第6話

「……で、その人達はどうするんだよ? もう仮想空間なんか入りたくないって思ってるはずだろ?」


 AIに裏切られちゃ、仮想空間がいわゆる詐欺の類に見えてしまうと俺は思った。

 しかし、そんな俺の考えも新はゆっくりと首を振った。


「仮想空間が学校だったらそうなんだろうね。けれど、彼らにとって仮想空間は楽しいゲームの世界でもあるんだ。彼らは我々が作り出した空間せかいを紛い物とし、より彼らが生きやすい世界に行ったというわけなんだ」


 つまり、この研究所が作り出した仮想空間とゲームという名の仮想空間は別世界なのだと新は言いたいようだ。

 こうも会話していると、そろそろ本題に入りたくなってきた。というか、さっさと逃げて帰りたい。

 今更ながら、巧はゲームという単語を聞いて自分もゲームをやろうとしていたことに気づいた。

(こんな事聞いてもろくなことはない。さっさと聞くだけ聞いて帰ろう)。


「で? そろそろ本題に入ってくれないかな」


 そう俺が言うと新は「それもそうだね」と言った。


「そういえば何させる気だよ? 俺に負担があるとか言ってた気がするけど……」


 訝しげな目を新に向けたが、新はただ微笑んでいた。


「おい!?」


 すると、新の身体が一瞬にしてガラスを割ったかのように粉々に消え去った。

 よくある仮想空間のゲームのモンスターあるいはプレイヤーが死んだ時の消える演出だった。


「え?」


 とうに驚きは通り越していた。一瞬、新というヒトが死んでしまったと思ってしまったからだ。

(あんな消え方したってことはもうここが仮想空間ってことなのか。くそっ、はめられた……)


「おい! ここはどこだ!? ここから出せ!!」


 おそらくモニターされていると思ったから上に向かって叫んだ。


「うっ!」


 その瞬間に眩しい光が視界を塞いだ。

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