魔女
「・・・・・・・・・え?」
「はじめまして姫様。そして・・・・・久しぶりね、騎士様」
「ぁ・・・・・・・・・・・・・・・・・あ、あ」
その女性を見た瞬間。
その女性を認識した瞬間。
シルファは。
彼女は。
崩壊した。
「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」
「シル、ファ・・・・・・!?」
動けないほど恐怖に竦み上がっていたはずの彼女が、素早い動きで私の下から抜け出す。そしてその女性がいる方とは反対の方向に、必死に逃げる。
「あ、あ、あああぁぁぁ・・・・・・・!!」
最初に私を見た時のように、地面に這いつくばって必死に距離を取る。だがそんなに広い部屋ではないので、彼女はすぐに部屋の壁に背をつけた。
「もう、そんなに逃げなくてもいいじゃない。つれないわねぇ。私と騎士様の仲じゃない、もっと仲良くしましょ?」
「ひ、ぃ、い」
「一緒に遊んだ仲でしょう?ねえ、騎士様」
「ひぃいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!」
「どういう、こと・・・・・?」
私を見た時・・・いや、それ以上に、彼女は気をおかしくしていた。どうにもならないほどに体を震わせ、絶望的な顔で女性を見る。
「あなたは、一体・・・・・」
私がそう聞くと、その女性は私の方を見て答えた。
「自己紹介が遅れてごめんなさい。私の名前はローフェンス。ローフェンス・アルテミスタ。気軽にローちゃんって呼んでね☆」
「は・・・・・」
「この世で最も偉大な、魔女よ」
「ま、じょ・・・・・?」
魔女など、おとぎ話の中でしか聞いたことがない。そんな幻想の生き物を、彼女は名乗っている。
「騎士様とは夜通し、あんなことしたりこんなことしたりして遊んだ仲よ。もしかしたら私、姫様より騎士様と仲が良いかもしれないわ。うふふ」
「・・・・・まさかあなたが、シルファに?」
流石の私もシルファの様子と、ローフェンスと名乗る女性の不穏な気配を見て察する。彼女がこれほどまでに怯え、泣き叫ぶ理由は、それ以外に考えられない。
「あなたがシルファに、酷いことを・・・・・!?」
「んー?なんの話?」
「だからあなたが、シルファを、傷付けたのかって、聞いているのよ・・・・・!」
「傷付けた?おかしなことを言うのねぇ姫様は。騎士様のどこにそんな傷があるのかしら」
「そんなの・・・・・」
そんなの。
「・・・・・・心に、決まっているでしょう」
私は。
怒りを露わにしながら、言い放つ。
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