残酷に底はない
「ゃ・・・・・う、うそでしょ・・・・・・・・?」
掠れ、震える声で私は言う。
「んー?何が?」
「わ、私、も、もう・・・・・!」
「ちゃんと全部飲んでって言ったでしょ?姫様飲んでないじゃない」
「だ、だって」
「だってじゃないの。飲むの」
「ゃ・・・・・・・・・」
魔女は私に、グラスを差し出す。しかも今度は水の一切入っていない、ミミズだけが入れられたグラスを。それを差し出された時点で、私はもう限界だった。
「む、無理・・・・・そんなの、飲めない・・・・・・・」
「飲めない?おかしなことを言うのね姫様は。一度はできたじゃない。なら二回目は簡単でしょう?」
「ぃ、いや・・・無理・・・無理よぉ、そんなのぉ・・・・・・!」
「ほら、姫様ならできるから」
今度は、私にやらせるのではなく。
魔女が無理矢理、私の口を開かせた。
「ひいいいいいいいいいい!!やめて!!やめてぇえええええ!!!」
一瞬の出来事だった。私にできたのは、その一言を叫ぶことだけだった。魔女は開かせた私の口の中に、グラスに入ったミミズを流し込んだ。その動きはまるで淀みがなく、私は抵抗する暇さえなかった。そして全てのミミズを流し込むとすぐに私の口を塞ぎ、吐き出すことができないようにした。
「ん゛ーーーーーーーーーー!!ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛!!」
必死に吐き出そうと自由な右手で抵抗するが、魔女の力は強くその手を引き剥がせない。その上すぐにその手を掴まれ、唯一の自由もなくなる。私に残されていたのは、ただ泣きじゃくりながら悲鳴をあげることだけだった。
「さ、ほら、ちゃんと飲み込んで」
「ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛」
さっきの嫌悪感が思い出され、そう簡単に飲み込むことはできない。だが口の中に大量のミミズが詰め込まれているこの感覚も、想像を絶するものだった。
気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い。
吐き出したい。
今すぐに吐き出したい。
でも、許されない。
だから私は、必死に嚥下する。口の中の異物を。どうにもならない現状を。終わらせるために、私は喉を鳴らす。再び訪れる、体の中を弄くり回される感覚に耐えながら。
「う、ぁ・・・・・・ん、ん・・・・・・・・・!!」
吐き気は何度も訪れた。そのたびに私は苦悶の表情を浮かべる。それを見て笑うのは、多分世界でたった一人だけだろう。そうであると願いたい。
この魔女以外にこんな表情をする人がいるなんて、思いたくない。
「・・・・・・・・・」
「あら?もう全部飲み込んだかしら?」
私の表情が緩んだのを見て、魔女は手を離した。そして魔女の言う通り、私は口の中に流し込まれたその全てを、胃に納めた。
「偉いわぁ姫様、やっぱりちゃんとできるじゃない!」
「は、ぁ・・・・・・・」
息も絶え絶えの私の頭を、魔女は優しく撫でる。まるで意味のない優しさに、私はそれこそ嫌悪感を感じた。
「でもね姫様?これからはやってって言われたら一回でやらなきゃ駄目よ?嫌だって言うのも、許してって言うのもナシよ?今回みたく、手を煩わせるようなことも、しちゃ駄目よ?」
「・・・・・・・・」
「お返事は?」
「・・・・・・・・・・・・」
私は「はい」とは言えず、かといって無反応を貫いては何をされるか分からなかったので、僅かに頷いた。一応魔女はその反応で満足したらしく「それでいいわ」と笑顔で言う。
「それじゃあ取りあえず、今回の分のお仕置きをしないとね!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・え?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます