転生強要女神が現世に俺を殺りに来た‼

世楽 八九郎

①トラック転生なんて日常茶飯事

 もしも、自分に向かって真正面からトラックが突っ込んできたら。

 とにかく『やべぇ!』『あぶねぇ!』って思うことだろう。

 もしそれが真横からだったら、気づかないあるいは気づいた直後にねられてしまうに違いない。

 じゃあ例えば、だ。

 真上から自分目掛けて ―― それこそ空から落ちてきたような調子でトラックが迫ってきたらどうだろう?

 もちろん、実際に頭上から落ちてきたトラックの被害に遭う人だって世の中にはいるだろう。

 けど、俺が聞きたいのはそこじゃない。もし、自分がそんな事態に遭遇したとしたらどう感じるだろうか。これが聞きたい。

 自分目掛けて空から落ちてきたような調子でトラックが迫ってきたら ――

 案外、こんなことを想うんじゃないだろうか。


『トラック転生』


 アニメやライトノベルの始まりでお馴染みのだ。

 ある日唐突に突拍子もなくトラックに命を奪われるだ。

 だけど頭上から自分を押しつぶすだけの質量を持った存在トラックが突然迫ってきたときに浮かぶ言葉なんてそれくらいだろう。少なくとも俺はそれくらいの言葉しか持ち合わせていない。


 


「すわっ⁉ これはトラック転生ッ⁉」


 俺は身体を一括いっかつするべく声を張り上げると、着地寸前だった右脚の方へと思い切り重心を傾ける。水泳選手のように腕で思い切り宙をかき上半身からトラックの着弾地点外へと逃がす。そのままコケるような体勢で地面に肩がつくとそこを支点に腰をひねり、弧を描くように下半身も危険地帯から脱出させる。


 ダンッッッ!!!


 トラック落下の衝撃を音ではなく振動として身体で感じながら油断なく立ち上がる。ああ、これで入学してから何度目の制服買い替えになるんだ、ちくしょう!


「よく避けたわねっ! 結城勇人ゆうき ゆうと! さすが私の世界の勇者だわっ!」


 聞き覚えのある声が俺の名を呼ぶ。

 わかっちゃいるけど一応確認しようと見上げると、地面に突き刺さったトラックの荷台部に女が仁王立ちしている。お決まりの完璧にキマッたドヤ顔で。


「……よく避けたわね、じゃねーよ」


 彼女は女神。本名は知らん。

 なんでもトラック転生お決まりの女神らしい。

 で、俺は彼女の世界に転生すべき勇者(正確には勇者候補)なんだそうだ。

 そこまではいい。いや、ホントは良くないけど。置いておこう。

 問題なのはこの女神的に俺は既に転生しているべきって見解だ。つまり本来なら俺はもう死んでるハズってことだ。

 そこで女神は考え、コッチ現世にやって来た。


「転生させるために、現世で勇者を殺そうとか頭おかしーだろ?」

「それほどでもないわっ!」


 やって来ないから迎えに来ただけ。

 そんな調子で女神は俺をり来た。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る