第13話 暗躍
男は路地裏を歩いている。その顔は余裕たっぷりでむしろ笑みすら浮かべている。男の名はガイ。先ほどアスカと戦いオリジンを失った男だ。
「ずいぶんと嬉しそうね。オリジンを失った顔には見えないわ。」
路地裏の奥には胸元をさらけ出した金髪の女性とフードをかぶった黒髪の男。そして倒れ伏しているスーツ姿の男がいた。女性は箱の上に座り、フードの男は壁を背もたれにしている。
「おっと、そんな顔してたか?俺?」
話しかけた女性はくすくす笑いながら箱から立ち上がった。
「ええそうよ。まるで強い敵が現れたのが嬉しいみたい。」
「ははは。よくわかってるじゃないか。そう俺は嬉しいんだよ、ミク。ようやく俺のオリジンと戦えそうな奴を見つけたからな。」
ミクと呼ばれた女性はため息を吐きつつ
「あんたのオリジンはやられたばかりじゃない。」
「あんなサブじゃない。俺の
そう言ってガイは胸元からスティアを出した。
「で、こいつは何?」
ガイはそう言って足元のスーツを着た男を親指で指差した。男の手にはスティアが握られている。
「オリジン使いだ。」
ガイの問いかけにフードの男が答えた。
「あーなるほど。回収作業中ってわけね。毎度ご苦労さん。」
「ふん。」
フードの男はスーツの男の手からスティアを取り、別のスティアを持たせた。
「ガイ。」
フードの男はスーツの男のスティアをガイに投げ渡した。
「はいよ。んじゃ早速ご対面っと。」
ガイは受け取ったスティアの電源を入れた。
【ちょっと。なんで電源落としてんの?理由を説明してほしいんだけど…ってちょっと待って。あんた誰よ。】
スティアにはピンクの髪をツインテールにした気の強そうな少女が映った。少女は弓と矢束を
「俺はガイ。いまからあんたの使い手は俺になった。よろしく頼むぜ。」
【はぁ?あんた何言ってんの?それより、ショウはどこ?】
「ショウ?もしかしてあのスーツを着た男か?」
そういってガイはスーツの男が見えるようにスティアを傾けた。
【っ!!?ショウ!?ねぇちょっと!どうしたの!?ショウってば!】
少女は倒れている男に必死に呼びかけるが、男が目を覚ます様子はない。
「無駄だ。薬の効き目はあと1時間ほどある。」
フードの男は胸元から粉薬を見せた。
「怖ーい。私も襲われないように気を付けなきゃー。」
ミクはわざとらしくガタガタと震えている。
【あんた達!絶対許さない!ここから出しなさい!】
少女はスティアの中で暴れている。だがガイは笑いながら
「おいおい。別にゼクトを使ってもいいが、あんた達オリジンは人間を攻撃できないぜ?」
【うるさい!】
「そんなことよりもだ。あんたの名は?どんな固有スキルを持ってる?教えてくれよ。」
【誰が教えるもんですか!あんた達みたいな卑怯者に!】
その言葉にミクは大きな声で笑いだした。
「あはは。私たちが卑怯者?面白いこと言うじゃない。データのくせに。」
その言葉に少女は顔を赤くしながら
【今はただのデータよ!でも、私はこの戦いに勝ち残って肉体を手に入れる!】
「そうだ。あんたはこの戦いに勝ち残らなきゃいけない。そのためには、プレイヤーを気にする必要があるのか?」
ガイの言葉に少女は口がつまり、黙り込んでしまう。
「まぁガイに使われるのが嫌なら、私が使ってもいいけど?それともタイガ。あんたが使う?」
そう言ってミクはフード男に話しかけた。
「俺はこいつしか使わん。」
といってスティアを取りだした。
「俺たちに協力する気がないならそう言え。今すぐ消してやる。」
タイガはスティアを構えいつでも戦える準備をしている。
「もともと強いのに、わざわざ薬を使ってスティアを奪うなんて意味わかんない。」
「俺は万全を期す。万が一があってはいけないからな。」
やれやれ、と両手を上げてミクはため息を吐く。
「今のあんたのパートナーは俺だ。そして俺はスキルを使わない。そんな状態でタイガのオリジンに勝てるか、見ものだな。」
スキルはスティアを持っている人がスキル名を言うことで発動される。なのでこの場合はガイがこの少女のパートナーになるのだ。そしてガイはスキルを使わないと言っている。つまりこの少女は何もない状態でタイガのオリジンと戦わなければいけないのだ。
「どうする?味方になるか、消されるか。」
【…】
少女はしばらく黙っていたが、やがて口を開き…
【…ユメ。固有スキルは『
「オーケイ。ユメ。よろしく頼むぜ。」
「ふん。」
「新しい仲間ゲットー。」
そうして3人はスーツの男、ショウを路地裏に置いたままこの場を去った。
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