②女神は潰れた俺の友達の上に降り立った

「さっすが、勇人! 私の勇者はタフね♪」


 直前まで俺のタマを取りにきてたことなどなかったかのように女神が指をパチンと鳴らす。

 すると途端に地面に突き刺さったトラックが光となって消えていった。

 女神はご満悦の表情のまま地面に着地 ―― するかに見えたがズッコケた。


「にょわぁっ!?」


 その拍子にスカートからサービスパンツがチラリズムしたが、正直どうでもいい。いや、正確にはそれどころではない。

 女神がコケたアスファルトの上には血だまりが広がっていたからだ。


「な、なんじゃぁこりゃぁぁぁっっ⁉」


 某有名俳優のような雄たけびを上げる女神。コイツは毎度学習しないな。

 俺は声を張りポンコツに呼びかける。


「佐藤だ! またお前のバカに巻き込まれて佐藤が死んだっ!」


「すわっ⁉ コレは佐藤⁉」


 佐藤は高校に入ってからの友達だ。同じクラスで家が近いこともあって仲良くやっている。

 とにかく気のいいやつというのが出会ってから今日まで続く印象でコイツと出会えただけでも高校に進学して良かったと思えるほどにいいやつだ。

 そして、ごめん。よく女神のバカに巻き込まれてこうなっている。細かくは描写しないけど、なんか、とても細かくなってるな、佐藤は。


「早く! 佐藤を復活させろ! 毎度毎度佐藤をヒドい目に遭わせやがって!!」

「や、やぁ~、だってぇ……勇人がなかなかしぶとくて、ねっ?」

「ああぁん……!?」

「復活呪文、いきまーっす!!」


 急かされてようやく復活の呪文を唱えだす女神。まったくなんて奴だ。 

 復活できるとはいえこっちは人死にが出てるんだぞ? とんでもない神経だ。

 まあ、友達がミンチになる瞬間を見慣れてしまった俺も俺だが。


「…………」

「……って、おい?」


 なんか詠唱、長くね?

 ヒトひとり復活させるのには充分以上の時間が経過している。

 女神の横顔は真剣そのものだ。普段は全く感じられない神聖な雰囲気さえある。

 だが、しかし ――


「これは、マズイ……!」


 俺は遮二無二しゃにむに構わず道路から離れ学校の生垣に飛び込んだ。


「ベホマ〇ン!!」


 あんまりなネーミングの呪文を女神が叫ぶと途端に周囲に光が溢れた。

 名前はパクリだが効果は絶大な癒しの魔法が発動したのだ。そして ――


 キィィィ、ドォンッ!!


 魔法の光を浴びせられコントロールを失ったセダン車が校門へと激突した。


「……なんてこった」 

「ん? 勇人、勇人は大丈夫?」


 そして佐藤がムクリと起き上がった。

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