第32話 リセマラ

アスカと教室でわかれ、ロイは自転車を手で押しながらとある事務所へ向かう。


「えーと、こっちか。」


ロイはアプリを使ってその事務所に向かっていた。


22時間前…


「えーっと、スティアを起動してキャラクターを呼び出してください。なおそのキャラクターは変えられませんのでご了承ください、か。」


ロイは説明書を読みながらスティアの起動方法を確認していた。


「なるほど。だいたいわかった。あとはキャラクターを召喚してチュートリアルをやったらいいんだな。」


説明書をあらかた読み終わったらしく、ロイはスティアを手にしあることを考えていた。


「そういや今日会ったあのミクっていう女性ひと、なんか変なこと言ってたな。たしか…」


『このゲームをリセマラし続けると自我を持ったキャラクターが出てくることがあるんだって。』


「だったか?リセマラか。あんまリセットってしたくないんだけどな。でもあの女性ひとが使ってたキャラクターは確かに意志があった。」


声をかけられたわけではないが、あの時貞ときさだというキャラクターはこちらの声に顔を上げ目を合わしてきた。あんなの意志がなければできないだろう。


「それに、あの女性ひとはその意思のあるキャラクターと戦いたいっぽかったしな。」


ロイは女性にはそこまで興味があるわけではないが、人の期待というものは裏切られない体質を持っていた。故に…


「まぁ俺もまだ高校2年だし、遊びに時間をかけるのも悪くないか。」


そういって、ロイはリセマラを始めた。


それから4時間後、ロイが事務所に向かっている時間からすると18時間前…


「ふぁ~。なかなか出ねぇな。」


時刻は日付が変わり始めたころ。ロイは明日も学校があるため、そろそろ眠ろうかと思っていた。


「そろそろ寝るか。これがラスト。これで出なかったらまぁしょうがないか。」


『試したけど出ませんでした』と伝えて、そのままその女性ひとと遊ぼうかと考えていた。そしてそのリセマラの結果…


【ふむ。無事私を召喚できたわけだな。よろしい。私に恭順きょうじゅんする権利をやろう。光栄に思うがいい。】


スティアには赤い髪に赤い目、派手な装飾のついた服を着た男が映し出されていた。


【む?どうした?私が声をかけているのだ。なにか言ったらどうだ?ああいや待て、なるほどそういうことか。ふむ、良いぞ。発言を許す。】


こちらが口を開かないことを恐れおののいて黙っていると勘違いしたらしく、発言してよいと言ってきた。見た感じも含め、どうやら王様か良い身分の人みたいだ。


「えっと、それじゃあ質問していいですか?」


相手の言葉遣いに、敬語の方がいいだろうとロイは判断した。


【許す。申してみよ。】


「えっと、それじゃあまずは、?」


ロイはその人物がオリジンかどうかではなく、なぜ意志があるかを問いただした。


【ふむ。なぜ意志があるか、か。それは私にもわからん。そのように作られたとしか言えんからな。】


「作られた…それは、このゲームの会社にですか?」


【うむ。私たちを戦わせ、最後に残ったものが人間と同じ体を持つことができる。いわばサバイバルよ!】


意志のあるデータ。サバイバル。たったそれだけで、ロイはだいたいの事情を察した。


「…なるほど。では最後に。あなたの名前は?」


【ほう。最後でいいのか?まだ聞きたいことがあるのではないか?】


「大丈夫です。。」


ロイの言葉に男は大笑いした。


【はっはっは!これだけの言葉でだいたいわかった、か!実に良い!どうやら貴様は間抜けではないようだな!】


「あの、それで…」


【うむ!私の名だな?心して聞け!私の名はアグニウス!炎の王である!】


………


それからミクさんに連絡して、オリジンを手に入れることができたと告げると、この事務所に来てほしいと言われた。


「っと、ここみたいだな。」


ロイは自転車を事務所の前に止めて、中に入っていった。

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