安堵の息
「お疲れ様、シルファ。食べてくれてありがとう。まだ足りないなら持ってこさせるけれど、大丈夫?」
そう聞くと彼女は頷いた。その頭を優しく撫でる。彼女が愛おしくてたまらなかった。頭だけでなく頬を、首を、体を撫で、彼女を抱きしめる。いつまでもいつまでも、こうしていたかった。もう絶対に、彼女を離さない。彼女の側を離れない。彼女を何処にも、行かせやしない。
誰にも、渡さない。
そのまましばらくの間、私はシルファを抱きしめ続けた。彼女は私の腕の中で、穏やかに息をする。まだ私の言葉に返事を返してくれることはなかったけれど、私を拒まずに受け入れてくれるくらいに、心を取り戻している。いつかきっと必ず、彼女は笑顔を見せてくれる。私はそう確信した。
気付けば、彼女は私の腕の中で目を細めていた。眠りたいと思えるほどに、彼女は私の腕の中で安心を感じてくれていたようだった。
「眠いのね、シルファ。そのまま眠っていいのよ。ずっとこうして、抱きしめていてあげるから。私の腕の中で、ほら」
私は赤ん坊をあやす時のように、彼女の背中をさする。するとすぐに彼女は瞳を閉じ、私に体を委ねた。そしてものの数十秒もしないうちに、彼女は寝息を立てるほどの深い眠りに落ちた。
「おやすみなさい、シルファ」
私も彼女の熱を感じながら、瞳を閉じた。安心を感じているのは、私も一緒だった。
今までずっと、不安な毎日を過ごしていた。
貴方が、いなかったから。
貴方が、側にいなかったから。
だから私は安らかに、穏やかに。
久しぶりにそんな感情を抱きながら、心の底から安心しながら。
彼女に、寄り添いながら。
ゆっくりと、眠りに落ちていった。
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