第14話 煉鬼とリク

ガイ達が路地裏を去ってから数分。


「…どうやら僕達には気付かなかったみたいだね。とりあえず、この人を病院に運ばないと。」


路地裏に来た細目の男はそうつぶやいたあと、倒れているスーツの男に肩を貸した。


「まさかこんなところにあの男がいたなんてな。ほんと煉鬼れんきのスキルは頼りになるよ。」


男はスティアにそう話しかけた。そう、この男は先ほど公園でアスカの対決を見ていた男だ。


【あっはっは。あたしのスキルはほとんど勘みたいなもんだからさ、頼りにするようなもんじゃないよ。】


少女はそう言って酒壺さかつぼをあおった。コクッコクッ。ぷはーっ。


煉鬼れんき、あんまり飲みすぎるなよ。もしオリジンと出会っても、ぐでぐでだったらどうしようもないだろ。」


がこの程度で酔うと思ってんの?あぁ、リクは酒を飲んだことがないからわからないか。】


彼女は愉快そうに笑いながらまた酒壺をあおる。リクと呼ばれた男はため息を吐きながら答えた。


「…口にしたことはあるよ。最も、どこがおいしいか全然わからなかったけどね。」


【このおいしさが分からないなんてもったいない。ふあぁー。】


煉鬼れんきはおおきなあくびをしたあと、横になって目を閉じた。


煉鬼れんき。眠られると困るんだけど。」


【大丈夫大丈夫。あたしのスキルはちゃんと発動してるから。危なくなったら教えるよ。】


「まったく。おっついた。」


リクはスーツの男を病院に運び、シグナルを歩きながら煉鬼れんきに話しかけた。


「で、さっきの話の続きだけどな。」


【ん?さっきってどれ?路地裏の話?公園の話?】


「公園の方。あの騎士みたいな見た目のオリジン。僕は煉鬼れんきが起きなかったから弱いと思ったけど、実際どうなの?僕の予想はあってる?」


リクはアスカの対戦を思い出しながら話している。


「スキルの使い方も雑だったし、なによりオリジンの言う通りに動いてる感じがした。あのオリジンの言った通り、本当にこのゲームをやり始めたばかりかもしれない。」


【多分その予想は間違ってないよ。でもあたしが起きなかったのは相手が弱かったからじゃなくて、ほんとに眠かったからだけどね。】


そういって煉鬼れんきはまたあくびをした。リクは煉鬼の言葉に顔をしかめた。


「えええ?なんだよそれ。ちゃんと仕事してくれよ。」


だが煉鬼れんきは反省した様子もなく。


【しょうがないじゃん。そもそもあたしのスキルは相手の実力を測るものじゃないし。】


「それは…そうだけどさ。」


【それにあたしに向けられた敵意じゃないから、ぶっちゃけよくわからない。】


煉鬼れんきの言葉にリクはため息を吐いた。だが落胆した様子はなく


「…まぁいいや。プレイヤーは初心者でも、オリジンが優秀ならこの先も残るだろうし。」


と考えを納得していた。


【あたし達みたいにね。】


「…」


煉鬼れんきのニタニタした顔を見てリクは「うるさい。」とスティアの電源を落とし、シグナルを歩いていた。

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