第145話 ブレインオーダー計画
「ターゲット発見、ロック――」
ナツコは50メートル先に現れたターゲットを注視しロック。即座に連動した左手が動き、12.7ミリ機銃の銃口がターゲットを捉えた。
ターゲットは横へ移動するが、火器管制装置はロックされた対象の移動先を予測し照準を補正。
単発射撃モードで仮想トリガーが引かれると、乾いた音と共に放たれた銃弾はターゲットの中央を射貫いた。
「これで全弾命中ですね!」
射撃訓練コースを1周したナツコは主武装の安全装置をかけて、悠々と走りながらオペレーションルームで待機していたカリラの元へ向かう。
新たにナツコの乗機となった第5世代機〈ヘッダーン5・アサルト〉は、〈ヘッダーン1・アサルト〉と比較して別次元の機体だった。
優れた機動力と加速力。にもかかわらず加速時の反動は最小限に抑えられる。
機体と一体化したブースターに、空中制動を可能にするスラスター、緊急停止用のアンカースパイクが標準装備として搭載。
機動力補助のため腰と両腕にワイヤー射出機を備え、貫通力の高められたワイヤーは軽装甲の目標を撃破可能だった。
火器管制装置はもちろん最新世代に相応しい高性能で、簡易レーダーを装備し連動して照準補正を行う。火器運用能力も底上げされ、30ミリ機関砲まで運用可能に。新たに搭載された反動抑制機構の使用を前提にすれば、55ミリ速射砲を装備することも出来た。
統合軍の次期主力突撃機として完成された機体であり、装甲配置も前世代機から積み上げられてきたデータを元に最適化。
火力、防御力、機動力を高水準でバランスされた万能機として、対歩兵戦闘はもちろん、対装甲騎兵や、後方任務にも投入可能な機体として設計されていた。
「ま、この規模の射撃訓練では全部当てられて当然ですわね」
初回にて全弾命中を成功させたナツコは褒めて欲しそうにしていたが、カリラは素っ気なく返し機体コンソールへ整備用端末を繋いで動作ログを収拾し始めた。
カリラの言う通り、今回借りられたレイタムリット基地の室内射撃訓練場はあまり広くない。かつてツバキ小隊が訓練を行ったデイン・ミッドフェルド基地野外射撃訓練場に比べて4分の1程度しか無かった。
ナツコはそちらでも最終的には全弾命中を出している訳なので、最新世代機を使ってここで全弾命中が出せないわけも無かった。
「火器管制装置も問題なさそうですわね。これで通常機構は全て問題無し。後は――どうしましょうか」
「あれ? まだ何かありました?」
レイタムリット基地に到着しタマキが着任挨拶へ向かった後、ナツコとカリラは〈ヘッダーン5・アサルト〉の動作を一通り確認していた。
戦闘に必要な動作は全て確認したはずだと、ナツコは首をかしげる。
その目の前にカリラは端末をかざして見せた。
「マニュアルしっかり読みまして? 第5世代突撃機の新機能、デュアルコアシステム。これを試さないことには動作確認は終わりませんわよ」
「おお! そんな機能があったんですね!」
マニュアルを飛ばしながら読んでいたナツコは新機能についてさっぱり分からなかった。
だがそれでもデュアルコアシステムという未知の響きに心を躍らせる。
既に十分すぎるほど高性能な機体だというのに、まだもっと凄い機能がついていると期待が膨らんだから。
カリラも新機構については少しばかり心が躍っていた。
ただしこちらはナツコとは真逆。全く新しい機構が盛大にこけて、最高の機体が一変して変態機の仲間入りするような展開を望んでいた。
「ま、一応説明しておきますわね。名前の通り機体に2つのコアユニットを搭載したのがデュアルコアシステムですわ。これまでのテスト動作で使っていたのは通常型のコアのみ。これを補助する形で、高出力コアが搭載されていますわ」
「おおー。で、何が出来るんです?」
高出力コアと言われてもいまいちピンとこなかったナツコは首をかしげて尋ねる。
カリラはマニュアルをページ送りすると、その内容を簡潔に読み上げていく。
「コアの役割はエネルギーを別のエネルギーに転換することですわ。通常動作に使っているコアよりも、2つ目のコアは1度に変換できるエネルギーが多くなっていますの。
瞬間的に大量のエネルギーを得られるようになるので、例えば運動エネルギーに変換すれば、ブースターやスラスターの代わりに急加速に使用したり、通常では扱えないような火砲の反動を抑制したり、被弾した際に弾をエネルギーではじき飛ばしてダメージを軽減したり出来ますわ」
「おお! それって凄いじゃないですか!」
瞬間的に大量のエネルギーを使用可能となればこれまで出来なかったような動作も可能になると、ナツコは更に新機構へ対する期待を膨らませた。
しかしカリラは冷めた目でそれを見つめ、デュアルコアシステムの欠点を上げていく。
「当然、デメリットもありますからね。まずエネルギー効率が良くありません。大量のエネルギーを瞬時に得ることを目的としたコアなので、変換効率は犠牲になっていますわ。頻繁に使えば直ぐエネルギーパックが空になりますから気を付けて下さいまし。
それから、連続使用が出来ませんわ。変換の前にエネルギーパックからコアへとエネルギーを充塡する必要があるからですわね。再使用までに3秒程度かかりますからお忘れ無く」
「3秒で再使用可能なんですね!」
「3秒おきに使えば直ぐにエネルギー無くなりますからね」
カリラは釘を刺して、用意してあった25ミリ狙撃砲を取り出す。
〈ヘッダーン5・アサルト〉にとっては普通に装備可能な代物だが、狭い射撃訓練場でこれ以上の威力を持つ火砲の使用許可は得られなかった。
それでもデュアルコアシステムの動作確認には使えるだろうと、ナツコに手伝わせてそれを〈ヘッダーン5・アサルト〉の左腕へと装備させる。
「とりあえず有用そうな反動抑制から試してみましょう。使用方法はまとめておきましたから、それを参考にして下さいまし」
「ありがとうございますカリラさん! さっそくやってみますね!」
どうせ統合軍仕様で書かれたマニュアルなぞ、ナツコはしっかり読んでこないだろうと予想をつけていたカリラは事前にマニュアルを分かりやすく翻訳していた。
既にそのデータは〈ヘッダーン5・アサルト〉へ同期されていて、ナツコは射撃訓練場へと戻ると、メインコンソールからカリラ作成版のマニュアルを呼び出して、立ち上げたサブディスプレイに表示させる。
デュアルコアシステムの初期設定から、実際にエネルギー変換を割り当てる部分まで進め、左腕の25ミリ機関砲に連動して反動を抑制する運動エネルギーを生成するよう設定。
オペレーションルームから遠隔操作で設定内容を確認したカリラは、問題無いと判断して100メートルの距離にターゲットを出現させた。
『そちらのタイミングで撃って下さって構いませんわ』
「はい! ナツコ・ハツキ1等兵! デュアルコアシステム動作テスト、開始します!」
通常通りターゲットを注視。注視点をロックし、主武装を向けて照準を固定。
直ぐに射撃準備は完了。メインディスプレイにはこれまで見たことの無かった、デュアルコアシステム作動中を表すアイコンが表示され、充塡完了状態にあることを示す緑色に発光していた。
「撃ちます! ――あれ」
仮想トリガーを思いっきり引ききったのだが、発砲の反動はおろか、発砲音すら微かにしか聞こえなかった。
それでも銃弾が空を切る音は確かに響き、ターゲットに命中してそれを撃ち抜いた。
「お、おお! これがデュアルコアシステム! 凄いです! 発砲の瞬間に合わせて確かに運動エネルギーがぽっと出てきました!」
『そんなの分かるわけ無いでしょうに。――でも確かにこれは良い機構のようですわね。ふむふむ。発砲音も打ち消せるとなると、このエネルギー転換は使い方次第で化けますわね。――というより、どうして気付かなかったのかしら。そうですわ。高出力コア1つで何もかも動かそうとしたのが間違いでしたわ。コアを2つ積めば問題は解決。ふふふ。これでわたくしの野望に1歩近づけましたわ」
「ねえカリラさん! 急加速とかも試して見て良いですか!」
『お好きにどうぞ』
「あれ、カリラさん、突然興味なくしてません?」
『そんなことありませんわ。そちらは好きに試して下さって構いませんから』
デュアルコアシステムが今のところ真っ当な機構らしいと判断したカリラはそちらに対する興味をほとんど失い、自分が設計を進めている〈R3〉へ搭載する新機構について端末へとメモを取り始めた。
「――おぅっ!! お、おう? す、凄いです! 瞬間的に加速しているはずなのにGをそこまで感じません! これって相殺にエネルギー使ってますよね! このエネルギーも加速に使ってブースターも併用したら一瞬で最高速まで加速できるんじゃないですか!」
バカな考えを始めたナツコに対して、カリラは慌ててマイクを取って告げた。
『機体が壊れるから絶対駄目ですわ!!』
◇ ◇ ◇
ツバキ小隊が新規に獲得した機体、〈ヘッダーン5・アサルト〉と〈ヘッダーン4・ミーティア〉の動作テストは終了。パーツを受領していた〈音止〉も修理が開始され、今日中には修理完了の目処がたった。
タマキが着任報告を終えると、ツバキ小隊はミーティングルームに集められる。
「ユイさん遅いですよ」
「〈音止〉の修理が優先だ」
「わたしが集合を命じたらそれが最優先です」
「〈音止〉より優先なものがあるものか」
相変わらず口の悪いユイに対してタマキは罰を言い渡そうとも考えたが、今回の件についてはユイの知識が必要になりそうなのでぐっと堪えた。
「はい! 〈ヘッダーン5・アサルト〉動作テストは無事に終了しました!」
指名も発言要求も無かったにもかかわらず、ナツコは意気揚々と報告を行う。
久しぶりに部隊としての活動が始まったので空回りしているのだろうと、タマキはとりあえず相づちと共に返す。
「それはよろしい。ですが発言の前にわたしの許可をとること。――ミーティアは?」
問われたサネルマはナツコに負けじと声を張り上げて答える。
「はい! 〈ヘッダーン4・ミーティア〉動作テスト無事完了してます! 対空攻撃システムの動作確認も終わっています!」
「大変よろしい。リルさんの機体は問題無かったわね?」
念のため既に調整済みであったリルの〈DM1000TypeD〉についても確認をとる。リルは小さな返事と共に頷いて見せた。
「よろしい。残るは〈音止〉だけですね」
「修理に戻っても?」
「少し待って。無事にツバキ小隊は復隊が認められ、現在ボーデン地方で活動を続ける第401独立遊撃大隊に編入されました。これから皆さんは大隊直轄部隊として、ボーデン地方にて戦闘に参加する可能性があります。
ですので、簡単に戦況報告を行います。こちらを」
タマキが士官用端末を操作すると、ミーティングルームの壁に周辺地図と、勢力図が表示される。
更に1部地域が拡大されボーデン地方が大きく映ると、青色で表示される統合軍勢力圏に、1部だけ突出した赤色表示部分――帝国軍勢力圏が存在した。
「見ての通り、ボーデン地方1部地域で帝国軍の攻勢が始まっています。帝国軍は新型突撃機を投入し、統合軍は為す術無く後退しています。大隊の目標は帝国軍新型突撃機の撃破となっています」
ナツコはなるほど、と頷いて見せる。
だが他の隊員はタマキの説明にいい顔をしない。
いくら新型突撃機が投入されようと、このように歪な形で勢力圏が形成されるとは考えにくかった。
特に〈R3〉に関する知識が豊富なカリラ、イスラは異を唱えた。
「一体どんな突撃機ですの?」
「数はどれくらいいるんだ?」
タマキは1度皆の注目を集めると、ゆっくりとその問いに回答する。
「機動力、火器運用能力、電子戦装備の充実した高機動突撃機。数は――単機です」
イスラは耳を疑い、カリラはタマキの頭を疑った。
そしてこれまで興味なさそうにしていたユイが説明を求める。
「敵機の情報を詳しく知りたい」
「映像データを貰って来ています。ただし機密情報扱いなので、これを見たことは外部で喋らないように」
全員が頷くと、表示されていた周辺地図がかき消え、代わりに動画が再生される。
23ミリ砲を装備した、装甲皆無の突撃機。機動力は突撃機の範疇を大きく超え、統合軍の攻撃をかいくぐり、正確無比な射撃で反撃する。
わずか1機の敵に対して統合軍は為す術無く、次々に撃破されていく。
映像が搭乗者のアップになったところで、タマキは一時停止する。
壁には、銀髪と赤い瞳を持つ、帝国軍新型機搭乗者の姿が大きく映された。
「情報は伏せられていますが、統合軍の間では”魔女”と呼ばれ噂になっています。これが大隊の優先攻撃目標となりますが、何か意見があれば伺いたいと思います」
タマキの問いかけに対して、挙手もなくユイが呟く。
「エクリプスだ」
「何と?」
聞き返したタマキへとユイは説明する。
「機体名。帝国軍の第5世代機〈エクリプス〉。あたしも詳細は知らんが、技研にそう言えば恐らく通じる。あたしの名前は出すなよ」
「よろしい。〈エクリプス〉ですか」
機体スペックはともかく、機体名は判明した。
もう1度ユイは画面を見据えると、再び呟いた。
「未完成品だな。これなら何とでもなる」
「具体的には?」
「集中攻撃で片付けろ。火器管制にランダム性を持たせれば命中弾もでる」
まともな意見ではあるのだが、タマキとしては採用しづらい。恐らくこのまま代案が出なければカサネもその案を採用するであろう。だが、魔女に対して集中攻撃を仕掛けるとなれば少なからず犠牲が出ると予想された。
タマキが回答を渋っていると、音も無くフィーリュシカが手を上げる。
「どうぞ」
「自分に任せて頂けませんか?」
「そう言うだろうと思っていました」
タマキはやはり、といった面持ちでその提案を受け入れる。
「勝算はあるのですね?」
「問題無い。確実に撃破可能」
タマキは品定めするようにフィーリュシカの顔を見据えたが、対してユイが反対意見を述べる。
「あたしゃ反対だ。こんな未完成品相手にわざわざ出て行く必要は無い」
「敵はまだ全ての性能を出し切っていない。完成度を見極める必要がある」
「あたしの意見が聞けないと?」
「自分にはあなたの意見を聞く義務は無い。あなたとは対等な関係のはず」
濁った瞳に嫌悪感をむき出しにするユイに対して、フィーリュシカはただただ無感情な瞳を向ける。
言っても無駄だと判断したのか、ユイはぷいと視線を背けた。
「勝手にしろ」
「承知した。隊長殿、自分に任せて頂けますか?」
タマキは再び品定めするようフィーリュシカを見据えた。
これまでフィーリュシカが出来ると言い切ったことは、言葉通り実現されてきた。
レインウェル基地防衛戦では、不可能としか思えなかったカノン砲の長距離射撃による〈アースタイガー〉撃破をやり遂げた。
今回も確実に撃破可能と言い切る以上それは実現可能とみて間違いないだろうと、タマキは判断した。
それでも、いくつか疑問点があるのも事実。確かめるようにタマキは尋ねた。
「”魔女”と呼ばれるこの帝国軍兵士について、何か知っていますか?」
「今の時点で自分から言えることは無い。会って直接確かめたい」
「いいでしょう。ナツコさん。〈ヘッダーン5・アサルト〉を借りてもよろしいですね?」
突然問われたナツコだが、問いかけには頷いた。
「は、はい! 是非使って下さい!」
敵が突撃機である以上、こちらも突撃機を出すべきであろうとはナツコも理解出来た。そうなれば、ツバキ小隊所有機体の中でも最高戦力となる〈ヘッダーン5・アサルト〉を投入すべきだ。
最新鋭の第5世代機をフィーリュシカが装備すれば、向かうところ敵無しだろう。
だがフィーリュシカは首を横に振った。
「使い慣れている機体がいい」
「〈アルデルト〉で戦うつもりですか?」
「問題無い」
フィーリュシカは言い切るが、相手は突撃機の中でも高い機動力を有している。鈍重な〈アルデルト〉では一方的に攻撃される展開すらあり得た。
それでも構わずフィーリュシカは話を進める。
「武装は20ミリ機関砲を。個人防衛火器は軽量高速弾使用火器を弾数優先で2挺積んで欲しい」
「どうしても〈アルデルト〉を使いたいと」
「フレームが丈夫で扱いやすい」
タマキは〈ヘッダーン5・アサルト〉を使うべきだと考えたが、フィーリュシカがここまで言う以上無理強いも出来ず、折れることにした。
命令が下される直前、今度はトーコが手を上げる。
「待って下さい。相手は突撃機ですよね。〈音止〉なら確実に撃破可能です」
「駄目だ」
間髪入れずにユイが否定する。
「どうして? 拡張脳を使って奇襲をかければ逃げ切られる前に仕留められる」
「どうだろうが駄目だ。こんなおもちゃ退治に〈音止〉は使わせない」
「ユイに何の決定権も無いでしょ。隊長、指示を下さい。相手が装甲騎兵相手に有効な武器を所有していない以上、〈音止〉の出撃が最も効果的なはずです」
「一理あるわ」
タマキもその意見には頷いた。
これまでも魔女は〈I-K20〉が出現すると後退している。23ミリ砲では軽装甲騎兵の脆弱部分は抜けても、主力機に対しては無力だ。
〈音止〉の機動力と、拡張脳による思考能力拡張を持ってすれば、魔女と言えど為す術はないだろう。
――だが。
タマキはユイへと視線を向けた。
当然、ユイは絶対に許さないと、不快感をあらわにしていた。
「どうしても駄目ですか?」
「駄目だ。相手が出来損ないと言えど、こっちも半人前だ。〈音止〉の投入は認められない」
「負ける相手じゃ無い」
トーコの反論にユイも応える。
「お前は何も分かってない。勝ち負けが問題じゃないんだ」
「じゃあ何が問題っていうの」
トーコとユイはにらみ合うが、今度ばかりはユイも折れるつもりはなさそうだった。
行く末を見守っていたタマキだが、決着がつきそうに無いので仲裁に入る。
「〈音止〉の運用に関しては整備士の意見をきくつもりです。ですが、あなたの意見は根拠に欠けます」
「頭の悪い奴に1から10まで説明してやる義理はない」
「構いませんけど、頭の悪い人間は時として間違った判断を下します。そうならないように、あなたは努めるべきだと思いますよ。――魔女について、何か知っていますね?」
ユイは沈黙で応えた。だがタマキは追求する。
「もし何も知らないのであれば、あなたの要求を聞き入れる必要性を認めません。ですが、もし魔女について少しでも情報があるのであれば、聞き入れるのが妥当だと判断しましょう」
持ちかけられた取引にユイは躊躇した。だがトーコが口を開こうとするとそれを遮って答える。
「ブレインオーダー計画だ。これ以上は何も言えない」
「よろしい。フィーさんの投入に意見はありませんね?」
「さっき言った通りだ。勝手にさせればいい」
それで全て片付いたと、タマキは手を打った。
「では作戦参加については大隊長へ打診します。
イスラさん、フィーさん。許可が得られるものとして、〈アルデルト〉の武装変更と調整を念入りに行って。
ユイさん、カリラさんは引き続き〈音止〉の修理を。調整にはトーコさんも協力して下さい。
本日はレイタムリット基地の使用許可が下りています。居室と食堂・シャワーの使用については分かり次第連絡します。それまでは自主訓練に励むこと。
以上です。解散して下さい」
解散を命じられると、各々ミーティングルームを退室していく。
我先にと出て行ったユイをトーコは追いかけて、その横に並んで歩くと尋ねた。
「で、ブレインオーダー計画って何?」
「知るか」
ぶっきらぼうに答えて、これ以上その話題について話すつもりはないと意思表示するユイ。トーコは質問を変えて尋ねる。
「じゃあなんでそれ相手に〈音止〉は出せないの」
「お前が半人前だからだ。この話は終わりだ。黙って修理に手を貸せ」
「自分の都合ばっかり。いいよ分かった。今は言う通りにしてあげるから」
いつか何もかも吐かせてやると意思を込めてトーコはそう言い切ると、〈音止〉の保管されている格納庫へ向かった。
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