげな目を向けてきた。


「この名前を聞いて心当たりはあるのと聞いているのよ?」

「……ああ、えっとー…」


(ここで知っていると伝えるとあとあと面倒そうだよな…)

 もしそう言った場合、どこにいるのかとか何してるのかとか追求されてしまい、ここの大元のことを話さなくてはいけなくなりそうな気がした。


「……どうなの?」

「うーん、俺の記憶にはそんな名前の子はいなかったと思う。すまん」


 軽く頭を下げると千里は「そう」とだけ言って、窓の外に視線を移した。

 そう言って向けた表情にはほんの少しだが、落胆の色がみえた。

 一縷の望みにかけた…。それが叶わなくって、でもそいつを責めるわけにはいかなくってというような顔。

 俺の単なる思い込みかもしれないが、直感的にそんな表情をしているような気がした。


「でもさ!」

「え?」

「あ……」


 とっさに口から出た言葉だった。

 少し、勢いのついた俺の言葉を急にかけられ、千里は驚いた表情を見せていた。

 しまったと思いつつも、勇気を出す。


「でも、探している子のこと手伝うから!」

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