第7-2話 アンデッドとの戦い

「居るのはスケルトンだけだね。

数は…人型が14、大型が3、獣型が4で21体…」


宿場の柵から暗がりの草原を見つめている少年が答える


俺の目からは地平線に白い何かがある程度にしか見えない

テオックも隣で目を凝らしてるが、良く分からない様だ


少年が振り返ってこちらを見る


「あれ?人数これだけ?」


この場に居るのは俺とテオック、正面にはこの少年と隣に居る背が少し低いヒゲ面の男、

俺達の右手側に居るリザードマン、

その後ろに不安そうな面持ちで立っているオークが2人と、お年寄りのオーガ

お年寄りのオーガが俺達の泊まっている宿の主人で、オーク2人は他の宿の主人だ


実質戦力としてカウントされているのは、俺とテオックを含めるなら5人しかいない


「俺一人でも余裕だぜ」

少年の隣にいるヒゲ面の男が答える


その言葉を聞いてから少年はすぐに返事する


「いや、あの数はいくらエルカンでも無理だろ…」

少年とヒゲ面の男が会話し、

リザードマンが無言でその光景を眺めている間、俺はテオックに質問する


「テオック、スケルトンって骸骨の事か?」


「ああ、そうか、アンデッドの話ってしてなかったな。

スケルトンは骸骨だな、魔族や動物や魔獣の骨が動くんだよ。

アンデッドは見境なく襲ってくるから危険な連中だ」


アンデッドは他にもゴースト等が居るらしく、魔獣と並んで危険な存在の様だ


元の世界でそんなのと出くわしたら恐怖で震え上がる自信があるが、

不思議と今は何とも感じない、これが慣れだろうか……


「なあ冒険者達、大丈夫なのか?

スケルトンは今ここに向かってきてるんだけど…」

俺達を呼び出した隣の宿の主人が話しかける


俺も緊張感無くテオックと話し込んでしまっていた、

この世界に来てから肝が据わったのか、酒が回っているのか


「ん、ああ、10分くらいは余裕あると思うよ」

少年が答える


「でも取り敢えず作戦立てようか、君達も良い?」

少年が俺達とリザードマンに話しかける


--------------


……まずは簡単に自己紹介になった



「オイラはアロン、こっちのドワーフはエルカン、

二人でパーティを組んでるんだ。

一仕事終えてマーテンのギルドに戻る所だったんだけどね」


少年だと思っていた人物はアロン

髪は金色で短髪、やや耳が長い

種族がハーフリングなので成人していても子供にしか見えないそうだ


その隣にいるヒゲ面の男はエルカン

黒髪でパーマ気味の髪型、やや色黒である

人族かと思ったが、種族はドワーフだった様だ


「我、名、セド・カラ、修行の旅、している」


リザードマンの名はセド

暗い青緑色の肌をしている

その背中に背負われている1メートルを超える幅広で片刃の剣が特徴的だ



「俺はテオックだ、こっちの人族はヨウヘイだ。

よろしくな、まあ俺達は冒険者じゃないんだけど」


テオックが俺の分も簡単に自己紹介してくれる


「おお、人族がこの辺りにいるなんて珍しいな!

しかもコボルトと一緒とは、よろしくな!」

エルカンがフランクに返事を返してくれる


「セド、テオック、ヨウヘイ、よろしく。

じゃあ早速どうするか決めようか」


--------------


アロンが木の棒で地面に楕円を描く


スケルトンの群れの配置を大雑把に表している様だ


「スケルトンはこんな感じで横に広がってるんだけど、

厄介な武器持ちが三体いる。

これが大体この位置」


スケルトンの群れの中、楕円の右奥に三つ丸を付ける


「こいつらが持ってるのは農具なんだけど、これでも横から殴りかかられると危ないね、

取り敢えずこいつらから倒したいんだけど、任せられるのはエルカンと…」


アロンがエルカンを見てから、俺達を見る

そしてリザードマンであるセドに話しかける


「セド、君剣士だよね?

リザードマンだから頑丈だと思うし、任せられる?」


「承知」

セドは頷きながら答える



「俺達はどうしたら良い?」

何か手持ち無沙汰感があったのでアロンに聞いてみる


「君達は周囲のスケルトンを頼みたいんだ。

彼らの背中を守ってやって欲しい、

オイラは援護するよ」


アロンは武器持ちの印の手前から左側に線を引きながら言う


「分かった、ところでスケルトンって俺でも何とかなるのか?」

アロンに返事するついでにテオックに一番の疑問をぶつける


「ああ、生前よりも動きはかなり鈍いし、すぐバラバラになるしなんとかなるだろ。

俺も戦闘は専門じゃないけど、数体相手にするだけなら問題ないぜ。

こないだのラズボードよりはよっぽどマシだぞ」


テオックの言葉には緊張感が無い


「でも俺には武器が無いんだよ、何かあるか?」

テオックが問いかける


「予備の武器が1つある、これを使え」

とエルカンが言ってテオックに鉄製のメイスを渡す


「お、サンキュー」

エルカンの傍らには大きな斧が立てかけてある、

こちらが主に使用している武器なのだろう



アロンが俺の方向を向いて話しかけてくる


「アンタは武器は大丈夫?

オイラ達には他の予備の手持ち無いんだけど」

アロンに尋ねられる


「ああ、俺は大丈夫」


俺には棍棒がある、特に問題は無いだろう


アロンは少し不思議そうな顔をしたが、

納得して全員を見渡す


「オイラがまず右側に突破口作るから、

エルカンとセドは突っ込んで武器持ちを潰す。

二人はそこから後に続いて他のスケルトンの相手ね。

宿場の人達は撃ち漏らしがいたら任せて良い?」


宿の主人3人が頷く、気付いたらその後ろにオークが1人、コボルトが2人居た

民家から駆けつけた宿場の住民らしい、彼らも後から頷く


スケルトンが今の位置からでも姿が確認出来る距離に来ている事が分かる


「よーし、それじゃあそろそろ行こうぜ!

一暴れしてやるか!」

エルカンが声を挙げる


「おう!」

俺達も声を挙げ、スケルトンの集団に走り出した

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