第35話 利用

「はぁ~。」


ロイは事務所から出るやそうそうにため息を吐いてシグナルを歩き始めた。


【ふん。それで?どうするのだ?本当にあの女の仲間になるのか?】


ロイの持つスティアは電源が入ったままで、アグニウスはロイに話しかけている。


「まさか。それに、向こうもきっと俺のことなんて仲間だとは思ってないよ。」


【だろうな。だがそれがわかったうえで、お前は仲間になると言ったのだろう?】


その言葉にロイはにやりと笑う。


「まぁね。理由はともあれ、この戦いに勝つにはオリジンを探さなきゃいけない。オリジンをだ。いずれ時が来たら今の仲間とも戦うことになるだろうけど、それまではお互い利用して生きていくしかない。」


【利用して生きていく、か。やはりお前は最良の使い手よ。】


アグニウスの言葉にロイは顔をほころばせる。


「そんなんじゃないって。俺は運が良かっただけだよ。アグニウスが引けたことも、。」


ロイは事務所でのことを思いながら、ふと疑問に思ったことを口にする。


「あっ。そういやアグニウス。君のスキルについてだけど。」


【先ほど言ったであろう。私のスキルは人には教えん。たとえお前でもな。】


「そっか。じゃあこれだけ教えて。支援しえん攪乱かくらん防御ぼうぎょ攻撃こうげき回復かいふくのどれ?」


【…ふむ。強いて言えば攻撃か。】


「オッケー。ありがと。」


【ほう?いまので分かったというのか?】


「まぁ大雑把にだけどね。」


ロイの言葉にアグニウスは不敵に笑う。


【はっはっは!やはりお前は最高だな!】


「さて、それじゃあ敵情視察といきますか。」


ロイはアプリケーションを使い、さまざまな情報を集め始めた。


【なにをしている?】


「うん。スティアを使ったチームってのは、実は結構あるんだ。チーム同士の対決でゼクトを使い対戦している人もいるからね。それで、今回の俺みたいにチームにオリジン使いを誘ってる人がいるってことは、その誘ったチームは全員オリジン使いだと思うんだ。」


話ながらも、ロイは手を止めない。


【なるほど。そのチームを叩くということだな?】


「さすがに1人じゃどうしようもないんで、仲間に連絡してどういう対処を取ったらいいか聞いてみるよ。」


【ふん。たとえ何人いようが、勝負をする時は1対1だ。このゲームは複数と対戦できないようになっている。】


「あっそうなんだ。それはいいことを聞いた。っと出た出た。ふーん、思ったより多いな。」


ロイの見ているアプリは地図上に記されており、赤い点が複数広がっている。


【この赤い点がチームの事務所か?】


「みたいだね。とりあえず、一番近いところから行ってみよっか。」


そうしてロイは自分の位置から近い点に向かって歩き出した。アプリにはチーム名前が記されている。そのチームの名は…


『チーム・マスカル』

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