第11話
ゆっくりと目を開ける。
目の前の天井は真っ白だ。ただ、真っ白の中でも、影があることでここが何かの部屋だと分かった。
身体をゆっくりと起こす。まだ、ズキズキと頭痛がする。
どうやら、現実世界に戻ったみたいだった。
自分がベッドの上にいて、サングラス型のVR機器が横に置いてあった。
「あ、あー。聴こえるかな巧くん」
どこからともなく
俺は頷いて答えた。
「よかった……。ちょっと君の健康問題で、強制ログアウトさせてもらった。流石に、食べられないのは嫌だろう?」
周りを見ると、腕にチューブがつけられており、点滴による栄養が送られていたことが分かった。
当然、一週間ずっとインし続けていたのだから栄養補給、水分補給など、生きるための摂取はそういう形になるのだろうと予想はつく。
まあ、ドラゴンに気を取られてそれどころではなかったが……。
「そうですね。何か食べ物を頂けるのですか?」
「ちょっと待っててくれ。今届けに行くから」
そう聞いて肩を落とし、もう少し詳しく辺りを見渡す。
まるで少し豪華な監禁部屋だ。周りは白色で明かりもあり、今何時かも分からないが、ちゃんとベッドも完備されている。おまけに生命維持装置ともいえるチューブ類の数々、逐一俺のバイタルサインが読めるのだろう。それも俺には分からずに、だ。
「ふぅ」とため息を漏らしたと同時に白の壁がドアのように開いた。
そこにドアがあるなど分からないようになっている。用意周到だ。
「やぁ、気分は……まぁ良くないとは思うけど。頑張ってくれとしか僕からは言えないよ。はい、おかゆだ」
と、おかゆが出された。
おそらく、消化機能が弱っているからこその配慮だろう。俺はありがとうございますと言って食べ始める。
少しも躊躇はない。なぜならば、こんな頼みごとをする奴が殺すとは到底思えないからだというのが一番の理由で、二つ目は新の腰の低さというのがある。
「体調はどうだい? 長時間寝たきりだったんだから、かなりの倦怠感が襲ってると思うんだけど……」
間を置いて新が俺にたずねる。
「起きた時はそうでしたけどだいぶ良くなりました」
そう言った俺に「よかった」と自分の親のように胸をなでおろす新。こういうのが俺が信じてもいいかなと思えるところだった。
「ところで……今度はゲームじゃなくて、僕らが作った仮想空間に行って欲しいんだ」
「え、あの彼女のことは?」
俺は彼女の攻略という名の救済を諦めるのかと思って尋ねる。
「もちろん、諦める…なんて事はないよ。だけど、彼女は今日はまだインしていないし、もう一人会って欲しい子がいるんだ」
「それって……それも任務……何でしょうか?」
自ずと想像はついた。俺の問いに新はうなずく。正直、不安しかない。
「彼女は優先度としては仮想空間に来ているし、高くないんだけどいつも独りでいるから話し相手、くらいにはなってあげて欲しいんだ。ただえさえ彼女もAIのせいで辛いだろうから……」
「……分かりました……」
俺はため息ひとつして了承した。
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