第13話

「あ、お帰りなさいです」

「お、おう……」


 扉を開けた途端、そこにはさっき職員室で別れたはずのミューが待ってくれていた。

 時計を確認すると、別れてからじゅっ分は経過していたことになる。


「別にここで待ってることなかったんだぞ」

「いえ、職員室の場所を聞かれたってことは他の場所も分からないと思いまして、いろいろと案内して差し上げようかと」


 その言葉だけでこいつは心底おせっ…お人好しなんだなと分かった。

 その時点で、降参だというふうに俺は両手を挙げた。


「じゃあ、お願いするよ」

「はい!」


 その満天の笑顔に俺は微笑ましくなった。

 その後、二年一組だということをミューに伝え、案内の途中の部屋をガイドされながら二年一組の教室にたどり着いたところで別れた。

 少し暗かった顔があんなにも笑顔になるんだから俺もよくわからないが胸が暖かくなった。

 おそらくああいう一面がミューの魅力なのだろう。

 そう感じながら、二年一組の教室へと入った。

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