決意

 完全なる拒絶を受け、私は涙を流しそうになる。今まで一度だって、彼女が私を拒んだことはなかった。どんな時でも、どんなことでも。必ず私の味方になってくれた。私を助けてくれた。その彼女が、私を拒んでいる。私に近づかれることさえ恐れている。その現実を受け止められるほど、私はまだ、大人ではなかったようだった。


 何もできなくなってしまった私は、彼女の願い通り引き下がるしかなかった。そんな自分を最低に思う。こんなことしかできないなんて、彼女がこんな時に、こんなことしか、してあげられないなんて。自分の無力さを呪うしかなかった。


 そして気付く。今になって、ようやく。私はずっと、彼女に甘えて生きてきたのだと。彼女は私に何でもしてくれた。何でも与えてくれた。だと言うのに、私は彼女に、何かをしてあげただろうか。何かを与えてあげただろうか。こんな時に彼女を抱きしめてあげることさえできないなんて、私は一体、何だと言うのか。


 もしかしたら私は、彼女を、縛り付けていただけなのかもしれない。


「・・・・・・」


 彼女はいつだって、私を助けてくれた。


 守ってくれた。


 命を懸けて。


 死を覚悟して。


 そんな彼女を前にして、私は、黙っているだけなのか?


 何もしない、つもりなのか?


 私は立ち竦み、必死に気を強く持つ。涙なんか、流している場合じゃない。辛い思いをしているのは、助けを求めているのは、彼女なんだ。私が涙を流す権利なんてない。この状況でまだ私は、彼女に頼ろうとしているのか。


 涙を流せば。


 彼女が慰めてくれると。


 そう、思っているのか。


 ・・・私が今しなければならないことは、そんなことじゃない。


 助けられてばかりじゃ、いられない。


 だから。


 押し殺せ。


 辛い気持ちを、悲しい気持ちを、苦しい気持ちを。


 押し殺せ。


 そして、奮い立て。


 彼女のために。


 私の、大切な人の、ために。

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