⑫昇格女神のパーフェクト転生プラン
「勇人っ! 私、パーフェクトなプランを思い付いたのっ!」
イベント盛りだくさんな一日が明け、朝の食卓。各々が食後の飲み物を手にした頃合いに女神が口火を切った。
「……まず、どれくらいパーフェクトなのか言ってみろ」
時間に余裕はあるが、今日だって学校があるし佐藤との待ち合わせには遅れられないんだ。あんまりな内容には付き合ってられないぞ?
「そうね、このアイデアは……そう、パーフェクトジ〇ングぐらい完璧だわっ!」
「それ、蛇足ってヤツじゃね?」
早速雲行きが怪しいが女神はまあ聞いてよとポケットから何やら取り出し俺につきつけた。だから、近いって。
「……スマホ?」
「そうっ! あのドミニオンズが持ってるのと同じ天界仕様のスマホよ」
「お前、スマホとか要らないじゃん」
「ふっ♪ ふっ♪ ふっ♪ 例えば、私の帰りが遅くて心配してヤキモキして玄関先で待ち構える勇人にメールを贈れるわ!」
なんてこと言いやがる。あと話が
「ははっ、昨日の
「またまた、照れちゃって! ちなみお母様とは番号交換済みでぇす」
「はぁっ⁉」
なにそれ⁉ 聞いてないぞっ! あと、そのクソウザいドヤ顔はやめろ。母さんも水戸黄門みたいにスマホ突き出さなくていいからっ!
「いいから、本筋話せ。本筋を!」
「せっかちね。まあ、いいわ。このスマホはね、異世界とも通信が可能なのよ。だから、
「んっ? んんぅ……⁉」
ちょっと待て、昨日聞いた話は何だったんだ? 俺にまつわる歴史の改変が~的な話はどうなった。
終盤で設定をかなぐり捨てるのは一番やっちゃダメなパターンだって漫画から学ばなかったのか?
「ふふふ……! 実はね、私も昇格したのよ! それによってより繊細な世界改変が行えるようなったってワケ。今迄みたいに、転生したら現世の勇人はなかったことに……そんなCSの低い異世界転生を提供する女神ではないのだわっ‼」
そうやってドヤ顔のまま鼻を鳴らす女神。その表情はもうドヤ顔ではなくドヤヤ顔ってレベルだ。あと『女神ではないのだわっ‼』ってなんだよ。
ドヤヤ……!
「うぜぇ……!」
「つまり、私が新しく提案する転生プランはこうよ」
高らかに勝利宣言をキメようとする女神。そろそろ出かける頃合いだけど、聞いてやるか。
「最高の満足を提供するプラン!『異世界転生にスマホをおと――モヒッ‼」
女神がプラン名を言い終える前にその顔面に俺の拳がめり込んだ。危ない危ない。
女神よ、そのプラン名は駄目だ。俺の本能がそれは危険だと告げている。
「
俺の渾身の一撃で女神の顔が『 (*) 』になっている。さすがギャグ時空の存在だ。
「じゃあ、学校行ってくるからね、母さん」
「はぁ~い」
「お前も、また後でな」
「
学校で合流するのに女神は毎朝別々に出かけて襲撃してくる。まったく変なところで律義な奴だ。
とにかく、家を出たら今日も今日とて騒がしい一日の始まりだ。
俺は玄関先にある父さんの写真に手を合わせ、その近くで丸くなってるコロの頭を撫でてから家を出た。
「いってきまーすっ‼」
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