再来

『ドオオオォォォォォォォン!』


「・・・!?な、なに!?」


「ひ、ひぃいいい・・・・・!!」


 同時に、地面が揺れる。突然の出来事に私は立っていられないくなり、その場に倒れ込む。それはシルファも同じだった。


「シルファ!!」


 何が起こったのかを確認するよりも早く、私はシルファに覆い被さる。自分を取り戻しかけていたと言うのに、この振動と爆音に彼女は体を震わせた。なんて間の悪いことだろう。そもそも、今のは一体なんだ?


「敵襲!!敵襲ーーーーーー!!!」


「!?なんですって!?」


 外の叫び声が、僅かに聞こえてくる。ということは今の爆発音は、他国からの強襲か。どうしてこんな、いきなり・・・!


 それは、あまりに突然だった。今まで隣国に攻め入られたことはあっても、いきなり城を爆発させるなんて真似、この国の兵士たちが許したことはなかった。いやそもそも、そんなことが可能なのか?強力な魔法を使えばできないことはないかもしれないが、そんな大魔法を使えるものは、そうそういないはず。


 私がそんなことを思っているうちに、二発目の爆発が起きた。音がさっきよりも大きく、この部屋の近くで爆発が起こったことが分かった。


「だ、誰か!?誰かいないの!?ここにいるわ!!」


 動けない私は、扉に向かって叫ぶ。正確には私は動けない訳ではない。一人でいたならば叫ぶよりも早く、部屋から飛び出していただろう。だが今はシルファがいる。爆発に怯え竦み上がった彼女は、とても歩ける状態になかった。歩くどころか、立ち上がることすら無理だろう。当然彼女を置いていく訳にはいかず、私は彼女の上から動けないでいた。


 三回目の爆発が起きた時、部屋の窓ガラスにヒビが入った。ヒビが入ったのは窓ガラスだけでなく、天井もだった。パラパラと、粉のような石が落ちてくる。まずい、と思った時にはもう遅かった。


 私のちょうど真上の天井が、爆発に耐えきれずに落ちてくる。シルファがいる以上、逃げるなどという選択肢はなかった。むしろ彼女の頭を抱きしめ、何があっても彼女が傷付かないように徹する。


 そんな私の頭に無情にも、大きな石が叩きつけられる。果てしない衝撃に、私は意識を失いそうになる。自分の後頭部からドロッ、とした血が流れているのが分かり、今まで感じたことのない激痛に気がおかしくなりそうだった。


「シ、シル、ファ・・・・・」


「あ、あぁぁぁ・・・・・・・・!!」


 絶望的な表情をする彼女とは対照的に、私はできる限りの笑顔で答える。もちろん、彼女の不安を少しでも和らげるためだ。きっと本来なら、ほんの少しだって笑う余裕などなかっただろう。だが彼女のためなら、私は笑える。


「だい、じょうぶ・・・?」


 ふらふらになりながらも、彼女の無事を確認する。意識が朦朧とし、私はこのまま死ぬのではないかと思った。だから私は、これが最後になるかもしれないと、彼女に伝えたいことを伝える。


「わたし、は、何があっても、貴方の味方、よ」


 声を絞り出す。


「たとえ、みんなが貴方の敵、に、なったとしても、わたしは、貴方の味方・・・」


「ひ、あ、ぁ・・・・・」


「私だけは絶対に、貴方を裏切らないわ」


「へぇー、すごいわ姫様。面白いこと聞いちゃった」


「!?」


 その時、誰かの声がした。その声のする方を見ると、そこには。


 見たことのない、女性がいた。

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