第3話
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しばらくの沈黙の後、視界が晴れていった。
見知った天井と白衣を着た研究者っぽい人たちが俺を見ていた。
頭についていたVR機器を取り外しながら、上体を起こした。
「流石だよ。幼馴染設定はあったにしてもあんなに仲良くなれるなんて」
俺は周りを見渡した。そこには無数のPCの画面と大きなスクリーンがあった。
スクリーンには血圧、心拍数、脈拍などのデータが映ると同時に俺の顔が写っている。
俺はカプセルっぽいベッドから立ち上がろうとしてふらつく。
「ああ、まだゆっくりの方がいい。君はこの一週間ずっとここで寝てたんだから」
「寝てた?」
虚ろな目を上げ、その話しかけてきた研究員に尋ねる。
「ああ、リアルすぎてどっちが現実か分からなくなっているんだね。それも仕方ない……こっちが現実だよ、巧君」
その言葉でなのか時間が経ったからなのか、今までの記憶が走馬灯のように一気に流れる。
「そうだ。律はどうなったんだ!?」
俺はその研究員の両腕を掴んでそう言った。頭の熱が一気に沸騰したように思えた。
「それは……どうなるかは……正直まだ分からない。君との記憶すら起きた時に覚えているかさえ私たちには確証がないんだ」
「くそ」
顔をシワを寄せて下を向く。悔しくて仕方がない。
ここは、国立の文部科学省の極秘施策の一環で設立された研究センター。
表向きには厚生省の管轄で疾病の研究や薬物の情報収集などを行う研究施設ということになっている。
この施設は本当にそういう一面も持ち合わせているのは確かだ。しかし、その中でも一般市民には秘密裏に動いているのが、引きこもり撲滅計画とでもいうようなプロジェクトだ。
引きこもりと言えば少しマイナスなイメージを持たれるだろうが、多くは引きこもりというだけで決して引きこもりのみを対象にしているだけではない。
例えば、重篤な先天性の疾病で病室を出られない子とか先天性に限らずとも外に出られない子供……。つまり、理由は身体的、精神的理由に関わらず、学校に通えない子供がこれに当たる。
その方法は一言でいえば仮想空間による教育機関の設立による社会復帰だろう。
対象の生徒はVR機器による仮想空間で勉学を行うことにより、いざ社会復帰した際に必要最低限の学力を有している状態にすることで社会で致命的不利な状況にならないことを目的としている。
「今回の仮想空間はどうだった?」
そう尋ねられた、さっきから隣にいる白衣の男が今回のプロジェクトの責任者、
やや、男にしては痩せ型の体型で筋肉量も少ないように思えるほど腕や足が細い。顔はいかにもメガネをかけていて研究者っぽい顔をしているが、イケメンかと言われれば微妙なとこだ。頬も少し堀が出来ていてどう見ても健康的ではない。
ただ、口調は健康そのもので見た目とのギャップを感じた。
「ええ、途中で切れてしまいましたから分かりませんでしたけど、ほぼ現実と違和感なかったです」
そうして始められたプロジェクトの試験だが、その時点で重大な問題が起きてしまった。
それは……。
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