思い出を見つめる
扉を閉め、私は彼女の方を見る。ふらふらと歩いていた彼女だったが、机の前で足を止めていた。そして机の上にあった何かを手に取って、それを見つめている。私はそんな彼女に近づき、彼女の手の中のものを見た。
「あ、これ、あの時の・・・・・」
彼女が手に持っていたのは、写真だった。写真立てに入れられた、一枚の写真。それを彼女は、じっと見つめていた。まるで、何かを思い出すかのように。
「・・・もしかして、覚えてるの?それとも何か思い出した?」
その問いに彼女は答えない。ただ必死に何かを、忘れている何かを思い出そうと、写真の向こうの景色に思いを寄せる。
その写真には、私とシルファが写っていた。私はこの日のことを、よく覚えている。いや、もちろんシルファもこんな状況でなければ、忘れたことなど一度もないだろう。それくらい私たちにとって、大事な思い出の日。大切な約束を、交わした日だ。
その日は、初めてこの「写真」と呼ばれる技術が生まれた日でもある。この国の科学者がカメラと呼ばれるものを開発し、大きな偉業を成し遂げた。大々的に見れば、この日はその「カメラが生まれた日」であるが、私たちにとっては、それ以上に大切なことがあった。
この日ようやく、私も一人前になれた。自分の意思を持ち、自分で物事を判断したり、決めていける強さを持った。今思い返すとそれは、早く大人になりたがっていた私の思い込みだったかもしれないけれど、少なくともその時は、誰かを助けてあげられるだけの大人になれたと、そう思った。
「・・・・・・・ひ、・・・め、さま・・・・・」
「!!」
彼女が、私を呼んだ気がした。それは、間違いでも勘違いでもなかった。
「ひめ、さま・・・・・・アイシア、さま・・・・・・・・」
確かに彼女は、私の名を呼んだ。そのことに思わず私は、声を荒げてしまう。
「ええ・・・ええ!そうよ、アイシアよ!私は、アイシアよ・・・・・!」
そして貴方は、シルファ。
私と絆で結ばれた、この世でただ一人の。
「・・・・・わたし、の、たいせつ、な、ひと・・・」
彼女はじっと、写真を見つめている。
「たいせつな、やくそくの、ひ・・・・・・・」
「ええ・・・・・・・・!」
そうよ、シルファ。
私は貴方の大切な人。
この写真は、大切な約束を交わした日。
そして。
私が貴方を、助けた日。
貴方が。
初めて、笑った日————。
『・・・——————ィィィイイイイイイイイイイン』
と。
その時。
妙な音が、した。
何の音かは、分からない。
だけど、その音が止んだや否や。
突然。
爆発の音がした。
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