第27話 一方その頃

アスカがマスカルのメンバーになったころ…


「ありがとうございましたー。」


「ふぅ。やっぱりどの店に行ってもそこそこの値段するな。」


少年は手に袋を下げながらシグナルを歩いている。


「でも、ようやく買えたよ。これがアスカが夢中になってるゲームか。」


少年は袋の中の商品を一瞥いちべつする。袋の中にはスティアが入っており、少年はスティアを買ったばかりのようだ。少年の名はロイ・シッター。アスカの友人である。


「帰ったら早速プレイしてみようっと。」


少年は上機嫌でシグナルを歩いている。そんな少年の前に…


「ねぇ、そこの君。ちょっといいかなー。」


「ん?なんですか?」


少年は金髪の女性に話しかけられ足を止める。


「ねぇ、いまそこのお店から出てきたでしょ?もしかして、君もスティアを買ったとか?」


女性はロイの袋を覗き見してきた。


「え?はい、そうですけど。もしかして、お姉さんもそうですか?」


「そうなのよ。私も最近このゲームを買ったばかりでね。ほら、このゲームってゼクトを使って遊べるみたいじゃない?それでお店の前で待って、買ったばかりの子と遊びたいなーって思って。」


「はぁ。それって、初心者狩りをしたいってことですか?」


ロイは女性の言葉に眉をひそめた。だが


「違う違う!私も初心者だから、一緒に遊べる仲間が欲しいなーって!」


その言葉を聞き、ロイは警戒を緩めた。


「そうですか。それなら連絡先を交換しましょうか?俺も慣れてきたらゼクトを使って遊んでみたいですし。」


「いいねいいね!交換しよ!」


ロイと女性は連絡先を交換した。


「えっと、さんですか。そういえば、ミクさんっていくつなんですか?」


ミクという名の女性はロイに向かってクスクス笑いかけている。


「女性に年齢は尋ねないものよ?でも答えちゃう!私は今年で20歳!」


20歳はたちですか。俺は今年で17になります。」


「あはっ!高校生だ!わっかーい!」


「いや、3つしか違わないじゃないですか。」


ロイとミクはお互い笑った。


「あっそうだ!実はこのゲーム、ある噂があってね。」


「噂…ですか?」


「そう、噂。ほんとかどうかわからないけど、このゲームをリセマラし続けると自我を持ったキャラクターが出てくることがあるんだって。」


「自我を持ったキャラクター?」


「このゲームのリセマラって、電源を切って最初から始めるとできるんだけど、もし自我を持ったキャラクターを引き当てちゃうと、そのままリセットできなくなるのよ。」


「そ、そうなんですか?」


「そのキャラクターは私達みたいな体が欲しくて、同じ自我を持ったキャラクターとゼクトを使って倒さないといけないみたい。」


「な、なんか詳しいですね。」


「そりゃそうよ。だって、本人から聞いたんだから。」


「本人?」


女性はニヤニヤしながら胸元からスティアを取りだした。そのスティアの中には、編み笠をかぶった武士のような男がいた。


「これが私のキャラクター。この子たちはオリジンって呼んでるけどね。名前は時貞ときさだ。」


時貞ときさだと呼ばれたオリジンは編み笠から片目を見せた後、また目を伏せた。


「あはは。ちょっと恥ずかしがりやなのよ、この子。っというわけで、ロイちゃんもオリジンを引くまでリセマラしてみる?」


「うーん、どうしようかな。」


ロイは少し悩んでいたが、女性はそんなロイを見て


「まぁ強制はしないよ。それじゃあ、キャラクターが決まったらまた連絡してね。いつでも大丈夫だから。」


そういって女性はロイの前から去っていった。ロイは女性と別れた後。


「あれ?ミクさん、。」


ミクの行動に首をかしげるも、まぁいいかと納得してロイは家に帰っていった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る