第34話 自己紹介

「じゃあまずはそっちの少年君から!」


ミクはずっとスティアで遊んでる少年に話しかけた。少年は帽子をかぶり、赤い半そでに白の短パンをはいていた。少年はミクの声が聞こえているはずだが目線を合わせることもなくずっとスティアをプレイしている。


「ちょっと、聞こえてる?聞こえてるよね?」


ミクは少年のスティアを取り上げる。すると少年は顔を上げ


「…なにすんだよ。返せよ、俺のゲーム。」


そう言ってミクに手を伸ばした。


「返してほしかったら自己紹介。」


「…はぁ。ヒロ。俺の名前。これでいい?」


「オリジンの名前も。」


「オリジン…ああ、あいつか。たしか…サイゾウ…だったかな。」


ヒロはどこか思い出すような感じで答えた。だがその曖昧な答え方に納得いかないのか


「それって本当?ちょっと呼び出してよ。」


とスティアをヒロに返した。スティアを返してもらったヒロは画面にサイゾウという名のオリジンを出した。その姿は、頭を頭巾で隠し、口を手ぬぐいで隠しており、服は忍び装束をまとっていた。


【サイゾウだ。】


「ふむ。スキルは?」


【…ヒロ。】


「いいよ、言っても。」


【…わかった。私のスキルは『影縫かげぬい』。相手の影にクナイを刺せば、その者の動きを封じることができる。といっても、ずっとは無理だがな。】


影縫かげぬい』か。能力的にはなかなか強そうだけど、どのくらい動きを止めれるんだろう?ミクもそのことを思ったのか


「どのくらい止めれるの?」


【最大10秒。抵抗力が強ければ止めれる時間も減る。だが1秒は確実だ。】


1秒か。でも実際の戦闘になれば、1秒動きを止めれることはすごく大きい。


「そっか。ありがと。それじゃあ次はそっちの君。」


ミクはロイを指さした。


「…僕の名前はロイ。オリジンはアグニウス。」


ロイはスティアの電源を入れ事務所にいるみんなにアグニウスを見せた。


【む?何用か?】


「アグニウス。みんなに自己紹介をして。」


【うん?…ふむ。なるほど。よかろう!心して聞け!私の名はアグニウス!炎の王である!】


ロイにした時と同じようにアグニウスは自分の名を明かした。


「炎の王、ね。スキルはなんなの?」


【その前に、こちらが名を明かしたのだ。そちらも明かすべきではないか?】


「…それもそうね。ミクよ。」


【残りの2人は?】


「あっちの黒いのがタイガで、この少年がヒロ。」


ロイはアグニウスにここまでの経緯を説明する。


【なるほど。それで私のスキルか。だが残念だな。私のスキルは教えられない。それは貴様たちもそうだが、使い手のロイにも教えていないことだ。諦めるんだな。】


「それを信じられると?」


【なんと言おうと、私はスキルを公言する気はない。】


「…」


ミクとアグニウスは睨み合っていたが、やがてミクの方が諦めたようで


「まぁいっか。とりあえず、君たちは今日から私たちの仲間になったから、これからよろしくね。」


ミクは握手をロイたちに求めてきた。だが


「話が終わったのなら帰っていい?」


そう言ってヒロは立ち上がり扉に向かって歩いていく。


「別に帰ってもいいけど、私が連絡したらここに来てくれる?」


「気が向いたらな。」


「もし気が向かなかったら、きっとタイガが家に向かえに行くと思うからそのつもりで。」


その言葉にヒロはタイガに目線を向けた。ここまで黙っていたタイガは


「…協力するのなら危害は加えない。」


完全に脅迫だがヒロは堂々とした態度で


「…努力する。」


そういって帰っていった。


「はぁ。あっ、君も帰っていいよ。用があったら呼ぶからよろしくね。」


ミクのその言葉にロイはいろいろ考えて


「…わかりました。では失礼します。」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る