第2-2話 種族
俺とテオックはテーブルに向かい合った状態で座っていた
そういえば、この世界の事は何も分かっていなかった
色々教えてもらおう
さっき村に着いた時に俺を質問攻めにしてきた村人たちは人間ではなかった
テオックと同じコボルト、緑色の小鬼?ゴブリンだろうか
他にはオークらしき人や羽の生えた猫みたいなのまで、
様々って感じだったな
まずは種族の事について尋ねてみよう
「魔族って昼間に言ってたけど、魔族とか人族の事について教えてくれ」
テオックは頷き
「分かった、俺もそこまで詳しいわけじゃないけど、教えてやるよ」
「まずは魔族、俺やここの村人もみんな魔族だ。
一口に魔族と言ってもコボルト、ゴブリン、オークとか見た目も何もかも違うけど、
一括りに言われてる。
そうそう、村長はラミアだぞ」
ラミア、美人なんだろうか
いや、海外の漫画やゲームのキャラクターみたいな顔かもしれない
「次に人族、これはお前みたいなヤツラだな。
その中で細かく分かれてるとかは、聞いたことないな。
この村に人族が来たのは初めてだから、みんな興味津々だったな」
テオックは思い出し笑いをするかのような声を出す
「あれは参ったぞ」
「最初は珍しがられるだろうけど、みんなすぐ慣れるだろ」
そう言えば、こういうファンタジーものの定番として、
人間と魔族は敵対している、みたいなパターンはよくあるものだ
そういうものはこの世界にあるのだろうか
しかしテオックや村人の様子を見る限り、敵対は無さそうだと感じる
「魔族と人族は仲が良いって感じなのか?」
「ん?ああ
昔は戦争してたけど、今は仲良くやってるんじゃないか?
国交もあるし。
でもこんな辺鄙な所にまで人族は来た事はないけどな」
だから俺は襲われなかったし、逆に珍しがられたのか
「平和って事か?」
「少なくともこの魔族の国のデュコウと、
隣にある人族の国レインウィリスは平和だと思うぞ。
国同士では分からんが、種族での対立はもう無いんじゃないか?」
国か、王様みたいなのはいるのだろうか
「国って王様が治めてるんだよな?」
「ああ、人族の国は王って言われてるな、魔族の国は魔王だな。
この国は今四代目魔王のガルゼ様が治めてる」
魔王…
ゲームでは定番のラスボスポジションの存在だが、これまでの話を聞くと
恐らく王様と変わらない立場だろうと思われる
「魔王はどこに住んでいるんだ?」
「王都バラオムだな、ここからだと馬でも1週間以上はかかるぞ」
ああ、魔族も馬に乗るんだな、てか馬いるんだな
「まあ国の話についてはこんな所でいいだろう、
種族の話の続きをするか」
そうだった、すっかり話が逸れていた
「魔族、人族以外にも二つ種族がある。
一つは妖精族、ドワーフ、エルフ、ノームやハーフリングだな。
連中はこの村にはいないが、近くに住んでるヤツもいる。
町から来る事もあるし、普通に魔族や人族に紛れ込んでる」
ドワーフ、エルフ、これも聞きなれた種族だ
妖精族か、今後会う事もありそうだな
ここでテオックが一息つく
「そして最後の種族だが、竜族だ。
俺は実際には見た事は無いが、知ってる連中の話や伝説からだと、
竜族はすごくヤバイ奴らだ」
テオックの声のトーンが少し下がる
「ヤバイ?」
「ああ、竜族一人でこの村が更地になるくらいの力があるらしい。
昔、魔族と人族が争っていた時、突然竜族が襲い掛かってくる事が何度かあったらしく、
この国や他の魔族の国、人族の国もこっぴどくやられたみたいだ。
魔族の腕自慢の連中が束になってもたった一人の竜族を抑える事も出来なかったってさ」
それは確かにヤバイな
「その言い方だと、最近は暴れたりしていないのか?」
「少なくともここ数百年の間はそういう話は無いよ。
竜族の国もあるが、そんな恐ろしい所へは行きたくない。
出来れば出会いたくないもんだな」
とテオックが震え上がるポーズをとる
ここでテオックが立ち上がる
「とりあえずこんな所だろ、そろそろ寝るぞ」
「俺はどうしたらいい?」
「ここの床で寝てもらってもいいが、一人でいたほうが落ち着くなら、
この家のとなりにある倉庫を寝床に使っていいぞ。
今は特に蓄えもないから寝るくらいはできるし、そんなに寒くは無いだろう」
見知らぬ土地だが、一人でゆっくり考える場所があるのは助かる
「じゃあ、倉庫を使わせてもらいたい」
テオックは頷き
「おう、これを使え」
と言われて麻のシーツとロウソクを渡される
「ありがとう、何から何まで助かるよ」
「困った時はお互い様だ、ゆっくり休めよ」
俺はテオックの家を出て小屋に向かい、
置かれていた藁を床に敷き、麻のシーツを掛けて目を瞑る
心地よい疲労感に意識が遠くなり、これからの事を考える暇も無く
異世界生活の一日目を終えた
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