③天使(本物)がいる学園生活
「「「…………」」」
三者三様に周囲を見回す俺たち。
俺と佐藤は互いの無事を確認して駆け寄る。
女神は自身がヤラかしたことで生じた二次災害に気づき絶句していた。
仕方がない。こういう時はあの人を呼ぶに限る。
「
「……はぁい」
俺が叫ぶと電柱の影からひょこりと小柄な学生服の女性が現れる。
ショートボブの髪と、鏡のような感情を読み取らせない瞳が特徴的な彼女の名前は天使・V・天華。天使だ。
もう一度言おう。天使・V・天華は天使だ。
「先輩、このバカがまたバカをやりました」
「うん、見てた」
彼女は女神の監視役として派遣された存在だ。ちなみに派遣元は外務省だ。どうなってんだこの世界は。
「事後処理というかフォロー、お願いします」
「丸投げ……まあ、いいけど」
天使先輩は現れた時から手にしていたスマホ片手に魔法を使ってササッと事態を収拾していった。
そうだよ、魔法っていうのはこういうスマートなイメージだよな。
それから先輩は女神の肩を叩く。
「コトを仕損じるのは貴女の問題。だけど、こういうのは困る」
「……ああ、アンタか。なんで、いんの?」
ただただ淡々と忠告する天使先輩に対して女神は不機嫌そうに応対する。
「…………」
天使先輩の瞳孔がしきりにピント合わせをしているカメラレンズのような動きをした。多分だけど、気分を害しているのだろう。
「私はここの生徒。いるのは当たり前」
「へぇ、最近の天使はコスプレしてるんだ~?」
「ええ、どこかのダメな女神が現世に滞在を続けるものだからいたしかたなく」
ビキビキと二人の間の空気が
「神に仕えるのが天使の仕事じゃあないのぉ~?」
「天界の見解では異世界神は天使の亜種扱い。つまり貴女は私の主ではない」
神の立場を持ち出してマウンティングしようと女神が仕掛けるも先輩はあっさり流してしまう。神なのにこすい奴だ。
さらに彼女は女神の眼前にスマホをずいと突きつけた。
「撮ってたよ? 全部」
「ひゃうっ⁉」
途端に女神がビクンとのけ反る。ホントにこいつは学習しない奴だ。
女神と
だから突如空中にトラックを出現させたり、死者を復活させることなんかも出来てしまう。おまけに人間より高位な存在であるため何をしても周囲はそのトンデモを受け入れてしまうのだ。早い話、彼女らの周りはギャグ時空になっている。
「事実は事実として上司に報告する。けど……伝え方次第で受け手の心証は変わる。わかるでしょう?」
「……は、はい」
ガチガチに固まった女神の頬をスマホでぺちぺちと叩き始める先輩。普段は全くの無表情なのにこの時だけは口元が僅かに緩んでいる。
天界にもルールがある。女神がそれを守っているか監視している彼女のバックには上司である大天使が存在しており、女神も逆らうことが出来ない。
つまりほぼイコールで天使先輩に逆らうことは出来ないハズなのだが、そこんとこよくわかっていないのが
「ふふ……それで辺境異世界担当のCランク女神はどうするの?」
「……なにとぞ
女神はあっさり両手を地について頭を下げた。本人曰く『決して土下座ではない深い一礼』だそうだがこんなの土下座も同然だ。
土下座することそのものより変わり身の早さに思わずドン引きしてしまう。
「う、うわぁ……」
「今日はまた一段と早いねぇ、女神さん」
佐藤にとっても日常茶飯事な女神の土下座。高位の存在による認識干渉があるとはいえコレをあっさり受け入れるのはどうなんだ? 少なくとも俺はとてもいたたまれない気持ちでいっぱいだ。
「行こう、佐藤」
「あっ、うん」
女神の
俺たちの学校には天使と女神がいる。だけど女神は俺を殺そうとするし、天使は女神を土下座させている。
こんなんでいいのか? 俺の学園生活。
「……佐藤、さっきは助けられなくてゴメン」
「ん? ああ、大丈夫だよ。じつは最近便秘でさ。復活時に全快してちょうどよかったくらい」
「……そっか」
佐藤、お前もそれでいいのか?
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