第3-4話 魔獣 そして

「やるしかないな」

テオックが俺に話しかける


「倒せるのか…?」


「多分無理だろうな、追い払うんだよ」

そう言った直後、ラズボードが俺に向かって走ってくる


ここは草の丈が長く、ラズボードも先ほどの速度が出せていないが

それでも速い


「うわあっ!」

そばにある木の裏に回りこむ


ラズボードの様子を見ると、俺の居た場所に牙を付き立てようとしていた


どうする、このまま木の周りをぐるぐる回る事もできないぞ


「くらえ!」

と言う声と共にテオックが鉈でラズボードに斬りかかる

鈍い音が鳴る


ラズボードは唸り声を上げてテオックを睨む

「やっべ」

そのままテオックに飛び掛かるが、テオックは素早く横に跳んで避ける


「だめだ、脂肪が厚くて刃が通らねえ!」


どうする…!逃げても追いつかれる…

テオックの鉈でも太刀打ちできない、俺のナイフなんて論外だ


…なら!


「棍棒出ろ!」

俺の手元に長さ70cmくらい、先端が膨らんだ重量のある棍棒を呼び出す


そのままテオックに向かって唸り声を上げるラズボードに両手で持った棍棒で思い切り殴りかかる


棍棒で殴りかかった腕に痺れが走る

棍棒を落とすが、確実な手ごたえがあった


「グオオオォォォォ!」

と鳴き声を上げてラズボードがよろめく


棍棒を拾う余裕は無い、俺は走ってラズボードから離れる

「やるな、ヨウヘイ!」

と言いながらテオックがそのあたりに落ちていたそこそこ大きな石を投げる


この石がラズボードの顔に当たる

ダメージは余りなさそうだが、よろめく最中に受けた攻撃に混乱しているようだった



小さな刃物は無理でも打撃なら何とかなる

棍棒ならいける、なら…


俺は長さ40cm程度だが、そこそこ重量のある棍棒を呼び出す

と同時にラズボードの足元に落ちていた棍棒が消える

「くらえ!」

棍棒を思い切りラズボードに投げる

肩力はそこまで強くないが、当たれば痛いはずだ

ラズボードの体に当たる、ラズボードの注意がこちらに向く


更に念じる、今投げた棍棒が消えて

新しい棍棒が手元に現れる

現れると同時にまた投げる


今度は俺の方向を向いたラズボードの顔に当たる


ラズボードが唸り声を上げる


「ダメ押しだ!」

更にもう一度棍棒を呼び出して投げる

流石に何度も投げていると腕が疲れてくる

棍棒はラズボードの手前に落ちた

ラズボードが雄たけびを上げる


「なにしてるヨウヘイ、あぶねーぞ!」

テオックが叫ぶ


ラズボードが俺に向かって走ってくる

思ったとおりだ、怒り狂ったコイツは俺に向かって突進してくる


俺は念じる、新しい棍棒を呼び出す

今度は1mを越える大型の棍棒だ、頑張っても何度も振り回すことは出来ない大きさだ


「うおおおおお!!」

俺は思い切り棍棒を振り抜ける、野球のバッターの様な感じだ


突進してくるラズボードの顔面に棍棒がぶつかる


これまで体感した事の無い衝撃が体に走る

直後に体が浮き上がる感覚、

そして体が柔らかいものにぶつかる

弾き飛ばされて茂みに思い切り突っ込んだようだ



ラズボードは唸り声を上げながら後退している

あれだけの質量を思い切り顔面に受けてただではすまかったようだ


手痛い反撃を受けたラズボードは俺とテオックに背を向け、森の中へと走って行った



「おいおい、マジかよ!

ヨウヘイお前やるじゃん!」

テオックが俺に走り寄ってくる


……立ち上がれない

死ぬほど体が痛い、あれ?

これ全身複雑骨折的なやつじゃないか?

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